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今シーズン限りで引退を決めたスペイン人MFは、全てのメジャータイトルを獲得したこと以上に、ピッチ内外で見せた素晴らしい振る舞いは称賛に値するものである

「僕が生きた、そして愛した美しいフットボールよ、さようなら」

シャビ・アロンソの引退声明は短く、シンプルかつ効果的で素晴らしいものであった。それはまるで、彼のプレースタイルのように。

アロンソは彼のプレーに値するほどの称賛を、キャリアを通して受けてきたわけではない。彼は今シーズン限りで全てのメジャータイトルを獲得した素晴らしいキャリアに幕を引くが、彼を最高のプレーメーカーとは思わない識者も数多くいた。

常に懐疑的な目を向けられてきた。後に加入するレアル・マドリーにすら、アロンソの能力に納得していない人物がいたようだ。そのため、2004年の夏にレアル・ソシエダから移籍金1600万ユーロ(約20億円)でラファエル・ベニテス率いるリヴァプールに移籍していった。

また、獲得を求めたベニテスでさえアロンソに絶対の信頼を置いていたわけではなかったのかもしれない。2008年にはガレス・バリー獲得のため、アロンソを売却しようと試みている。もっとも、それに激怒したのはリヴァプールのサポーターで、欧州選手権直後の売却は阻止した。夏に行われたラツィオとのフレンドリーマッチの際には「お気に入りのガレス・バリーをお前の尻の穴につっこんでやればいい」と痛烈にベニテスを皮肉ったほどだ。

Xabi Alonso Liverpool AC Milan Champions League

一方で、アロンソはアンフィールドのサポーターから最も愛された選手の一人だ。フットボールを知る者であれば、それを理解するのはとても容易なことだった。視野の広さとパス能力は、リヴァプールのレジェンドでマージーサイドにキャリア全盛期を捧げたヤン・モルビーを思い出させる。アロンソはスカウス(リヴァプール人の愛称)のメンタリティを愛し、ジェイミー・キャラガーとは親友になり、いつも試合について深い議論を交わしていたほどだった。

「『キャラ、黙れ、お前にはなんのアイデアもないのか』とよく言ったものだよ。でも、彼はそういう言い合いや議論を好むヤツだったんだ」

そうアロンソは述壊している。

しかし、無論アロンソは頭ごなしに相手を否定するような人間ではない。学ぶことに貪欲な選手だったからこそ、今のような地位を築けたのだ。キャラガーだけでなく、スティーヴン・ジェラード、ディトマール・ハマン、そしてサミ・ヒーピアから多くのことを学んだと認めている。

彼は知的で意固地な人間であるが、同時に自己批判的であり、謙虚な人間でもあった。自陣からのロングシュートによりイングランドで一躍有名になったときには、彼に集まる賛辞に当惑していたほどだ。

「(あんな遠くからシュートを打つことに)一体リスクがあるというのかい? リスクなんてない。仮にシュートが決まらないとしても、誰も僕にゴールなど期待していないんだから関係ないことだ。そういう状況では、キーパーが愚かに見えるだけさ」

「僕は自分が愚かだと見えるような行動は取らない。そこにはリスクがあるからね。僕がドリブルで相手をかわして、ペナルティーエリアに持ち込んでいったのを見たことがあるかい? そんなことはありえない。それは僕のスタイルではないし、僕がやるべきプレーではない」

アロンソはタックルも彼のスタイルではないと正直に認め、2011年にはタックルを“質の高いプレー”ではなく“最終手段”だと自身の見解を示している。

「リヴァプールにいた頃、いつもマッチデープログラムを読んでいたんだけど、ユースチームの選手のインタビューで、年齢や彼らにとってのヒーロー、得意なプレーなんかが記載されているんだ。そして彼らの中には“シュートとタックル”と答える子がいた」

「僕はフットボーラーが成長する上でタックルが習うべきだったり、教えるべきプレーだったりするとは思わない。そんなに大事なことなんだろうか? そういうプレーが大事ということが全く理解できないんだ」

Xabi Alonso PS

アロンソにとってフットボールとは、リアクションではなく自らアクションを起こすものであり、パッションよりもポゼッションなのである。ミッドフィルダーがボールを奪い返す必要があるということは、彼なのか他のチームメートの誰かが、その前のどこかのプレーでミスを犯していたということになる。

彼は決して情熱溢れるような士気の高いプレーを重要視していたわけではないが、イングランドのフットボールへの尊敬を欠いているわけではない。その“ブリティッシュ・スタイル”が彼をもう一段上の選手へと引き上げたことを認めている。

■残りのキャリアがどのようなものでも…

リヴァプールでの最初のシーズンに彼はビッグイヤーを手にした。スペイン代表でユーロとワールドカップを制覇した後、ジョゼ・モウリーニョ率いるレアル・マドリーではアンカーとしてプレーし、バルセロナによるリーガの完全支配を打ち砕いて果たしたリーガ優勝に貢献した。そして、カルロ・アンチェロッティ監督時代には“ロス・ブランコス”に12年ぶり10度目のチャンピオンズリーグ優勝(ラ・デシマ)をもたらした。

バイエルン・ミュンヘンでプレーする現在は、3クラブ目でのチャンピオンズリーグ制覇を目指している。それを果たすことができれば、はなむけとしてふさわしいものになるだろう。もちろん、それが残りのキャリアに不可欠なものではないことも予め記しておく必要がある。彼はすでにファンの間ではベストプレーヤーと位置付けられるだけのことを成し遂げたのだから。

「パスマスター! 君のキャリアはそんなに悪くなかったな」

キャラガーはアロンソへそんなメッセージを送った。

今回ばかりは、謙虚なアロンソもきっと頷くはずである。

文=マーク・ドイル/Mark Doyle

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