コラム:マドリーを牛耳る、F・ペレスとは
成功の秘訣を心得る生まれながらの会長
2009/09/26 13:37:21
初めにはっきりさせておこう。レアル・マドリーのフロレンティーノ・ペレス会長のサッカーに関する見識は、バービー人形のオフサイド・トラップに関する知識と大差はない。ペレス会長と言えば、第1次ガラクティコ時代、クロード・マケレレの年俸アップを拒み、チェルシーへの移籍を容認した人物。元フランス代表に対して、テクニックは並だが、スピードとスキルには欠けるとの評価を与えたのだ。
マケレレが去った後の3年間、マドリーが無冠に終わったのは周知の事実。また、見た目が良くないからユニフォームが売れないという理由で、ロナウジーニョを獲得しなかったのも、02-03シーズンに優勝した翌日にデル・ボスケ監督とキャプテンのイエロをクビにしたのも、ペレス会長だ。デル・ボスケより戦術に長け、今風の指揮官を望み、カルロス・ケイロスを就任させるためだったが、そのケイロスは散々な成績しか収められなかった。
この夏、大金を投じてリヴァプールからシャビ・アロンソを獲得したのは、バルダーノGMとペジェグリーニ監督の説得を受け入れてのことである。
しかし、たとえサッカーのことを知らなくても、ペレス会長はビジネスには精通しており、成功の秘訣も心得ている。スペイン最大手のゼネコンACS社のトップとして、一代で億万長者となった62歳は、国内で6番目にリッチな人物。個人資産だけでも20億ドルに迫る。自身の影響力とビジネスセンスでレアル・マドリーを世界一リッチなクラブへと押し上げ、最初に会長に就任した2000年には、第1次ガラクティコ時代をもたらした。
マンチェスター・ユナイテッドを退け、世界一リッチなクラブとなれたのは、大金を投じてスター選手を続々と獲得したからだ。「金を生むには金を使わなければならない」、それがペレス会長の当時、そして現在も変わらぬモットーである。
ジダンは誰より安かったというのがペレス会長の持論。史上最高額の移籍金(当時)もユニフォームをはじめとしたグッズ販売やスポンサー契約で逆にもうかったくらいだとのことだ。ベッカムのケースも同様。プレミアリーグのクラブが海外市場をどのように拡大していったかを目の当たりにしたペレス会長は、自分たちもアジアやアメリカへのツアーを敢行。ガラクティコの市場価値を高めていった。
おかげで財政が安定し、マーケティング面では新時代に適応できたレアル・マドリー。世界各国のライバルから、ビッグネームを続々と引き抜き、ピッチの上でもサポーターの望みを叶えた。バルセロナからフィーゴ、ユヴェントスからジダン、インテルからロナウド、マンチェスター・ユナイテッドからベッカム、そしてリヴァプールからオーウェン。オーウェンに関しては、新天地であまり活躍できなかったが、ペレス会長が各クラブの象徴とも言えるスター選手を連れて来られる手腕を持っているのは間違いない。
サポーターはビッグネームが白いユニフォームに身を包む姿はもちろん、そのビッグネームがヨーロッパ屈指のビッグクラブを捨て、マドリーを選んだ事実に興奮していた。ペレス会長は最初の3年間で、レアル・マドリーを世界一リッチなクラブにして、リーガ・エスパニョーラで2度、チャンピオンズリーグでも1度、優勝させた。
ところが栄光は続かなかった。02-03シーズン終了後、前述のような間違いを犯した結果、3シーズン無冠に終わり、第1次ガラクティコ時代は早々と幕を閉じた。
2009年6月、会長に復帰したペレスは前回以上の改革を宣言。早速、ミランからカカー、ユナイテッドから史上最高額でロナウドを獲得すると、その後もリヨンからベンゼマ、リヴァプールからシャビ・アロンソとスター選手をかき集め、第2次ガラクティコ時代をスタートさせた。ピッチはもちろん、ピッチの外でも金になるプレーヤーをそろえた。
ただし、この政策はペレス会長が考案したものではない。レアル・マドリーの生みの親、サンチャゴ・ベルナベウの理念を踏襲したに過ぎない。1953年、ガラクティコ政策を始めたのはベルナベウ会長だった。ディ・ステファノ、プスカシュをはじめ、外国人スターと契約。黄金時代を築いたのだ。
ペレスが初めて就任したときの前任者であるサンス会長や、今回の前任者となるカルデロン会長も、ピッチの上ではそれなりの成功を収めた。しかし、2人にはベルナベウが持っていたカリスマ性や壮大な理念が欠けていた。
20日に提出した会計報告で、レアル・マドリーは3億2700万ユーロの負債を抱えていることを明らかにした。一方で、練習場の近くにテーマパークを建設し、ホームスタジアム改修の計画も発表した。さらに中国の広州では元マドリーのストライカー、ブトラゲーニョがクラブの代表としてビジネスフェアに登場していた。そして、ピッチでは前節ホームでヘレスを下し、トップに躍り出た。
確かに膨大な負債を抱えてはいるが、それはライバルも同じこと。今の時代、ビジネスの世界でもサッカー界でもよくあることだ。ペレス会長には投資額を素早く回収する能力がある。だからこそ、レアル・マドリーを牛耳るのにふさわしいのだ。
そういうわけで、ペレス会長は戻って来た。ブランクなどなかったように、会長の椅子に馴染んでいる。
Ashish Sharma,Goal.com
