J1昇格レースは「降格組」3チーム、松本、岡山が絡む展開に…残留争いは予測不可能/コラム

明治安田生命J2リーグが2月26日に開幕する。J2クラブで取材をするスポーツライター・松尾祐希が、2017シーズンJ2リーグの昇格争い、残留争いを分析する。

●昇格争いの本命は名古屋、湘南、福岡

明治安田生命J1リーグが開幕した翌2月26日、明治安田生命J2リーグの戦いもスタートする。昨季までと同様にJ1行きのチケットは3つ。上位2クラブが自動昇格を果たし、残る1枠は昇格プレーオフ(3位から6位までのチームが参戦)の勝者に与えられる。

一方でJ3への降格枠は昨季から変更となり、今季より入れ替え戦が廃止。下位2チームが自動的にJ2から姿を消す。昨季はそのラストマッチでツエーゲン金沢が残留を決めたが、今年は救済処置がないためシビアな戦いになるのは必至だ。

その中で今季の主役候補になるのが、降格組の名古屋グランパス、湘南ベルマーレ、アビスパ福岡。クラブ史上初のJ2を戦う名古屋は、昨季まで川崎フロンターレで5年間指揮を執った風間八宏氏を新指揮官に招聘(しょうへい)。そして、サンフレッチェ広島から元日本代表のFW佐藤寿人、V・ファーレン長崎から昨季J2で17得点の永井龍を迎え入れるなど、20人が退団し、18人が新たに加わるという大刷新を行った。

GK楢崎正剛やMF田口泰士という代表経験者の慰留にも成功しており、陣容だけを見ればJ1にも匹敵する。風間監督の嗜好(しこう)する戦い方を早期に浸透させられれば、1年でのJ1復帰は可能だろう。

一方、湘南と福岡は名古屋とは逆のアプローチでJ2を勝ち抜く構えだ。湘南は曺貴裁監督、福岡は井原正巳監督が昨季と同様に指揮を執り、昨季の戦いで築いたベースを継続させた。

補強も弱点を埋める形で実施し、適材適所の獲得が目立つ。湘南はMF菊池大介が浦和レッズ、DF三竿雄斗が鹿島アントラーズに旅立ったが、泣き所だったGKにFC東京から秋元陽太が2年ぶりに復帰。各世代で日の丸を背負ってきたMF秋野央樹(←柏レイソル)や、J1で十分な実績を積んだ野田隆之介(←名古屋)の実力も確かなモノがある。

福岡も金森健志が鹿島に移籍したが、FW石津大介がヴィッセル神戸から3年ぶりに帰還。外国人頼みだったセンターラインにもガンバ大阪から元日本代表のDF岩下敬輔と、得点力とフィジカル能力を兼備するFW松田力(←名古屋)が加わった。

ウェリントンやダニルソンという助っ人も残留し、攻守に厚みが増したのは確かだ。また、両監督はJ1昇格を経験した経験を持つ点も大きなアドバンテージ。J2での戦い方を熟知している両指揮官に率いられたチームが、どのような結果を残すかに注目が集まる。

●課題をクリアし、上位に食い込みたい3クラブ

上に記した3チームが昇格レースの本命となるが、それに続きそうなのが松本山雅FCとファジアーノ岡山だ。松本は昨季終盤まで2位に位置しながら、最終盤に取りこぼして3位でフィニッシュ。しかし、昇格プレーオフでは1回戦敗退の惨劇を味わった。

それだけに今季に掛ける意気込みはどこよりも強い。目立った補強はなかったが、2年前のJ1昇格に大きく貢献したGK村山智彦(←湘南)が復帰。その他にもJ2での経験値が豊富な選手たちを呼び寄せただけに、反町康治監督の手腕を持ってすれば、自動昇格圏内は十分に射程圏内だ。

対する昨季6位の岡山は、強烈なリーダーシップでチームを統率したDF岩政大樹(→東京ユナイテッドFC/関東サッカーリーグ1部)と、攻守の柱を担った矢島慎也(→浦和)が退団。得点源だったFW押谷裕樹(→名古屋)や守護神のGK中林洋次(→広島)もチームを去った。

しかし、リオ五輪代表のGK櫛引政敏(←鹿島)や11年のアジアユース最優秀選手・MF石毛秀樹(←清水エスパルス)など、新たに加わった選手の実力は折り紙付き。J2の戦いをよく知るMF喜山康平(←松本)の獲得もプラスの材料だ。キャンプ中に広島と練習試合を行ったが、昨季同様に堅守は誇り、1失点に抑えた。あとは攻撃面の構築が進めば、上位を目指すことは十分に可能である。

一方で昨季5位の京都サンガF.C.は名古屋から田中マルクス闘莉王を獲得したが、攻撃の格を担っていた山瀬功治(→福岡)や堀米勇輝(→ヴァンフォーレ甲府)が退団。モンテディオ山形から大黒将志も復帰したとは言え、攻撃力は未知数だ。J初采配となる布部陽功監督の手腕次第であるが、序盤はチームを作る作業に時間を割かれそうだ。

■残留争いが未知数である理由

そして、台風の目になりそうなのが、スペインで実績を積んだ指揮官を招聘した東京ヴェルディとジェフユナイテッド千葉だ。

東京Vはエスパニョールを率いてUEFAチャンピオンズリーグに出場した経験を持つロティーナ氏にチーム再建を託したが、始動日から守備のやり方を徹底。「守備のやり方を今までやってきていないので新鮮」とMF井上潮音が語るように、今までにない守備のメソッドは東京Vを変貌させる可能性がある。

一方の千葉は、アルゼンチン代表経験を持つ元ヘタフェのフアン・エスナイデル氏の下、“ハイライン””ハイプレス”というJ2ではなかなかお目にかかれない戦術に取り組んでいる。プレシーズンマッチでは結果が伴わなかったが、開幕までにどのように仕上げてくるのか注目したい。

また、1年でJ3から帰ってきた大分トリニータは我慢のシーズンになりそうだ。昨季は就任1年目の片野坂知宏監督の下、ポゼッションサッカーを展開。終盤に5連勝を記録して、J2復帰というミッションを達成した。

ただ、今年は1ランク上となるJ2での戦いだ。実績十分のGK高木駿(←川崎F)やMF小手川宏基(←ギラヴァンツ北九州)といった新戦力は計算が立つが、絶対的なストライカーの不在はチームのウイークポイント。FC東京から加わったFW林容平らの奮起が、チームの浮沈を握る。

最後に残留争いだが、近年同様に全く読むことができない。一昨年は大分、昨年は北九州がJ3に転落したが、開幕前は躍進が期待されていた面々だ。それだけに、どのクラブにも降格の可能性がある。

特に今年は昨季7位以下の16チーム中8チームが監督を変えるなど、スタイルの転換を図ったクラブが多い。中でも昨季20位・FC岐阜と同21位・金沢はそれぞれ監督に大木武氏と柳下正明氏を招聘し、ポゼッションスタイルで勝負を掛ける。しかし、新監督の狙いがはまらなければ低迷する危険性は大いにあり、苦しいシーズンになってしまうのは想像にたやすい。

また、今年は天皇杯全日本サッカー選手権大会のスタートが4月に早まったため、夏場の中断期間が設定されていない。閉幕する12月3日までノンストップで試合が行われるため、チームの調子が下降した時の処方箋をどのように各監督が施すのかも勝負の分水嶺(れい)だ。1年間を通じたチーム作りも、今年の勝負を分けるポイントになるだろう。

文=松尾祐希

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