野々村芳和連載コラム「ノノラボ」(3):U-23代表に大きな期待を!

「彼らがロンドンですべきことは何なのでしょう? ただ出場するのではなく、何ができたか、できなかったかを知るためにも、目標設定が大事になってきます」
■彼らはロンドンで何をするべきか?

ロンドンオリンピックに臨む、U-23日本代表が決まりました。人数の制限があるので落選した選手は残念でしたが、選手選考で大きな驚きはなかったと言えるでしょう。

さて、彼らがロンドンですべきことは何なのでしょう? ただ出場するのではなく、何ができたか、できなかったかを知るためにも、目標設定が大事になってきます。

かつては自分の力を測る場とした選手もいました。それよりも大事なことは、日本人として大きな舞台でやれる選手かどうかということです。五輪は、選手の「格」が分かる場だと思うのです。オリンピックでそれなりにやれた選手なら、フル代表にも呼びやすいでしょうし、呼ばれた選手も自信を持って行けることでしょう。

注目を浴びて戦う中で、やれる選手と、そうではない選手が見えてくるはずです。影響するのは、サッカーの能力だけではなく、メンタリティーの部分も大きいと思います。だからこそ、そこでやれた選手には、格があると私は考えます。最終的にやれるかどうかは人間力次第で、サッカーの能力だけでは駄目だと思っています。

数試合で終わってしまうというギリギリの状況での戦いは、W杯最終予選にも似たものがあります。そういう機会は、そうは多くありません。普段のリーグ戦では見えにくいものが、負けたら終わりという一発勝負では顕著に表れます。そういう経験できる場は多くはありません。

U-23の年代は、メンタリティーが伸びる時期でもあります。技術的に飛躍的に向上することは考えにくいのですが、持っているものを出せるかどうかが変わってきます。簡単に言えば、自信です。昔から、ワールドユースや五輪に出たり、U-19の遠征から帰ってきた選手などは、直後のJリーグで自信を持ってやっていることが多く見受けられます。

若い選手が台頭してくることは、その選手を抱えるクラブはもちろん、日本サッカーにも良いことです。しかし、いざ試合に出ても、ストレスがかかる中で力を発揮できない若手は多いものです。スカウトの段階で技術など能力は見えるのでしょうが、それがプレッシャーのかかった環境で出せるかどうかが一番大事です。

この年代で試合に出られない選手は、技術か精神面かに何かしら不足している部分があるということです。しかし、そういう部分も、試合に出れば多少でも変化していきます。最初はJ1のトップクラブでは難しかったけれども、ストレスが軽減されるJ2でゲームに出ると、良いプレーがだんだんできるようになって、精神的にも安定してくることはあるでしょう。精神面の問題は、ゲームに出ないと解決されません。

たとえ良い環境で練習していても、果たしてその選手が試合でそのプレーを出せるのかは分からないのです。それもシーズン通して高いアベレージでプレーできるかが重要なのです。試合出場が多いというのは、絶対大事なことです。ゲームに出ないと絶対に良くならないし、単なるペーパードライバーに過ぎません。教習所だけで100点の選手では、意味がない。

クラブとしても、そこをうまく運営していくことが求められます。勝ちたくないクラブなどないのですが、今勝ちたいか、3年後に勝ちたいか、5年後に勝ちたいかは、クラブによって違います。3年後にチームに大事な選手になってもらいたいなら、クラブでトレーニングするよりも、ゲームに出す方が大事です。ならば投資のつもりで、給与を払い続けてでも下のカテゴリーに期限付き移籍させるなど、試合に出させるようにする努力が大事です。

■壊れて、そこからより強い精神をつくっていく

Jリーグができたのは私たちが大学生の頃でした。背伸びしている部分もありましたが、私たちは自信を持ってプロの世界に入りました。そのため、自分がまだ試合に出られない時期には、出場しているレギュラーの選手を見ながら、「自分の方が良いプレーをするのに」と思っていたりもしました。

でも、少し経つと、そういう選手が試合に出る理由が分かるんです。ゲームの中で「闘える」というか、勝つための地味だけど良い仕事ができるんです。真剣勝負のプロの試合の中での経験がある選手と、おそらく能力はあるのだろうけれどまだ実際にやったことがない選手との差は、大きかったのだろうと思います。

若い選手の良いところは、「出れば絶対にうまくいくというわけではない」ところです。試合に出て、メンタル面で壁に当たることもあるでしょう。しかし、成長していく中では非常に良い経験だと思うのです。人間的な点でそういう素養があるなら、もう一度はい上がってくると思います。

試合に出ないと、そういう壁に当たるチャンスもないのです。それを乗り越えたら、絶対に強くなるでしょう。ただ強いチームで練習しているだけでは、そういう経験はできません。うまくいかないことがあった方がいい。それが分かるのは、真剣勝負の場だと思います。

北京五輪に出た選手も、あの場でうまくできなかったという思いが、モチベーションになっているのではないでしょうか。よほどの天才でもない限り、うまくいかないことや悔しい思いがないと、大きく伸びていかないと思います。自分って駄目だなと感じる経験はあった方がいいし、代表に入るクラスの選手にとっては、それがオリンピックの場なのでしょう。

だからこそ、今回のロンドン五輪でも、すごく期待していいと思います。期待が大きければ大きいほど、もしもうまくいかなかったときに選手に与える「ダメージ」も大きいものになります。もちろんうまくいってもいいけれども、大事なことはどう変わっていくかということです。五輪には、選ばれなかった人には味わえない「ダメージ」があるはずです。皆、壊れてそこからより強い精神をつくっていくのだから、もっと期待をかけていいのです。

日本としては、世界ベスト4など上位へ行くことを目指していくのですから、同世代の大会でもそこを目指さなければいけません。高めの目標設定と言われても、メダルをそこに据えるのは悪いことではないのです。


~筆者プロフィール~
野々村芳和(ののむら・よしかづ)
1972年、静岡県に生まれる。清水東高から慶応大を経て、Jリーグのジェフユナイテッド市原(現ジェフユナイテッド市原・千葉)、コンサドーレ札幌でプレー。引退後は国内外のサッカーの解説者などを務める。株式会社クラッキ代表取締役。