なぜ中村航輔は日本代表に選ばれたのか?神懸かり的セーブが生まれる理由

コメント()
©J.LEAGUE PHOTOS
W杯アジア最終予選に臨む日本代表が発表され、彼の名前はリストの中に入った。柏レイソルの中村航輔は、なぜハリルホジッチ監督の心をつかんだのか? 今季の成長の道筋に迫る。

観ている誰もが「決まった」と思った決定的なシュートを、神懸かり的なセーブで食い止める守護神が、柏レイソルにはいる。現在6連勝、その間の失点はわずかに2。最後尾でビッグセーブを連発してチームを救う中村航輔は、柏の好調を支える最大の原動力と言っても過言ではない。

その中村が、ついに日本代表の初招集を受けた。

「代表はずっと入りたかった場所なので嬉しい。もちろん代表に定着しなければいけないので、それに向けてこれからも頑張りたい」

普段は多く語らない中村だが、今回ばかりは初招集の喜びからか、報道陣の取材に対し、わずかに表情を綻ばせた気がした。

今から5年前の2012年、柏U-18の正GKを務めていた中村は、将来の柏のトップチームでの活躍と、日の丸を背負って立つ存在として大きな期待を担っていた。しかしその逸材は、同年夏の手首の負傷以来、度重なる怪我に苦しめられてしまう。トップ昇格後の2013年からの2年間、公式戦出場は0。ベンチ入りでさえ、2014年のJ1第25節サガン鳥栖戦での1試合のみだった。

転機となったのは2015年のアビスパ福岡への期限付き移籍である。このシーズン、「シュートセーブ率87.3%」という驚異的な数字を残した中村は、福岡のJ1昇格に大きく貢献。持って生まれた才能が福岡の実戦経験によって磨かれ、2016年の柏復帰後は、正GKとして大きく花開いた姿を見せた。

昨年はU-23日本代表としてリオデジャネイロ五輪にも出場。初戦のナイジェリア戦こそ櫛引政敏にスタメンの座を譲ったものの、第2戦のコロンビア戦、第3戦のスウェーデン戦ではスタメンでゴールを守った。また、同年10月には日本代表候補GKトレーニングキャンプのメンバーに選出され、「いつか自分もA代表に加わることを目標にしていきたい」と抱負を口にした。

すでに昨年の時点で日本を代表するGKの一人であることは間違いなかった。その彼が、このタイミングでA代表に選ばれた要因は、今季のJリーグの戦いの中で見せる、中村自身のスケールアップに他ならない。

例えば第12節のジュビロ磐田戦における4分のアダイウトンの1対1の場面。柏の松本拓也GKコーチによれば「以前の航輔なら、もっと早いタイミングで前に出ていた」というが、この場面で中村は、アダイウトンが抜けてくると、わずかに間合いを詰めた後、今度はその場にとどまり、「こいつ、どう出てくるんだ?」と相手を惑わせた次の瞬間、一気に間合いを詰めてシュートをブロックした。

同じく磐田戦で川辺駿のシュートをセーブした場面も、「川辺が背後へ抜けてくる」と予測していたからこそ、あらかじめ良いポジショニングを取り、川辺がボックス内でシュート体勢に入った瞬間には、すでに中村が足元でシュートコースを塞ぐという、松本コーチによれば「完璧な飛び出しのタイミング」でピンチを防いだ。

さらに第10節のセレッソ大阪戦の終了間際、清武弘嗣のシュートをワンハンドで掻き出したスーパーセーブについても「リュウ(小池龍太)がブロックに入ることで、軌道が変わることも予測していたと思います」というのが松本コーチの見解だ。実際に中村も、試合後には「コースが変わった後もボールは見えていた」と、まるで“想定内のプレー”とでも言わんばかりの様子で振り返り、周囲が「ビッグセーブ」と囃し立てる姿とはあまりにも対照的だった。

今季の中村は、「予測・駆け引き」など、事前準備の部分で昨季に比べて飛躍的な向上が見られる。スタートポジションが良いため、その局面に応じた最良のプレーを選択し、彼自身の持つシュートレスポンスの速さ、身体能力の高さをより有効活用できるようになった。それが結果としてビッグセーブの連発へつながっている。

DAZNの週間ベスト5セーブには、第9節から第12節まで4節連続でランクインしており、その驚異的なセーブを見れば今回の代表招集は妥当とも言える。しかし中村は、初招集を「嬉しい」と素直に喜びながらも、「たかが一ヶ月良いプレーをしただけ。今後、代表に選ばれるかわからない」と油断する様子を一切見せていない。一度代表に選ばれて終わりではなく、大切なのはこれを継続していくこと。そのためにも浮かれず、地に足をつける。実に中村らしい考えだ。

それに、代表初招集を受けたとはいえ、今回のアジア最終予選での彼の立ち位置は“第3GK”だ。したがって、出場機会が与えられるとは考えにくい。

それでも、かつて度重なる故障に打ち克ち、一度は櫛引が手にした五輪代表の正GKの座を奪い返したように、仮に今回の代表が“招集のみ”に終わり、試合に絡めない悔しさを味わったとしても、逆境さえ成長へのエネルギーに変えてしまう中村は、今回の日本代表で得たいかなる経験をも自身の飛躍へとつなげるだろう。

広告

今は3番手でも、近い将来、「中村航輔が日本でナンバーワンのGK」と呼ばれる日が、必ずやってくる。

文=鈴木潤

サッカーのライブを観るならDAZNで!1ヶ月間無料のトライアルを今すぐ始めよう。

閉じる