コラム:フランス代表でのベンゼマ
クラブとは一転、代表では輝きを放てず、アンリ、アネルカのサブに甘んじる
2009/10/10 1:28:33
一般的に言って、サッカー選手のほとんどは自国の代表としてプレーすることをキャリアでも屈指の名誉だと考えている。そして、サポーターは代表のユニフォームをまとう選手に100%の献身を求める。だからこそ世界中で、代表戦は特別な雰囲気を醸し出している。
しかし、ワールドカップ出場に向けた運命の一日を控え、緊張感が高まるなか、アルゼンチンではチームが南米予選で苦しんでいるのは選手が金のためにプレーすることにしか興味がないからだとの批判の声が上がっている。これに対し、マンチェスター・シティ所属のFWカルロス・テベスは「僕がアルゼンチン代表でプレーしているとき、金のことを考えていると思うかい? 代表でのプレーに報酬なんて求めていない」と異議を唱えたと英『ロイター通信』は伝えている。
一方で、代表に対しての冷めた言動で注目を浴びているのが、レアル・マドリー所属のフランス代表FWカリム・ベンゼマである。先月、絶対に勝たなければいけないホームのルーマニア戦で、「そんなにプレーしたくなかったし、全力を尽くす気にもなれなかった」と発言。代表での出番の少なさに不満を持っていて、「5分くらいの出場で、試合の流れを変えることなんてできない」と口にした。
この発言はフランス国内で論争を巻き起こし、ベンゼマへの非難も高まった。しかし、レイモン・ドメネク監督だけは「受け入れがたいコメントだ」としながらも、10月の予選でもメンバーから落とさなかった。
ドメネク監督は「彼にはそういう考えを持つ権利はあるとしても、それを公言する権利はない。でも、私は過ちを犯した人に手を差し伸べる用意があるし、今回のケースもそうだ。彼は若くて才能もある。将来が楽しみな選手だ。ピッチで答えを出してくれればいいし、彼ならできると信じている」と擁護した。
フランスが南アフリカ行きをすでに決めていたら、あるいはフランク・リベリ、ヨアン・グルキュフ、サミル・ナスリなど攻撃的なプレーヤーが故障していなかったら、ドメネク監督は気分屋ではあるが才能だけは間違いなく持っている21歳に運命を託す必要はなかったかもしれない。
ところが実際には、欧州予選で苦しみ、ケガ人続きのフランスにとって、ベンゼマを残すしか道はなかった。3500万ユーロのストライカーをメンバーから外すのは、いくらユーロ2008でグループリーグ敗退した直後に恋人に公開プロポーズしたドメネク監督でも、リスクが大きすぎる。
しかし、ベンゼマは欧州予選残り2試合、さらには2位に終わる可能性が高いフランスにとって大事なプレーオフの2試合で、試合を決める存在になれるのか?
代表でのここまでのプレーぶりからして、10日のフェロー諸島戦、そして14日のオーストリア戦ともベンチスタートが濃厚である。ただし、フランスは4-4-2の布陣で臨むとみられているため、ティエリ・アンリの太ももの状態によっては、ベンゼマに先発の機会が巡って来るかもしれない。グループ7の格下のチーム相手に存在感をアピールするチャンスだ。
代表25キャップのベンゼマだが、公式戦でのゴールはフェロー諸島戦でしか記録していない。チャンピオンズリーグでの21戦12ゴールを含め、2試合にほぼ1点の割合でゴールを挙げているクラブレベルとは雲泥の差だ。
また、代表で先発したのは13試合。ベンゼマほどの選手なら、5、6点は取っていてもおかしくないが、実際は2ゴールで、そのうち1点はPKによるものである。代表での過去20戦でわずか2ゴールと自信も揺らいでいる様子。プレーに迷いが見られ、相手に気合い負けしているようにも見える。ベンゼマ自身ものテレビ番組『Telefoot』で「代表ではうまくいっていない。普段と同じリズムでやれていないし、プレーも違う。いつものカリムじゃなくて、自信もそんなにない」と認めている。
このようなクラブと代表での違いを、仏『France Football』は小説『ジギル博士とハイド氏』になぞらえて、『カリム博士とベンゼマ氏』と称している。
もちろん、ベンゼマがフランス代表ストライカーとして効果的な働きはできないと断言しているわけではない。ニコラ・アネルカの代表での得点力だって、ワールドクラスにはほど遠い。それでも、代表への意欲を見せ続けているベテランのアネルカに比べると、試合のカギを握る選手として、ベンゼマは未熟だ。
今シーズンから加入したレアル・マドリーからも、同じような意見が聞かれている。マヌエル・ペジェグリーニ監督は、現時点でベンゼマがレアル・マドリーにふさわしい選手かどうか、確信を持っていないと報じられている。それでも、本人は新天地でいいスタートを切った。
そうなると、ドメネク監督の手腕が問われるのは避けられそうにない。ただし、代表の抱えるさまざまな問題の責任を追及されながら、少なくとも来年の夏までは続投が決まっている。
ベンゼマがフランス代表でもヒーローになる日は必ず訪れるはずだ。しかし、現状を考えると、その機会は来年のワールドカップ以降となってしまうだろう。
ロビン・ベルナール/Goal.com
