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1982年W杯より、投票で選ばれた名場面を紹介


パオロ・ロッシの自伝のタイトルは『ブラジルを泣かせた男』というものだ。このタイトルはまさに、イタリアのレジェンドである彼のキャリアを決定づけ、アッズーリを1982年ワールドカップ(W杯)で3度目の世界一へと向かわせることになった試合を完璧に言い表している。

バルセロナのエスタディオ・サリアで行われた、2次リーグC組のイタリアとブラジルの決戦の試合前の時点では、イタリアにチャンスがあると考えていた者は誰もいなかった。ジーコ、ソクラテス、エデル、ファルカン、セレーゾというファンタジー溢れる攻撃陣を擁するセレソンは、ここに至るまであらゆる相手を粉砕していた。一方のイタリアといえば最初の3試合を引き分けで終え、2次リーグ初戦ではアルゼンチンに2-1でどうにか勝利を収めたところだった。

この大会のブラジル戦以前のイタリア代表で、特に期待を裏切っていたのは間違いなくロッシだった。「トトネロ」賭博スキャンダルに関与したとして、2年間の出場停止処分を終えたばかりだった25歳のロッシは、明らかにコンディションの整わない状態で本大会を迎えていた。なお、彼は現在に至るまで犯罪に関与したことを否定し続けている。

イタリアからの視点
文/フェデリコ・カソッティ(Goalイタリア版)

1982年W杯での驚異の復活に関して、パオロ・ロッシは一人の男に感謝しなければならない。イタリア代表を率いたエンツォ・ベアルツォット監督だ。

「試合前にベアルツォット監督は、オスカーとルイジーニョにプレッシャーをかけるように言ってきた。ブラジルのCB2人にはスピードがなかったからだ。彼らは間違いなくミスをするはずだと監督は言っていた」とロッシは自伝の中でこの試合について記している。

「試合後にはすぐにベアルツォットを探した。この信じられないような勝利も、忘れられない瞬間も、すべては彼のおかげだったからだ。彼と抱擁を交わした。抱擁だけだ。言葉は必要ではなかった」

「あの瞬間、最高レベルの幸福を経験したと思う。何年も苦しめられ、疑われ、思い悩んできた末に、空を飛ぶこともできそうな幸福感だった」

ロッシの活躍の瞬間を One Stadium で視聴

大会序盤の数試合のロッシのプレーには、リズムもタッチもひどく不足していた。イタリアメディアは彼を辛らつな批判の槍玉に挙げ、スペインに連れて行くべきではなかったと主張。それでもエンツォ・ベアルツォット監督はロッシにこだわり続け、その決意が決定的な意味を持つことになった。

「ベアルツォットが私を信頼してくれているという事実がすごく重要だった」とロッシはFIFAのインタビューに対して語っている。

ブラジル戦の開始からわずか5分、ロッシは監督からの信頼に応え、アントニオ・カブリーニのクロスに頭で合わせて先制点を記録。W杯史上最も素晴らしい試合と評価する者も多いこの一戦の流れを生み出したゴールだった。

あらゆる要素が内包された試合だった。ファルカンやブルーノ・コンティといった選手たちが魔法のようなプレーを見せる場面もあったし、ジャンカルロ・アントニョーニのゴールが無効とされて紛糾する場面もあった。ジーコに対するクラウディオ・ジェンティーレの悪質なまでのマンマークもあった。オスカーのヘッドをゴールライン上でストップした、40歳のディノ・ゾフの奇跡的なセーブも見所だった。

ソクラテスとファルカンのゴールで2度までは追いついたブラジルだが、そのたびにロッシがゴールを奪い、驚異のハットトリックでイタリアに3-2の勝利をもたらした。2点目はセレーゾのミスを突いてボールを奪い、GKバウジール・ペレスを破ってのゴール。終了16分前にはCKからのこぼれ球に本能的に反応し、無敵に思えた優勝候補を大会から葬り去った。

ブラジルは国全体が強烈なショックに見舞われた。帰国したテレ・サンターナ監督は腐ったフルーツを投げつけられ、ジーコはこの敗戦を「サッカーが死んだ日」と表現した。

イタリアは準決勝に進出。ロッシは完全に目を覚ましていた。カンプ・ノウでポーランドに2-0で快勝した試合でも、ロッシは両方のゴールを記録。西ドイツとの決勝でもやはり決定的な役割を演じてみせた。57分にロッシが先制点を押し込み、最終的にイタリアは3-1で勝利。ロッシのゴールがイタリアをワールドチャンピオンへと導いた。

6ゴールを記録したロッシはゴールデンブーツ(得点王)のタイトルも獲得。FIFAの選出する大会ベストプレーヤーとしてゴールデンボール賞も受賞した。W杯においてゴールデンボールとシルバーボールの両方を受賞したことがある選手は、ブラジルのペレとロナウド、それにロッシの3人だけだ。ロッシはW杯のレジェンドとしての名声を確立させるとともに、ブラジル人にとって最悪の悪夢の中にも確かにその存在を残すことになった。

FIFAワールドカップのオフィシャルパートナー、Sonyによる特設サイト One Stadium をぜひご覧ください。こちらでは近代のW杯各大会からの記録映像を視聴いただけます。

リンク:Sony One Stadium - 1982年W杯ハイライト】

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