ついに開幕を迎える2018-19シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)。3連覇中のレアル・マドリーを止める新たな王者が誕生するのかが見どころの中、『Goal』では近年のシーズンで毎年優勝候補の一角に挙げられながらも苦戦が続くマンチェスター・シティとパリ・サンジェルマン(PSG)に注目。いずれも“オイルマネー”をバックにここ数シーズンで大きく規模を拡大させ、自国リーグを席捲するクラブだが、欧州の頂点に立つには至っていない。
今回、『Goal』では民間放送のCL関連番組などで解説者を務めていて、欧州最高峰の大会を見続けている元日本代表DF都並敏史氏に、両クラブがCLで苦戦している理由と今季の行方を占ってもらった。第1回はPSG編だ。
2011年にカタール・スポーツ・インベストメントが買収してからの7年間で欧州屈指の強豪に成長したフランスの雄は、過去6シーズンのうち5度にわたってリーグ・アンを制した。しかし、CLの舞台では買収されて以降、いまだベスト8の壁を破ることができていない。今季こそ大きなチャンスがあるのだろうか。都並氏の答えは――。
■リーグ・アン=CLで有利にあらず
(C)Getty ImagesPSGは1990年代から国内で結果を残しているクラブですが、2011年の買収でアル・ケライフィさんが会長になってから、大きく変化したのは明らかですよね。皆さんご存知のとおり、昨シーズンにはブラジル代表FWネイマールやフランス代表FWキリアン・ムバッペ(今季に完全移籍)など、巨額の移籍金を市場に投入して世界的なビッグネームを獲得しました。ここ5,6年は「CLでの安定感が足りないな」というふうに見ていたのですが、特に近年は爆発的に面白くなってきました。
それでも、ここ2シーズンはベスト16止まりです。2012-13シーズンからの4シーズンを含めて、一度も準決勝に到達することができていません。私は、その理由の一つとして「国内リーグのレベルが他の優勝候補クラブのリーグよりも劣る」ということが挙げられると考えています。
よく言われるのが、「国内リーグで独走していればCLの戦いに集中できる」ということですよね。つまり、CLが佳境に入る2月以降、優勝に向けて貯金がある状況の中、前週末の国内リーグで戦力を温存することで翌週ミッドウィークのCLに向けて調整できる、という利点です。
ただ、私はこのメリットよりも、「国内リーグのレベルが他の優勝候補クラブのリーグよりも劣る」ということのデメリットの方が、欧州制覇を狙う上では大きいと感じています。リーグ・アンのファンの方に語弊があってはいけないので言っておきますが、もちろんフランスリーグにも素晴らしい部分はあります。2016-17シーズンは、素晴らしい戦いを見せたモナコがPSGを退けましたしね。
ただ、プレミアリーグの方が明らかにタフな相手だし、セリエAの方が戦術的にいろんなことをしてくるチームと対戦する。リーガ・エスパニョーラももちろんそうです。総体的には、リーグ・アンのレベルが少し劣ることは否めません。
やはり、「チームが強くなる時」というのはいつも、ハードな環境にある時です。厳しいリーグを戦っていれば、自然とチーム内の紅白戦でも熱が高まるんです。そして、その“温度”はチームのベースになります。例えばディフェンダーなら、「ここはマークの選手だけ見ないで、2列目からの飛び出しや、他のとこまでケアしないと」と考えることなどが日常的にあるのとないのとでは、大きな差が出てきます。
つまり、国内リーグのレベルによって、注意力などが緩慢になりやすい場面が増えるということです。もちろん、レギュラー争いでそれぞれ切磋琢磨するということはありますが、その部分はPSGの“強化・成長力”という点に影響しているのではないでしょうか。
CLには、「意図的にオーガナイズされたチーム」がたくさん登場します。つまり、チームとして選手たちが狙いをもって動き、スペースを創出し、そこを突く。その質と精度が高い。普段から日常的にこのようなチームと対戦しているか、していないか。選手二人のコンビネーションだけで攻撃してくるようなチームとやっていれば、どうしても「楽」をしてしまいます。そのディテールは、CL決勝トーナメントなどの大一番でも一瞬の隙として出てきてしまうものだと思います。
■GSは問題なし…決勝Tは?
(C)Getty Imagesそれでも、やはりアンヘル・ディ・マリア、ネイマール、ムバッペ、エディンソン・カバーニら攻撃陣の破壊力は魅力です。個人的にはマルコ・ヴェッラッティも非常に高く評価しています。ベティスにレンタルで移籍しましたけど、ジオヴァニ・ロ・チェルソの才能も物凄いですし、アドリアン・ラビオなど若い選手も出てくる。
グループステージではリヴァプール、ナポリ、レッドスター・ベオグラードと同居していますが、総合力を見ればここは突破できるでしょう。ナポリはマウリツィオ・サッリ監督がチェルシーにわたって新たなチームになっていますし、リヴァプールが本命ですがPSGも問題なく突破すると思います。
ですが、そこから先となると、どうでしょうか。今季から就任したトーマス・トゥヘル監督は、カルロ・アンチェロッティ監督、ローラン・ブラン監督の流れから、攻撃面で特徴を出せる指揮官。それに加えて、バランス感覚も持っているので、クラブの選択としては悪いものではなかったと思います。先ほどの守備の話で言えば、今シーズンにマルキーニョスをボランチで試しているのも、チームとしてのバランスを取るための施策の一つでしょう。
ただ、マルキーニョスは軽いプレーも少なくないですし、ヴェッラッティにしても守備力は高い選手ですが、選手の本能的に攻撃のことを考えてしまう選手です。CLを制覇するためには、特にアウェーゲームでチームとしてソリッドであること、そしてその中心になるのがこのポジションでもあります。この5シーズン、PSGが決勝トーナメントで敗れた試合は、すべてアウェーゲームを落としています。中盤の選手を中心とした守備意識という部分においては、今シーズンも改善できるか不安なところですね。
アトレティコ・マドリーが良い例です。昨季ヨーロッパリーグを制しましたが、その前の4シーズンのうち3度はCLでベスト4以上。彼らは特に中盤、コケなどのクリエイティブな選手でも本当にしっかり走って相手ボールの時は守備に集中する。中盤であれだけ相手のプレーを限定してくれれば、最終ラインの選手の負担は大きく減ります。 “メンタリティ”という部分では、第2GKという立ち位置ではありますが、ユヴェントスから加入した百戦錬磨のジャンルイジ・ブッフォンに期待したいですけどね。
■カギは…ムバッペとネイマールの献身
(C)Getty Imagesそのような点を鑑みると、私は今シーズンのPSGもベスト16、頑張ってベスト8ではないかと考えています。特長のオフェンス部分を活かしてそこを乗り越えるのならば、やはりキーマンはネイマールとムバッペでしょう。彼らがいかに協調するかがカギです。もちろん、言うまでもなくそれぞれのタレント力は申し分ないですし、イメージも共有し合える。
ただ、「味方のためにボールに関係なくフリーランニングする」というような意識はまだ足りない部分ではないでしょうか。日本代表のプレーヤーで言えば岡崎慎司選手のような精神です。そこをネイマールだけでなく、ムバッペも含めてお互い頻繁にやるようになると、本当に恐ろしいです。彼らがやるからこそ意味がある。結局、相手にとって一番、怖いのは彼らですから。
二人は近い位置でプレーしますから、その点ではまだまだ新しい形を見せてもらいたいです。夢があります。最高でもベスト8という私の予想ですが、裏切るような魅力的なシーンを見たいですね。期待はしているので、今シーズンの成長も含めて楽しみに見ていきたいです。
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