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レスターは最高のタイミングでベストフォームを取り戻した。一体どこのチームが彼らをヨーロッパの舞台から引きずり下ろすことになるのか?

“Let slip the dogs of war (戦いの火蓋を切れ)!”。

これは英国の詩人、シェイクスピアの名言を用いてレスター・シティのサポーターがセビージャ戦で自軍の選手たちに送ったメッセージだ。昨シーズンの素晴らしい日々を含めても、おそらくこの試合はレスターのクラブ史上において最も重要な一戦であった。そして選手たちは見事に任務を遂行した。

レスターのクレイグ・シェイクスピア監督はファーストレグの敗戦(1-2)を受け、自分たちの状況をよく理解していた。得点を取りに行かなければならないこと、2015-16シーズンに大喝采を受けたカウンター主体のスタイルに回帰する必要があること……。指揮官は選手たちによく言い聞かせてからピッチへ送り出したようだった。そのことはクラウディオ・ラニエリ前監督の下で停滞し、不調を囲ったチームの姿がピッチ上で一切見られなかったことを見ても明らかだろう。

■再現された“おとぎ話の雰囲気”

事実として、セビージャは調子を落としていた。リーガ・エスパニョーラで勝ち点を落とすことが多くなり、サンチェス・ピスファンで行われたファーストレグでもレスターを沈めきれなかった。もっとも、彼らの動きが鈍かった要因はそれだけではなかった。

サポーターが誇り高き王者を後押ししたのだ。

レスターサポーターが作り出した雰囲気は圧巻だった。あまりに大きなノイズや拍手がスタジアムを包み、選手の背中を押した。一方で敵チームを萎縮させ、殻に閉じこもらせた。昨シーズン、プレミアリーグで優勝を成し遂げて以降、感じることができなかった雰囲気がキングパワー・スタジアムに戻ってきたのだ。

“おとぎ話の再現”は、空気感だけにとどまらなかった。ピッチ上ではジェイミー・バーディーや岡崎慎司が前線からの執拗なチェイシングやプレッシングでセビージャのミスを誘い、粘り強いプレーからもたらされたフリーキックから先制点を手にした。ペナルティーボックス角付近からリヤド・マフレズが高精度のクロスボールをゴール前に放り込み、ウェズ・モーガンが押し込んで見せたのだ。彼が狙ってシュートを放ったかは定かではない。偶然、たまたま体に当たったボールがゴールへ転がっていったようにも見えた。

だが、どちらにしても事実は変わらない。レスターは1点を手にし、キングパワー・スタジアムは興奮のるつぼと化した。その事実さえあれば、他のことなどどうでもよかった。

Wes Morgan

Marc Albrighton

■レスターが示した主人公になれる資質

スコアの上では先制ゴールだけで次のラウンドへ進むのに十分だった。しかし、この日のレスターは昨シーズンのプレミアリーグを制したチャンピオンチームだった。前線からかけるプレスが止まることはなく、攻撃が何度も執拗に繰り出されることを“奇跡の目撃者”である我々はよく知っている。60分に生まれたマーク・オルブライトンによる追加点は、キックオフから60分間、レスターが試合を支配したことに対する報いのようなものだった。

そして、サミル・ナスリは自滅したように退場へ追い込まれた。セビージャのフラストレーションを象徴するような出来事だった。そういう意味では、彼も被害者の一人だったのかもしれない。

ただし、優れた劇には終盤にひと波乱が訪れるものだ。そう、まさにシェイクスピアの劇のように。この試合も例外ではなかった。

ここまで何度もレスターのヒーローとなってきたカスパー・シュマイケルがペナルティーエリア内でビトロを倒してしまったのだ。その刹那、スタジアムは静まり返った。もちろん、レスターにとって完全に予期せぬ事態だった。試合前に選手たちへ渡された脚本に書かれていたことではなかったに違いない。

しかし、ヒーローはピンチを乗り越えるものである。物語の主人公になる資質を持った者は、どんな困難が訪れても膝をついたり立ち止まったりはしないのだ。

そういう意味で、この日のレスターは主人公であり、シュマイケルはヒーローだった。彼は完璧にPKをストップし、スタンドに訪れていた父ピーターを喜ばせた。ただならぬ雰囲気に包まれていたスタジアムが、最大級の喝采で満たされた瞬間でもあった。

Kasper Schmeichel

レスターの快進撃は終わることなく、彼らの人生で一度きりだと思われたおとぎ話は“第2章”と銘打ち、これからも書き続けられることとなった。セビージャ戦で見せたように、彼らの独特なスタイルはヨーロッパのどのクラブを相手にしても戦える。ベスト8に残るクラブはどこもレスターよりはるかに大きな資金力を持ち、強力なスカッドを揃えている。だが、今のチームはいかなる不利な予想さえ、覆すことができそうだ。

レスター市内中心部の街角の壁には、“バルセロナよ、かかってこい”という言葉が書かれている。彼らは昨シーズン、イングランドの強豪クラブを相手に戦えることを証明した。そしてセビージャ戦で、ヨーロッパの強豪クラブをも飲み込む力があることを示した。

クラブ史上最高の夜を迎えた後、CL史上最高の番狂わせを起こせないと誰が言えるだろうか。バルセロナすら恐れぬプレミア王者の冒険は、まだまだ続いていく。

文=トム・マストン/Tom Maston

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