「チームとしては(敗戦の結果は)最悪ですけど、自分としては前を向いてやっていくしかない。(ゴールを決めたのは)良い一歩として、前進できるんじゃないかなと思います」
2-3の逆転負けを喫した試合後、ニューカッスルのFW武藤嘉紀は、マンチェスター・ユナイテッドとの一戦をそう振り返った。
■「このチャンスを逃したら…」

この試合で国内リーグ初先発を果たした武藤は、ニューカッスルの1点リードで迎えた前半10分にプレミア初ゴールを決めた。折しも、第8節でようやく巡ってきたスタメンという絶好の機会に、「このチャンスを逃したら、次いつチャンスが来るか分からなかった。自分の結果を出すことだけに集中しようと思っていた。自分の価値を証明するためにも、何が何でもやらないといけないと思っていた」と、意気込んでいたという。
こうした強い思いが、ゴールとなって結実した。クロスボールを胸トラップして鋭く反転。マーカーのアシュリー・ヤングを振り切り、左足を思いっきり振り抜いた。「『自分ならできる』という自信はあった。こういう強い相手の方が、自分のモチベーションも高まる。『決める』という自信を結果として出せたことは、さらなる自信につながる」と、今後に向けて手応えをつかんだ。
しかしながら、ニューカッスルは武藤のゴールを勝利に結びつけられなかった。前半に2点のリードを奪いながら、後半に3点を決められ逆転負け──。未勝利が続くニューカッスルの踏ん張りのなさと、ジョゼ・モウリーニョ監督の解任論が渦巻くマンチェスター・Uの意地の両方が見えた、そんな試合だった。
■ベニテス監督が試みたメンバー変更

前半は、ニューカッスルの狙い通りに進んだ。
これまでラファエル・ベニテス監督は、前線で「長身のターゲットマン」+「俊敏性の高いセカンドストライカー」というタイプの異なるアタッカーを組み合わせてきた。しかし、今回は違った。
スペイン人FWアジョセ・ペレスと武藤の2人、つまり「セカンドストライカー」の2人を2トップとして同時起用したのだ。「攻撃面で機動力とスピードが重要になると考えていた」と試合後のベニテス監督が明かしたように、守備の脆いマンチェスター・Uに対し、速さと俊敏性で揺さぶりをかけていった。
それゆえ、武藤も「この1週間、『たぶん自分が先発だな』との感触があった」という。試合前の1週間で行われた練習で、ベニテス監督はマンチェスター・U戦用の戦術を準備していたのだ。
この策が、前半は見事に機能した。ブラジル人MFケネディがスピードに乗ったドリブルから先制点。さらに、武藤が追加点を挙げると、モウリーニョ監督は非常に険しい表情を見せた。
マンチェスター・Uは守備が極めて緩く、最終ラインの選手がマーカーを捕まえきれないシーンが散見された。英『BBC』でマンチェスター・U番を務めるサイモン・ストーン記者も「ユナイテッドは恐れを抱いてプレーしている」と試合中に苦言を呈したほどで、チーム全体が見るからに混乱していた。
■反撃するマンチェスター・U。策のないニューカッスル。
Gettyところが、後半に入ると試合の潮目が変わった。
マンチェスター・Uはベルギー代表MFマルアン・フェライニの投入で中盤の強度を高め、反撃体勢を強める。対するニューカッスルは、敵の圧力に押されるように防戦一方に──。マーカス・ラッシュフォード、ネマニャ・マティッチが決定的なチャンスを迎え、マンチェスター・Uのゴールは時間の問題のように思われた。武藤も言う。
「後半は、相手の圧力に押されてしまい、パスをつながずに全部前へ蹴ってしまった。あれだと、相手のリズムになってしまう。本当に直さないといけない」
後半25分、フアン・マタに直接FKを決められると、「あの失点が最悪だった。あれで(チーム全体が)ビビってしまった」(武藤)という。ニューカッスルは腰が引けてしまい、後半31分、後半45分に連続失点。状況を打開する策もなく、ズルズルと相手の勢いに飲み込まれた。
■“流れを変えた一戦”となるのか

とはいえ、武藤にとっては、この試合が良い意味でターニングポイントになるのではないか。
7節までベンチスタートが続いたが、マンチェスター・U戦のゴールで定位置獲得へ大きくアピールした。加えて、前線のスペースへの積極的な飛び出しで攻撃を活性化。自陣まで守備に戻り、前線からのチェイシングでも貢献した。その起用効果は計り知れなかった。
惜しむらくは、前半34分に訪れた決定機の場面で、ヘディングシュートを決めきれなかったこと。ネットを揺らしていればリードは3点に広がり、相手の息の根を完全に止めていたに違いない。本人も「あれは決めないといけない」と反省しきりだった。
しかし、7節まで凡庸な攻撃しか見せられなかったニューカッスルに、武藤は新たな風を注ぎ込んだ。武藤がスタメンに加わり、攻撃の鋭さとスピード感が増したからだ。
日本代表FWも「フォワードは点を決めれば価値が上がる。この1点に満足せず、これを続けて行くことが大事」と、さらなる飛躍を誓っていた。はたして、26歳の日本代表FWは、降格圏19位に沈むニューカッスルを救うことができるか。
取材・文=田嶋コウスケ
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