ベン・メイブリーの英国談義:一か八かの賭けに出たノリッジ

監督解任でプレミア残留なるか
クリス・ヒュートン監督と、アシスタントのコリン・カルダーウッド、コーチのポール・トロロープを解任するというノリッジ・シティの決断は、一か八かのギャンブル的な匂いがする。暫定監督となったニール・アダムズは、カナリーズのU-18チームを昨季のFAユースカップ優勝に導いた経験を生かすこともできるだろうが、短期的には監督交代が起こし得る表面的な士気向上効果だけでも効果は表れるかもしれない(1年前のスタジアム・オブ・ライトでのパオロ・ディ・カーニオを見てみるといい)。やるべき仕事ははっきりしており、すぐ目の前に迫っている。次の土曜日にクレイブン・コテージでフラムを破り、直接のライバルに8ポイント差をつけて残留に前進することだ。サンダーランドは1試合多く残してはいるが。

アダムズは注意深く気を配り、今週のクラブの意識をその1試合だけに集中させることだろう。だが、視点を広げてみるとノリッジの置かれた苦境の重さがより際立って見えてくる。ロンドンに乗り込む前の時点で、ノリッジは敵地で戦った最近6試合で1ポイントすら獲得できていない。アウェー7連敗を喫したとすれば、コテージャーズとの差はわずか2ポイントに縮まってしまう。そして迎える今季最後の4週間を、カナリーズのファンは恐怖の試験日のように、あるいは危険な高利貸しへの返済日のように、カレンダーに赤丸をつけて待っていることだろう。リヴァプール、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、アーセナルという最後の恐るべき4つのハードルだ。だからこそノリッジは、今の時期を迎える前に残留を決めておくことが何としても必要だった。

日曜日の夜にクラブが出した声明では、ヒュートンが昨季のチームを11位に導くという「素晴らしい」業績を残したとたたえられていた。1992-93シーズンに創設1年目のプレミアリーグのタイトルに挑戦し、最終的に3位に終わって以来の最高成績だった。だが実際のところは、元ニューカッスル・ユナイテッド、バーミンガム・シティの指揮官が指揮を執り始めた昨シーズンのうちから、腐敗はすでに進行し始めていた。ポール・ランバートのラストシーズンに記録した12位を上回ったノリッジだが、勝ち点は3ポイント減少していた。2011-12シーズンにはリーグ戦52ゴールを記録。グラント・ホルトが15点を奪い、ウェス・フーラハンが相手のライン間でその危険を引き立てていた。その1年後、ゴール数はわずか41にとどまった。

苦戦する攻撃陣を蘇らせることが急務だったため、ヒュートンは2013年に実に5人ものストライカーを獲得。だがシエラレオネ代表のケイ・カマラは4カ月間のレンタル中にごくわずかな期間のみ輝いただけだった。ルチアーノ・ベッキオは1月に他の数人の選手たちに続いてリーズ・ユナイテッドからやって来たが、一度もネットを揺らすことはなく、今では時折交代出場で起用されるだけだ。新シーズンに向けた移籍市場での動きはさらに積極的なものだった。ヨハン・エルマンデルがレンタルで加入し、ギャリー・フーパーも最終的に500万ポンドでセルティックから移籍。そして2013年3月という早い時点で、引く手あまただったリッキー・ファン・ヴォルフスヴィンケルを850万ポンドで獲得したことが発表されると、欧州全土に衝撃が走った。

理論上は攻撃的であるはずの新たなアプローチに合わせて、ヒュートンは2トップで戦う機会が多くなった。その結果は、意図した通りに機能しなかった、の一言では済まないほどだ。フーパーの得点率はスコットランドでの活躍時の25%前後にまで低下。それでも彼が記録した5ゴールという数字は少なくとも、エルマンデルとファン・ヴォルフスヴィンケルのそれぞれ1点ずつという悲惨な結果を上回っている。ヨハン・ニースケンスやロビン・ファン・ペルシらの豪華なビッグネームの推薦を受けてノリッジに加入したオランダ人は、エヴァートン戦での同点ゴールでデビューを飾ってからは、哀れなまでにゴールに見放され続けてきた。彼もフーパーも、これまでのキャリアでは前線のパートナーとうまく共存しつつ活躍してきた選手だが、今季のキャロウ・ロードではどの組み合わせを取ってみても一つたりとも正解には見えなかった。得点数はこれまでわずか26。クラブのシーズン最小記録である36点にもあと10点足りていない。

31歳のフーラハンはもはや理想的な戦力ではなくなったかもしれないが、それにしても彼は、得意とする中央のポジションでは今季リーグ戦で5試合しか先発していない。4-4-2のシステムによって、存分に力を発揮できないウイングの位置に押し込められてしまった。1月にはチーム全体に対して忍耐の緒を切らし、ノリッジを「クソッタレの便所クラブ」と表現。ランバート率いるアストン・ヴィラへの移籍を試みたが失敗に終わり、一旦は燃やしてきた橋を無理やり引き返さなければならなかった。その数日前には、ニューカッスル・ユナイテッド戦でファンからブーイングを浴びたロバート・スノッドグラスが怒りに任せて悪態をついていたし、ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオンに無情にも敗戦を喫した土曜日の試合では、背後のゴール裏スタンドに食ってかかったGKジョン・ラディを警備員が制止しなければならなかった。

普段のイースト・アングリアに人々が持つイメージとは異なり、穏やかならざる日々だった。サポーターが不満を募らせたのは結果だけではなく、ピッチ上でのアイディアや団結力、推進力の欠如が目立ってきたことに対してでもある。ウェスト・ブロム戦の終盤になると彼らは「ヒュートンに出て行ってほしい」と歌い、まだプレー中であるにも関わらず、スポンサーが雰囲気を良くするために配布していたハリセンを投げ入れた。状況はもはや、耐え難いものとなっていた。リチャード・レー氏は『ガーディアン』で次のように記している。

「クラブ内で重要な存在として尊敬される、長年にわたってここでプレーしてきたある選手が、ひそかに知らせてくれたことがある。選手たちはいつもヒュートンから批判されていると感じており、監督がネガティブな部分ばかりを強調するため、彼らはチャンスを生み出すこと以上にミスをしないことを強く意識して試合に臨んでいたということだ」

ヒュートンがこの夏に去ることはいずれにしても予期されていたが、ノリッジが残留のための勝ち点をまだ必要としている状況で、クラブは現状の閉塞を抜け出すための最後の必死なあがきとして賭けに出るべきだと感じたということだ。アダムズにとっては、残留を果たせば英雄になれるし、降格したとしても前任者が責められるという失うもののない状況だ。とはいえ、すぐ目の前にある任務すら決して簡単なものではない。カナリーズは1986年3月以来、過去15度の対戦で一度もフラムを破っていないのだ。


文/ベン・メイブリー(Ben Mabley)
英・オックスフォード卒、大阪在住の翻訳者・ライター。『The Blizzard』などサッカー関係のメディアに携わる。今季も毎週火曜日午後10時よりJスポーツ2『Foot!』にてプレミアリーグの試合の分析を行う。ツイッターアカウントは@BenMabley