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熱い、熱い、ギリシャのファン

「ロッカールームに入れ!」

先週の試合は、イラクリスとのダービーでした。でも、エピソードが満載なのは、試合後の方で…。

まるで暴動でした。

試合が終わってロッカールームへ帰っているときのこと。クラブの職員が、全力で走ってくるんです。しかも、真顔で。「ロッカールームに入れ!」と。

ロッカールームに入ると、すぐにロッカーを移動、さらにイスも持ってきて、扉を「封鎖」です。その直後、外から扉をガンガン叩く音が聞こえ始めました。ロッカーを動かしたときにコンセントが抜けたのか、電気が消えた。ドキドキしましたね。

地上から1段下がったところにロッカールームがあるので、窓は換気用として天井にある形。スタジアムの外にあたる2枚のガラスの向こうからは、叫び声が聞こえてくる。地上とガラスとの間にフェンスが入っているのですが、あれがなければ確実にガラスは割られていたでしょう。警察が使った催涙弾かもしれませんが。そのうちくしゃみが止まらなくなり、のども痛くなってくる。仕方ないので、タオルで口を押さえていました。結局、2時間半、ロッカールームに閉じ込められていました。

予兆はあったんですよね。前々節に負けた後、練習場にファンが来て、選手に向かってこちらの悪い言葉を連呼している。帰り際に何か言っていて、後で聞いたら「次は何も言わずに殴るからな」って。

試合前にも、変化はありました。いつも満員のスタジアムなのに、4分の3くらいしか観客が入っていなかった。

試合としては、アウェーの相手が守って蹴る、という展開。0-0で試合が進んでいき、こちらはどうしても前掛かりになる。向こうはカウンターに徹して、実際に何度か危ない形を受けることがありました。

ベンチは3人ずつウォーミングアップをするのですが、最初はMFが入って、最後は大きな、といっても180センチちょっとのFWを、という交代で、オレが出ることなく3人の枠を使い切りました。まあ、これまで先発かベンチかで、途中出場したことはなかったんですけどね。でも、点を入れたのはイラクリス。190センチくらいの途中投入された大型FWに、終了間際に決められました。

この敗戦で、ヨーロッパリーグ出場圏内の5位以内に入ることが厳しくなりました。そういうわけで、試合後は先ほど話した状態に…。

ようやくロッカーを出ると、ガラスが割られまくっていました。一番壊されていたのは、監督の部屋。50人くらいの警察官に守られたバスで、ようやくスタジアムの外へ。いつもは試合翌日に回復トレーニングをするのですが、帰る前に休みにすると連絡がありました。日曜、月曜と連休になったわけですが、危ないのでどこにも行けませんでしたが…。

「異次元」なアリスのサポーター


ギリシャのサポーターの熱気は、すごい。世界でも有数でしょう。思い出すのが、ギリシャで初めての試合となったPAOK戦。これから生きていく上でも、あれをこえる衝撃は、そうそうないでしょう。

テッサロニキの街中には、チームの落書きがそこらじゅうにあります。アリスの黄色と黒か、PAOKの白と黒。イラクリスは、ほとんど見ませんね。たぶん今住んでいる家の周りでも、5分も探せば相当な数の落書きが見つかるはずです。

いつもスタジアムに入る前、最後の200メートルくらいは、激励でバンバンとバスが叩かれます。いくら熱いファンでも、日本なら実際にバスを叩くことはないでしょう? でも、ここでは違う。

「サポーター」という考え方が、オレの中で変わりました。日本では選手個人を応援してくれて、移籍しても応援を続けてくれる。でもここでは、チームへの、アリスへの思い入れだけ。スタジアムには、お年寄りもいる。子供もいるし、家族を巻き込んで応援する。きっと大人になったら、ああなるんでしょう(笑)。女性もいないわけではない。そうして街中で楽しみ、熱い気持ちで一緒に戦っている。

以前に話したように、ブーイングは相手の声をかき消す。応援の声で奮い立つということはあったけど、こちらではブーイングで相手のパスを回せなくさせてしまう。いつもと同じCKでも、大声援で「あれ、これは入るんじゃないかな」と思わせてくれる。あのPAOKとの一戦、アリスのサポーターの様子は「異次元」でした。それに応えられないと、矛先はこちらへ向かってくるのですが…。

でも今回、オレも申し訳ないと思っていても、応えようがなかった。試合に出られなかったからです。前回、「約束事を破ってでも攻めに出る」と言ったのに…。これまで以上に責任を取るという意味でも、試合に出なきゃいけない。そうして、ファンの気持ちを受け止めたい。

◇ ◇ ◇

追記:2日間のオフ明けに練習へ行ったら、監督が代わっていました…。


~プロフィール~
坂田大輔(さかた・だいすけ)
1983年1月16日生まれ、神奈川県出身。2001年に横浜F・マリノスユースからトップチームへ昇格。プロ初年度から出場するなど、活躍した。03年にはU-20日本代表としてUAEで開かれたワールドユース選手権に出場し、得点王に輝いている。06年にはイビチャ・オシム監督の下、フル代表としてキャップも刻んだ。J1通算247試合46得点の記録を残し、今年1月にギリシャ・スーパーリーグのアリス・テッサロニキに移籍。オフィシャルブログはhttp://ameblo.jp/guapoblog/

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