コラム:超越したレベルの4強へ再び 内田篤人のCL開幕

日本人最高点を知る男
2013-14チャンピオンズリーグ(CL)本戦が17日からスタート。香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)、本田圭佑(CSKAモスクワ)、内田篤人(シャルケ)の3人が先発出場し、宮市亮(アーセナル)もCL初参戦を果たした。

香川は17日のレヴァークーゼン戦で今季公式戦初先発。71分間プレーし、決定的シュートも放ったが、インフルエンザの影響でキレと鋭さを欠いたようだ。同じく17日に昨季CL王者・バイエルンと対戦した本田は孤軍奮闘したが、決定的な仕事はなし。「ワールドカップで勝つためには個を磨くこと。日本のストロングポイントはチームワークだと思うけど、どうやって自立した選手になって個を高められるか。この1年、強い覚悟を持ってやっていくしかない」と強調する彼としては不本意な出来だっただろう。宮市は後半ロスタイムの登場でまず第一歩を踏み出したところ。これからが本当の勝負となる。

彼ら3人に比べると、CL参戦3回目の内田篤人は余裕がうかがえた。シャルケはハイプレスで応戦してきたステアウア・ブカレストに苦しんだが、内田とファルファンで形成する右サイドは終始主導権を握り、数多くのチャンスを作っていた。後半22分に内田のクロスがそのままゴールに転がり込んだのはラッキーだったが、この一撃が相手の戦意を失わせ、3-0の圧勝につながった。本人は「もっと普通のゴールがよかった」と複雑な表情を見せたようだが、今季CL初戦としては悪くないスタートだったといえる。

渡独1年目の10-11CLでベスト4の大舞台を踏んだ男が目指すのは、それ以上のレベルである。マンUと対峙した時の衝撃を再び味わいたいと熱望しているからだ。

「ベスト8のインテルとその上のマンUとは何もかもが違った。同じスポーツじゃないというか、どうやったら勝てるのなかって…。試合をしながら『ああ、こいつらには勝てねえな』って思いました」

「マンUは試合の状況、点差とか時間とかを考えて、ムリしてしかけてくる時と、簡単に回して時間をかけるところのメリハリがすごかった。ルーニーなんか、ボールが回らないと思い始めたら引いてきて、サイドチェンジしてまたボールをもらって動いてたし。それにみんなチームプレーに徹してた。まずチームプレーがあって、その先に個人の自由がある。自分たちがやりたいプレーをやり始めたのはある程度、点差が開いてからだった。やっぱりCLはベスト4からだって改めて感じましたね」と当時の内田はしみじみとこう語っている。

ルーニーを筆頭に超越した面々に凄まじい底力を突きつけられたあの一戦は、彼の中の「世界基準」になっているに違いない。ただ、あれから2年以上の月日が経過し、内田自身も欧州でキャリアを重ねた。昨季CLではアーセナルと同組だった1次リーグを1位通過しながらラウンド16でガラタサライに敗れたが、経験値はしっかりと蓄積した。未知の世界を一目散に突き進んだシャルケ1年目とは違って、対戦相手や状況によって戦い方を変化させられるだけの器を体得し、3度目のCLに挑んでいるだろう。ステアウア戦は幸運にも助けられたが、そんな試合巧者ぶりも随所に出ていた。こうした自分自身の成長を存分に試せる時が来たのだ。

今季のシャルケはバーゼル、チェルシー、ステアウアと同組という大激戦区。16強入りも容易ではないが、内田は3年前を知るファルファンやヘヴェデス、フンテラールらとともにチームをけん引していく必要がある。その躍進がザックジャパンにも還元されることを賢い彼ならよく認識しているはず。可能な限り高いところまで上り詰めて、日本代表にいい刺激を与えてほしいものだ。


文/元川悦子
1967年長野県松本市生まれ。94年からサッカー取材に携わる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は練習にせっせと通い、アウェー戦も全て現地取材している。8月末に上梓した近著に「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由」(カンゼン刊)がある。