コラム:南アフリカは「百聞は一見にしかず」
慎重かつ緻密な行動をすれば、刺激的なW杯が楽しめるはず
2009/07/22 1:58:17
一時は代替開催も検討された。しかし、コンフェデレーションズカップの成功により、来年のワールドカップは、予定通り南アフリカで行われる。
そこでサッカーファンにとっても、世界で最も凶悪犯罪の多い国として知られる、現地・南アフリカの治安問題は、いま気になる話題のひとつではないだろうか。
ただ、旅したことのある人なら誰もが感じたことだろうが、「話を聞くのと行くのとでは大違い」なのが、南アフリカだ。
殺人事件の件数は日に50件を超え、その数は日本の約16倍で、人口が南アフリカの6倍を超えるアメリカよりも多いという。
人口は日本の約1億2700万人に対し、南アフリカは約5000万人となるが、殺人事件発生件数は日本の50倍というから、恐ろしくもなる。
事実、僕自身コンフェデ杯の取材で、南アフリカ入りする前は、恐怖心でいっぱいだった。香港で搭乗したヨハネスブルク行きの機内は、当然のごとく黒人が大多数(南アフリカの人口の約8割は黒人)。小心者の僕としては、そのいつもと異なる空気感だけで気が滅入ってしまった。
ヨハネスブルクに到着すると、緊張度はさらに高まった。これまでに約40カ国を訪問してきたが、過去に経験のない緊張感。イミグレーションを経て、荷物を受け取り、トイレへ。用を足していると、バタン!という扉の音とともに人の気配を感じる。後方が気になって、スムーズに事が運ばない。それほどまでに、心臓はバクバクと揺れていたのだ。
しかし、3週間の滞在を経て帰国したいまは、それも笑い話でしかない。ひょっとすると、南アフリカという国は「百聞は一見にしかず」という言葉が最もぴったりくる国かもしれない、そう思えてしまうのだ。
もちろん、だからといってわずか3週間しか滞在していない僕が、「南アフリカは危なくない」などと軽々しく言うつもりはない。だが、ヨハネスブルクらの大都市を考えても「街を歩けば100%に近い確率で強盗に遭う」など、日本で伝えられている南アフリカの治安情報が誤っていることは紛れもない事実だと思う。
実際に、先に南アフリカでの殺人事件に関する数値を記したとおり、犯罪件数は世界有数。だが、イラクやアフガニスタンのような戦争地域ではないし、ヨハネスブルクやケープタウンを中心とした都市部では約1000人の在留邦人が(そのほか常時300人ほどの日本人がケープタウン近海でのマグロ漁船に乗っているとされている)、日々の生活を送っているのだ。
夜間とはいえ「ホテルを一歩出たら強盗に遭う」というのは大げさだし、「だれ彼構わず窃盗団の餌食になる」わけではない。もちろん、ワールドカップが行われれば、比較的裕福な外国からのサッカーファンが格好のターゲットになることは容易に想像ができる。それでも、自らの注意の仕方次第では、かなりの確立で難を逃れることは可能になるに違いない。
南アフリカにはケープタウンをはじめとした風光明媚な観光スポットにサファリなど魅力的なアクティビティが多数存在し、日本からも毎年約3万人のツアー客が訪れているが、在南アフリカ大使館に聞けば、ここ3年間はまったく事件は起きていないという。
もし来年、ワールドカップで南アフリカを訪れようとしている人がいるなら、「ツアーに参加すれば問題ない。もし個人で行くなら、気をつけて、しっかり旅の計画を整えて」と言いたい。もちろん、無謀な行動に出れば、危険度はこの上ない。しかし、「ただただ危ない」という情報は間違っている。慎重かつ緻密な行動をすれば、刺激的でかつてないアフリカ初のワールドカップを体験できるはずだ。
文・栗原正夫
