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明暗を分けた両チームの今後は?

寝起きの歯磨き粉の味が口に残り、金曜の夜の馬鹿騒ぎも引きずっていたであろうファンたちは、この異常な試合をどう受け止めたのだろうか? ランチタイムキックオフの試合は退屈なものになりがちだが、リヴァプールは鮮やかにその罠を回避し、首位の座を間もなく失うことになる相手をアンフィールドで圧倒してみせた。アーセナルにとって唯一の慰めとなったのは、結果的に彼らの戦いぶりが週末のプレミアリーグの中で最も恥ずかしいものとはならなかったことだ。その不名誉な栄誉を手にしたのはまたも、単調な戦いに終始したマンチェスター・ユナイテッド。デイビッド・モイーズのチームはホームでのフラム戦で、60分にわたって追いかける展開を強いられた末、結局勝ち点1のみの獲得に終わった。相手はひとつ前の試合で、4部降格回避を目指して戦っているシェフィールド・ユナイテッドに敗れていたチームだった。

リヴァプールにとってさらに喜ばしいのは、宿命のライバルチームとはっきり比較できることだ。まだ前半16分という時間に、ジョーダン・ヘンダーソンが右サイドへと持ち上がると、すでにズタズタにされていたアーセナルの守備ラインは、ルイス・スアレスとダニエル・スタリッジに対して必死に後退して対応することを強いられる。最後は自陣内からの意欲的なスプリントで走り込んでいたラヒーム・スターリングが決めて、スコアを3-0とした。2008-09シーズンにサー・アレックス・ファーガソンのチームが見せた名場面を思い出させるゴールだった。全盛期を迎えたクリスティアーノ・ロナウドを擁する欧州王者が、エミレーツでのチャンピオンズリーグ準決勝の試合でガナーズを粉砕したときのことだ。

試合序盤に効率よくゴールを奪ったスティーブン・ジェラードとマルティン・シュクルテルのセットプレーを別にしても、2-0から4-0になるまでの時間帯にリヴァプールが見せたものは、今季のイングランドのあらゆるピッチ上で見られたプレーの中でも最も畏敬の念を引き起こさせるフットボールだった。時間にすればほんの10分間のことだが、圧倒的に押し込むリヴァプールはその時間をより長く感じさせた。速攻からの2つのファインゴールだけでなく、クロスバーを越えたスタリッジのシュートもあったし、CK獲得につながるスターリングの裏への飛び出しもあった。そのCKからのボールを受けてスアレスが放ったシュートは年間ベストゴールを惜しくも逃し、ポストに跳ね返ったボールはコロ・トゥーレが押し込みきれなかった。オンデマンドサービスで映像を探してみるといいだろう。どのチームを応援しているファンであっても、3度も4度も観直して損はないはずだ。

サッカー界では心に訴えかけるようなジンクスが好まれるものだ。リヴァプールが最後にアーセナルから5ゴールを奪ったのは、50年近く前の1964年4月、ビル・シャンクリーが初のリーグタイトルを獲得した瞬間だったことがすぐに思い出された。そこからリヴァプールは25年間で13度のリーグ優勝という栄光の時代を築き上げた。その後の約25年間は何ももたらさなかったが、不毛の年月は終わりを迎えようとしているのだろうか? いつも短絡的に「今年こそ俺たちの年さ」と言っては物笑いにされるというのがレッズファンのステレオタイプだが、現在のムードはより慎重でありながらも確実に現実味のある楽観論だ。「今シーズンじゃないけど、ひょっとしたらもうすぐ…」と。

今シーズンがまだその時ではないと考えられる理由はいくつかある。速いプレスをかける攻撃的な5人の後ろにジェラードを中盤のスイーパー的役割として配置する戦い方は、アーセナルやエヴァートンのようにポゼッションを志向するチームを相手にしたときには見事に機能し、素早い攻守の切り替えとカウンターを生み出してきた。だが相手にボールを持たされ、ジェラードとヘンダーソンの役割分担がさほど明確ではなくなるようだと、リヴァプールは様々な形で不満を募らせるとともに守備面で危険に晒される。アンフィールドでのアストン・ヴィラ戦の前半には特にそれが顕著だった。さらに決定的なのは、リヴァプールにはまだまだ安定感が欠けており、中盤や攻撃陣に少し欠場者が出ると大きく影響されてしまうことだ。マンチェスター・シティやチェルシーも控え選手のクオリティーに関しては妙な問題を残してはいるが、十分に効率的な戦いができているため、シティがキャロウ・ロードでつまずいたようなことは、それだけで大きなニュースになるほど珍しい出来事となっている。

だが、「まだ」というのがキーワードだ。ブレンダン・ロジャースがケニー・ダルグリッシュから監督の座を引き継いで以来、アンフィールドには常に明確な青写真が存在していた。ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオンに敵地で0-3の敗戦を喫した昨シーズン開幕戦の時点でもそうだったし、先週末にロジャースが振り返っていたように、その2週間後にホームでアーセナルに敗れた際もそうだった。当初は戦うのに必要な戦力が整っていなかったが、18カ月が経過し、ビジョンを実行に移すべくタレントの獲得と成長の両面で驚くべき進歩が遂げられてきた。この進歩の過程の次の舞台は、チャンピオンズリーグでの戦いということになるはずだ(願わくばそれがスアレスの残留につながってほしいところだろう)。そして欧州での戦いと並行して、2014-15シーズンのプレミアリーグ優勝のタイトルを本格的に狙っていくことだ。

アーセナルに関して言えば、アーセン・ヴェンゲルは後半の最中も試合後の会見の際にも寂しげな様子だったし、そうなることは理解できる。キャプテンのミケル・アルテタによれば、ハーフタイムには普段ではあり得ないほどの怒りを見せていたとのことだ。監督がこの試合について評した2つの点はいずれも正しいものだった。チームの信頼性には大きな疑問がつけられるということと、それに対する最も明確な答えは、今後も厳しいスケジュールの2月を戦っていく中で出さねばならないということだ。

ガナーズがシーズンのこの段階で本格的にタイトル争いに絡んでいた3つの直近の例を思い出すことは、悲観的なアプローチになってしまうかもしれない。ちょうど6年前の2008年2月11日、彼らは26試合を終えて5ポイント差で首位を走っていた。だが、運命を分けたのはセント・アンドルーズでの一戦。エドゥアルド・ダ・シウバが恐ろしい脚の重傷に見舞われ、95分にジェームズ・マクファデンにPKを決められてバーミンガム・シティに勝ち点1の獲得を許した試合だった。その後4月半ばまでのリーグ戦8試合で1度しか勝てなかったアーセナルは、最終順位で3位まで沈むことになった。

2009-10シーズンには、残り7試合となった3月20日まで首位を守っていた。だが、またもセント・アンドルーズでアディショナルタイムの同点弾を許し、そこから勝ち点8しか積み上げることができなかった。その1年後には、リーグカップ決勝の89分にオバフェミ・マルティンスに奪われた1点が悪夢の引き金となった。マルティンスが所属していたチームは…お分かりだろう。やはりバーミンガム・シティだ。ヴェンゲルのチームはここから13日間で、3つのカップ戦すべてから相次いで姿を消すことになってしまう。リーグ戦での戦いぶりもそれに同調し、ウェンブリー以降の11試合ではわずか2勝、勝ち点12しか獲得できず。優勝に最も近い位置にいたはずのガナーズは、チャンピオンズリーグの予選プレーオフを戦わねばならなくなった。

だが、今年のチームはより力強く作り上げられている。敵地でニューカッスル・ユナイテッドに勝利を収めたクリスマス後の試合や、終始厳しい戦いを強いられながらも2-0で勝ち点3をもぎ取ったクリスタル・パレス戦などがそれを示している。そういう文脈の中では、シティ戦とリヴァプール戦の2つの大敗で11ゴールを許したことはさほど大きな問題にはならない。その他の23試合ではわずか15失点しか喫しておらず、そのうち17試合でアーセナルは勝利を収めているのだ。現在の上位7チームとの直接対決ではここまで7試合で勝ち点8の獲得にとどまっているのは確かだが、一方で残りの13チームとの対戦では、18試合で47ポイントという完璧に近い成績を残してきた。この数字で常に首位あるいはその付近にとどまってきたことを考えれば、今後も欧州圏内の相手に苦戦が続いたとしても、その他の相手を倒し続ければ今の位置にとどまることができるはずだ。

もちろん、冬の移籍市場で選手層を厚くできなかったということは、オリヴィエ・ジルーや、調子を落としているメスト・エジルに休息を与えられないという不安を残しているということだ。一方で負傷や出場停止により、中盤の基礎のバランスは崩れている。だが、グーナーたちにとって明るくなれる理由もあと一つある。今シーズン中にバーミンガムと対戦する可能性はもうないということだ。そして水曜日に行われる「厳しい」日程の次の試合は、フラムに勝つこともできなかった混乱中のチームが相手である。


文/ベン・メイブリー(Ben Mabley)
英・オックスフォード卒、大阪在住の翻訳者・ライター。『The Blizzard』などサッカー関係のメディアに携わる。今季も毎週火曜日午後10時よりJスポーツ2『Foot!』にてプレミアリーグの試合の分析を行う。ツイッターアカウントは@BenMabley

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