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慣れない監督交代でもろさ

ここまで酷い状況になってしまうものなのか。2011シーズンの最終節、G大阪は清水相手に攻撃的なサッカーを展開し、人々を魅了した。そのチームが4カ月も経たないうちに、壊滅的な状況に陥った。長きにわたって築き上げてきた「ガンバのサッカー」は一瞬にして崩壊し、見る影もなくなった。その結果、今季は開幕から公式戦5連敗。早くもセホーン監督、呂比須ワグナーヘッドコーチらコーチングスタッフが解任された。こういった事態を招いたのは、監督交代に関わるマネジメントのまずさだった。

昨季終盤、G大阪は10シーズンチームを率いた西野朗監督と翌年の契約を結ばないことを発表した。チームを強くしてきた指揮官とはいえ、監督交代でチームのさらなる成長を狙うことはプロの世界では当たり前で、十分に納得できることだった。しかし、これまで秋口にはしてきた翌年以降の契約について、フロントはなかなか指揮官に話をしなかった。最終的に退任が発表されたのは、11月23日のことだった。西野氏に次の職場探しの時間を与えないような遅い決断で、クラブの功労者であるはずの人物とケンカ別れのような形となってしまった。「新スタジアムは西野監督で」と宣言するなど信頼ぶりをアピールしてきた金森喜久男社長の手の平を返すような対応には、周囲から批判の声が挙がった。

西野監督の退任が決まり、次に発表されるのは、「呂比須監督」のはずだった。しかし、彼の持つライセンスが日本で監督をするに値すると認められず、実現しなかった。クラブは急きょ、S級ライセンス同等の資格と経験を持つ監督選びをすることになった。呂比須氏をヘッドコーチとして残したまま、である。「大人の事情」もあって呂比須氏がこの時点で外れることはなかった。その後、新監督には呂比須氏の師匠でもあるセホーン氏が就任することが決まったが、すでにこの時点でいびつさはあった。

周囲に「2人のどちらが指揮を執るのか?」という疑問を残したままチームは始動した。状況を見る限りでは呂比須ヘッドコーチが指示を送り、セホーン監督が支えるという体制だったが、表向きはあくまでセホーン監督がトップというものだった。「お飾り」であるならそのことをオープンにしても良かったと思うが、クラブはそうしなかった。練習後にはセホーン監督のあいまいな言葉が並ぶ囲み取材が行われるばかりだった。

このような人事の進め方は、現場で戦う選手にとって迷惑でしかなかった。西野監督の退任を見て、選手たちも「いつ自分もこういう扱いをされるか分からない」と不安を抱き、ドタバタ劇の末に就任した監督の立場がはっきりしないことに納得できなかった。明確な戦術を打ち出せず、キャンプ中とシーズンイン後とで求めるものが変わったコーチングスタッフを信じろと言われても、無茶な話だった。

監督交代における一連の動きの中で感じたのは、準備不足とビジョンの欠如だ。10年の間監督交代をしていなかったとはいえ、西野監督に契約満了を伝える際のタイミングは早くから考えられるべきだった。ライセンス問題についても、事前の調査不足としか言いようがない。西野監督を退任させ、呂比須氏を監督に据えるという考えまでは理解できるが、すべてはあまりにも場当たり的だったと言わざるを得ない。

監督選びを進める中で、金森社長が監督選びの第一条件に掲げていたのは「お客様第一」ということだった。周囲からの疑問の声にもブレることなく突き進んだ結果が、「お客様」の誰一人として喜んでいないこの状況だ。セホーン監督体制下でのサッカーには方向性がまったく感じられなかったが、そもそもそういった事態を引き起こしたのは、ビジョンを持たぬまま、「用意周到」とは程遠い動きで人事問題を進めたフロントにある。山本浩靖強化本部長は辞任したが、それで終わらせてしまって良いのかということについては疑問が残る。


文/永田 淳

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