ベン・メイブリーの英国談義:リヴァプールの最後の仕事

得失点差勝負になったら…?
驚異の反撃を見せたクリスタル・パレスが月曜日の試合を3-3の引き分けに持ち込んだことで、マージーサイドの人々の指の爪と血圧は今後1週間にわたって危機に晒されることになった。大方の予想通りマンチェスター・シティが水曜日のアストン・ヴィラ戦に負けなかったとすれば、再び首位の座を失うリヴァプールは、「奇跡を祈りながら」「不安を抱えて他会場の結果を待ちつつ」「ラジオをエティハドの試合に合わせて」(ほかにも、無数に存在する最終節の決まり文句の中から好きなものを選んで構わないが)今季プレミアリーグの最後の日曜日を迎えることになる。マヌエル・ペジェグリーニのチームが残り2試合のどちらかで2ポイントを落としたとしても、レッズはやはり得失点差という非常に悔しい理由でタイトルを逃すことは間違いない。

だがこういった話は、9点の開きがある得失点差を埋めることは不可能だという仮定を確かな事実として設定した上で成り立つことだ。本当にそうなのだろうか? 先週のFoot! TUESDAYでは、リヴァプールがリーグ優勝するためにニューカッスル・ユナイテッドに10-0で勝利する必要がある状況になれば面白そうだと言ったが、決してジョークではない。本気で言っていたのだ。いかに可能性が低かろうとも、逆転の可能性が存在するという魅力的な状況は見応えがあるはずだ。

もちろん、過去にプレミアリーグの1試合で二桁得点を記録したチームは存在しない。イングランドのトップリーグでそれが起こった最後の例は1963年のボクシング・デー。フラムに乗り込んだイプスウィッチ・タウンが10-1で粉砕された試合だった。1992年にトップリーグが名称を変更して刷新されて以来、最多得点差の試合はアンデイ・コールの活躍によりマンチェスター・ユナイテッドが1995年3月に記録した9-0の勝利。哀れな被害者となったのはイプスウィッチだった。2009年11月にはトッテナムも二桁にあと一歩まで迫り、ウィガン・アスレティックを9-1で蹂躙した。1999年9月のニューカッスル対シェフィールド・ウェンズデー、2010年5月のウィガン対チェルシー、2012年12月のチェルシー対ヴィラでもそれぞれ8-0のスコアが記録されている。だが半世紀以上にわたって、「10」という魔法の数字に手が届いたチームは存在しない。

だが、一つ重要な点に注意しておかなければならない。プレミアリーグで過去に1試合10得点を記録したチームはないが、10得点を記録しなければならない状況に置かれたチームもなかったということだ。

99%の場合、リーグ戦の試合において重要なのは勝利を収める上での点差よりも勝利そのものだ。一例としてはリヴァプールがアーセナルをホームに迎えた2月の試合でもそうだったように、片方のチームが早い段階で4点や5点を奪って勝負を決めてしまったとすれば、足をペダルから離して減速してしまうのが普通だ。相手に恥の上塗りをする必要はないし、(ガナーズ戦でのジョードン・イベとイアゴ・アスパスのように)若手や控え選手を一人か二人ベンチから送り出し、その後の重要な試合に向けて力を温存してもいいだろう。だが、次の試合がもうなかったとしたら? 5点や6点や7点をリードしても、まだ攻め続ける必要が実際にあったとしたら? そのゴール数にタイトルの行方が懸かっているとすれば、果たして何ゴールまで重ねることができるものだろうか。

ケーススタディーに足るほどの実例は多くない。だが先週土曜日に国境の北側で、アンフィールドでの試合に向けて格好のお手本となりそうな事態が発生していた。

スコティッシュ・チャンピオンシップ(2部)のシーズン最終節を迎え、2位のハミルトン・アカデミカルは首位ダンディーと2ポイント差。ゴール数ではハミルトンが上回っていたが、得失点差は8点リードされていた。ダンディーがホームでダンバートンに敗れれば、ハミルトンが勝った場合優勝できるが、ダンディーが引き分けなら両チームは勝ち点で並ぶことになる。ハミルトンは万全を尽くす決意を固め、最下位のグリーノック・モートンを相手に開始直後から猛攻を繰り出した。開始8分で2点差、ハーフタイム時点で5-1とリードすると、後半45分間もまったく同じペースでゴールを重ね、最終的にクラブ新記録となる10-2のスコアで勝利を収めてしまった。

彼らが万全を期したのは確かだ。唯一の誤算はダンディーが2-1の辛勝で逃げ切り、勝ち点2ポイント差で優勝と自動昇格を勝ち取ってしまったことだった。だが、有効な一例であることに変わりはない。ハミルトンは、ダンディーが引き分けた場合に優位に立てるようにするため少なくとも8点差で勝たねばならないことを分かっており、その上で実際にそれを成し遂げたのだ。より古く有名な例としては、EURO1984予選でのスペインのケースがある。オランダを上回り、フランスで開催される本大会の出場権を奪い取るためには、スペインはマルタに11点差で勝利することを必要としていた。セビージャの凍えるような夜の試合を18871人のファンが見守る中、スペインはしっかりと12-1で勝ってみせた。

アンフィールドで得失点差を追い求める展開となる可能性を予期したのは私だけではない。セルハースト・パークで計6ゴールの試合を演じる前に、リヴァプールのブレンダン・ロジャース監督もこう話していた。

「大量点を奪って状況をひっくり返すことができるチームがいるとすれば、それは我々だ。そこに疑問はないし、そうすることが我々の目標になる。以前にも例のあることだ。チェルシーはシーズン最終戦でウィガンに8-0の勝利を収めた。ニューカッスルへの敬意を欠くつもりはまったくないが、大量点を奪える可能性があるチームはリヴァプールだ。我々は1-0のチームではない」

皮肉にもこの姿勢が、パレス戦での失敗につながってしまったのかもしれない。だが相手をリスペクトするかしないかに関わらず、最終戦のカードがホームでのニューカッスル戦というのは、ロジャースにとってほかに選びようがないほど最高の組み合わせだ。低迷するチーム同士のカーディフ・シティ戦では勝ち点3を獲得したとはいえ、ジョーディーズはヨアン・カバイェを望まぬ形で失って以来、最もモチベーションを欠いた存在感の薄いチームとなった。その後の14試合で10敗を喫して計29失点、得点はわずか10点という低調ぶりだ。2008年に退任間際のスヴェン・ゴラン・エリクソン率いるマンチェスター・シティがミドルスブラとのアウェーゲームに1-8という痛烈な敗戦を喫した経験からも分かるように、ほぼ何の目的もない状態で第38節を迎えたチームには何が起こってもおかしくはない。

そもそもの話として、リヴァプールはイングランドサッカー界で最も爆発的な攻撃力を持ったチームだ。生きるか死ぬかのシナリオの中で、90分間を通して全力疾走を続けるよう求められたとき、彼らはどこまでやれるだろうか。ウェスト・ハム・ユナイテッドがエティハドでどれほど戦えるかは何とも言えないが、レッズは栄冠の可能性を最大限に高めるため可能な限りの手を尽くさなければならない。その前にヴィラがシティを破ってくれない限りは、必要なのはとにかくゴール、ゴール、ゴールだ。


文/ベン・メイブリー(Ben Mabley)
英・オックスフォード卒、大阪在住の翻訳者・ライター。『The Blizzard』などサッカー関係のメディアに携わる。今季も毎週火曜日午後10時よりJスポーツ2『Foot!』にてプレミアリーグの試合の分析を行う。ツイッターアカウントは@BenMabley