「3つ言われただけで十分」中村俊輔の磐田移籍を後押しした名波監督の言葉とは?

「うるさがられてもクラブのために口を出す。総合的にジュビロのために何ができるかに気を配っていきたい」と新天地・磐田で中村俊輔が強い意気込み。

ジュニアユース時代から足掛け15年間在籍した横浜F・マリノスを離れ、ジュビロ磐田に新天地を求めた38歳のファンタジスタ・中村俊輔。日本中を驚かせた移籍に踏み切った大ベテランが13日、磐田の新体制発表に出席し「このクラブがいい方向に行くように総合的に何ができるか。そこに気を配っていきたい」と強い意気込みを口にした。

かつて日本代表でともにプレーした名波浩監督、服部年宏強化部長、名古屋グランパスから移籍した川又堅碁らとともに会見場に姿を現した中村はやや緊張した面持ちだった。

「38という難しい年齢、決断でしたが、すごく魅力あるクラブですし、服部さん、名波さんが門を開けて待っていてくれたので、自分も挑戦してみようかなと決断いたしました。期待だったり、いろんなことは十分わかっているので、グランドで(結果を)示すことが一番。ジュビロのファンの方々に『あいつを取って間違いなかった』と思われるように、勝ち点を1つでも積み上げられるようにしたい」と新たな決意を口にした。

中村俊輔にとって名波は日本代表エースナンバー10の大先輩。1998年フランスワールドカップ予選直前のオーストラリア合宿で代表初招集された際にも「名波さん、モト(山口素弘=日本サッカー協会技術委員)さん、ヒデ(中田英寿)さんの中盤の質の高さに度肝を抜かれた」と神妙な面持ちで語っていた。フィリップ・トルシエ監督時代に挑んだ2000年アジアカップ(レバノン)でも、名波が3-5-2の左ボランチ、俊輔が左アウトサイドという間柄でフル稼働。アジア制覇の原動力となったが「僕がサイドでストレスを感じる中、名波さんは監督の指示に関係なく、僕を中央に入れてポジションチェンジをさせてくれたりした。名波さんは周りのプレースタイル、メンタルまで見える人。そこで他の選手との差を出している」と尊敬の念を改めて口にしており、その指揮官に熱烈なオファーを受けたことが、古巣を離れる大きなきっかけになったと認めている。

「基本は元いるチーム(マリノス)で(やる)っていうのがあった。だけど、単純なものがそうでなくなった時、今まで普通だったものが普通じゃなくなった時に、普通のサッカーがしたいと。その矢先に名波さんがすぐ駆けつけてくれたのは大きかった。『(トップ下を)空けてる』『人間性を重視する』『年齢は関係ない』という3つを言われただけで十分だった」と俊輔はしみじみと胸の内を吐露していた。

だからこそ、かつてJリーグ最強だった磐田を取り戻すべく、できる限りの貢献をしなければならない。J1復帰1年目だった2016年の磐田は年間勝ち点36の13位で終わったが、最終節でようやく残留を決めるギリギリの状況だった。総得点37という数字も18チーム中、下から6番目で、攻撃面に課題を抱えているのは間違いない。そこを立て直すのがベテラン司令塔に課せられた第一の仕事だ。それは俊輔自身もよく分かっている。

「ここでは全くのゼロだし、全員のスタートラインが一緒。自分も競争してレギュラーを取って、今シーズンできる基盤を作って、チームを繋ぐ。そういうことをやっていかないと。自分がいいプレーして、FKも決めて、川又とかにいいボール出して……ってことはすごく大事だと思います」と本人も言う。

ただ、俊輔は自分の役割をピッチ内だけに限定するつもりはない。これまで横浜、レッジーナ、セルティック、エスパニョールで20シーズン戦ってきた経験を生かし、多彩なアプローチを試みていくという。

「自分は新参者かもしれないけど、落とせるものは落として、このクラブがいい方向にいくんだったらいい。うるさいかもしれないけど、口をだすかもしれないですね(笑)。ジュビロのために総合的に何ができるかっていうことに常に気を配って、見渡してやっていきたいなと」

「例えば自主練。マリノスでもやってたけど若いFW捕まえて『こういうトラップした方がいいから』と言ってパス出して一緒に練習したりしたい。逆にベテランの選手とよくコミュニケーション取ったりもしたい。今、32~33歳の選手があと1年しかできないところを36歳になるまでジュビロに貢献し続けられるために何かができたらいい。自分が教わることの方が多いと思うけど、何頭も追うものがあるという『やりがい』があるから選んだ感じです」と俊輔は目を輝かせた。

稀代の司令塔とコンビを組むことになる川又も「自分のジュビロ移籍が決まってから『俊さんも来てくれ』とずっと祈ってた。俊さんのことはずっと見ていたし、2013年のJリーグアヴォーズの時に自分から話しかけたくらい尊敬してる。俊さんがCKを蹴ってくれるなら自分はゴール前で合わせるだけでいいし、どういうボールの受け方をすればいいかもイメージできてます。ホントに同じチームでできて『神ってるな』と思うし、自主練は毎日でも一緒にやりたい」と意欲満々だ。名波、俊輔の系譜を継ぐと言われる高卒新人・針谷岳晃も「いろいろ学びたいことがある。FKはぜひ盗みたいですね」と前向きに話していた。今季の磐田は俊輔効果でチーム全体がガラリと変わる可能性もゼロではないのだ。

それだけの大きな期待を背負って、日本屈指のレフティ・中村俊輔はサッカー人生を賭けた大きなチャレンジに踏み出す。その動向から目が離せない。

取材・文=元川悦子