ラニエリ解任はやむを得ず…優勝監督を更迭したレスター苦渋の決断は英断となるか/コラム

多くの人々から愛された65歳の指揮官も、今シーズンの不調と降格危機を目の前にしては、おとぎ話もハッピーエンドを迎えることはできなかった

待った無しの状況で求められたのは苦渋の決断であった…。プレミアリーグ残留が危うくなった状況で、王者レスターは最終手段以外の選択肢を見つけることはできなかったのである。

後世に語り継がれることも間違いない最高の夢物語の主人公を演じてからわずか9カ月後、クラウディオ・ラニエリはレスターの監督を解任された。多くの人々がこの決断を非難することだろうが、その多くはこの危機的状況とともに歩んでいる人間ではない。レスターのOBであるガリー・リネカー、リヴァプールのレジェンド、ジェイミー・キャラガーにしてもそうだ。

実際、2位に10ポイント差をつけて優勝したチームを率いる力をラニエリが失ってしまったことは明らかである。直近のスウォンジー戦での敗戦がその一つだ。

シーズンのこのタイミングで、昨シーズンの同じ時期より15も順位を下げているレスターは、依然として危機的状況から抜け出す突破口を見つけられていない。そうした状況では何か動く必要があった。指揮官に対して常にサポートの姿勢を崩していなかった首脳陣は、パフォーマンスの悪いチームメンバーを一新する以外では、監督の解任しか方法を見つけられず、それを実行したに過ぎない。

EMBED ONLY Claudio Ranieri

「今シーズンのプレミアリーグでの状況では、残留が危うくなっている。苦痛を伴うものであり、不本意ではあるが、指揮官の交代が最も必要なことだというのが取締役会の決断だった」と、レスターは公式声明を発表した。非常に難しい議論であるし、実際にクラブ内で相当の話し合いが行われたことは容易に想像がつくであろう。

誰もレスターが連覇することを期待していたわけではなかったが、ここまで危機的な状況に追い込まれるとも予想していなかった。今シーズン、リーグ戦で挙げた白星はわずか5つ。2017年には入ってからはいまだノーゴールで、しかも5連敗中。クラブが優勝した次のシーズンにも関わらず、“残留”を目標としていたとしてもこの数字は受け入れられるものではない。

「ラニエリにもう少しの猶予を」といった考え方もあるかもしれないが、むしろクラブはプレミアリーグのような入れ替わりの激しい場所で我慢を続けたとも見ることができるし、苦渋とはいえ彼を解任するというのは正しい決断であっただろう。

ドレッシングルームで不協和音のうわさが流れたこともあるし、昨シーズン、ジェイミー・バーディーのゴールに歓喜の雄叫びをあげていた選手たちが今シーズンはラニエリを解任に導いた原因を作ったのも確かである。

バーディー、そしてキープレーヤーであるべきリヤド・マフレズ、ダニー・ドリンクウォーター、ウェズ・モーガンといった選手たちはみな、まるで幻だったかのように昨シーズン見せた姿はすっかり影を潜めてしまった。彼らはただ一度優勝したことがキャリアの成功であると慢心してしまったのかもしれない。いずれにしろ、「不調を極めることになった」とシーズン後に語られることは間違いない。

ヌゴロ・カンテを失ったことは明らかに痛手であったが、それでも新たに組織を構築する責任はラニエリにある。夏の移籍市場ではチームに厚み、クオリティ、そして熾烈なポジション争いを生み出すような補強をしなければならなかったが、叶わなかった。イスラム・スリマニだけは調子が良ければ、値段に見合う活躍をしていたかもしれない。

思い返してみると、開幕戦で今では降格圏に沈むハル・シティに敗れたことは不吉な事態の前兆であった。考えにくいとはいえ、優勝の後に降格してしまうかもしれないという可能性がレスターの背後にはつきまとっていた。実際、ラニエリがやって来る前は、レスターは常に降格候補であったし、それが再び繰り返されただけなのだ。むしろ普段と違うのは、彼らが降格争いをしていることではなく、リーグ優勝を勝ち取ってしまったことなのである。

ラニエリは成績不振によりギリシャ代表監督のポストを解かれた後にレスターの監督に就任したことで、リネカー氏を始め多くの人に疑念を持たれ、彼らはクラブが落ちぶれていくことも予想していた。「ラニエリはもう過去の人間で、チームを良い状況に導くことはできない」という声は決して少数派ではなく、1年越しで現実のものとなってしまったのだ。彼自身にとっても非常に不運なタイミングではあった。レスターの133年の歴史上初めての優勝に導いたすぐあとに、このような悲劇的な事態に陥ってしまったのだから。

「昨シーズンのような並外れた結果がまた今シーズンも繰り返されるとは全く期待していなかった。実際、プレミアリーグに残留することが我々にとっての最優先事項であった。しかし、我々は残留を目指して戦っており、何か変化を起こすことが残り13試合で残留を果たす可能性を最大限にするためには必要なことなのだ」、副会長のエイヤワット・スリヴァダナプラバはそう語った。

ことフットボールの世界で、おとぎ話が最後の最後までハッピーエンドで終わることは少ない。それでもわずか2週間前、レスターはクラブにとってただ一人の優勝監督・ラニエリに対して“揺るぎないサポート”をしていく、という声明を明らかにしていただけに、疑問は残るところだ。一人の人間としてラニエリは非の打ちどころがない人物であった。そんな素晴らしい人間が職を失ったのはなんとも残念なことである。

外側から見ると、今回の解任は信じられないほど残念なことのように見える。しかし、思い出して欲しいのはクラウディオ・ラニエリがレスターを優勝させるために雇われたのではなく、残留するために雇われた人物であるということだ。そして今この時点で、ラニエリにはその職務は全うできないという結論が出たに過ぎないのである。

文=ピーター・ストーントン/Peter Staunton

サッカーのライブを観るならDAZNで!1ヶ月間無料のトライアルを今すぐ始めよう。