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連載企画「河治良幸の真眼 日本人プレーヤー30日の評価」では、欧州で活躍する日本人選手を中心に、毎週1選手をピックアップしていきます。サッカージャーナリスト河治良幸が鋭く、その選手の“今”に切り込みます。

ケガの影響などもあり、なかなか良い状態でプレーできなかった香川真司。昨年、筆者が現地で取材した時は、今季台頭してきた若い選手たちとの連係やイメージの共有に課題を感じている様子だった。

しかし、ここ数試合は少ない時間ながらトーマス・トゥへル監督にチャンスを与えられ、着実に調子を上げているように見える。この30日間ではUEFAチャンピオンズリーグのラウンド16第1レグのベンフィカ戦こそ最後までベンチで試合を見守ったものの、そこから4試合続けて途中出場。ヘルタ・ベルリン戦は過密日程を考慮し、ウスマヌ・デンベレをベンチスタートにしたこともあり、久々の先発チャンスを得た。その香川は水を得た魚のようにトップ下のポジションで躍動し、今季2つ目のアシストを記録した。

香川は6試合のうち5試合に出場し、スタメンが1試合で途中出場が4試合。チームは4勝1敗だった。シーズン終盤に差し掛かり、ようやく復調をアピールした香川のパフォーマンスを評価し、今後の課題を考える。

▽2月14日(火)チャンピオンズリーグ ベンフィカ戦

試合結果:0-1(負け)
出場せず
評価:なし

▽2月18日(土)ブンデスリーガ ヴォルフスブルク戦

試合結果:3-0(勝ち)
17分(途中出場)
評価:6.0

すでに3-0とリードした状況からの登場で、リードを守りながら攻撃の機をうかがう形ではあったが、中盤で高いキープ力を示し、もう少しでアシストというパスも出すなど、安定感と得点の可能性という両面でまずまずのプレーを見せた。

現状の立場から欲を言えば、アタッキングサードでより怖さを出してほしかったが、得点状況を考えれば「(最後まで)相手にほとんどチャンスを与えない」という指揮官の要求に反するリスクが生じる。いかなる状況で出ても勝利のためにチームプレーを心がけるという香川のスタンスを基準にしても、勝ち試合をしっかり締めくくったという点を評価するべきだ。

▽2月25日(土)ブンデスリーガ フライブルク戦

試合結果:3-0(勝ち)
14分(途中出場)
評価:6.5

すでに3点をリードした終盤に登場と、前節とほとんど同じシチュエーション。ただ、敵地の雰囲気の中、相手が終盤の反撃に出てきたという状況は、中盤の選手にとって舵取りが難しかったはずだ。しかし、ヴォルフスブルク戦に増して攻撃の起点として機能し、惜しいヘディングシュートも放った。

この日は香川が出た後にアンドレ・シュールレ、クリスチャン・プリシッチとアタッカーが入れ替わったが、香川は臨機応変に絡んでゴールを脅かした。終盤のフライブルクはヴォルフスブルク以上にタフな相手だっただけに、限られた時間の中でもより存在感を示したゲームだった。

▽3月4日(土)ブンデスリーガ レバークーゼン戦

試合結果:6-2(勝ち)
17分(途中出場)
評価:6.5

3-1の状況でデンベレに代わり投入された香川。直後にFKから失点を喫して1点差とされたが、そこから効果的なシャドーの動きを繰り出して攻撃にリズムをもたらす。ゴールやアシストこそなかったものの、3得点を奪う流れに貢献した。後半アディショナルタイムに決まったラファエル・ゲレイロのゴールは、香川もゴール前で関わっており、その後に希望をつなぐ試合になった。

▽3月8日(水)チャンピオンズリーグ ベンフィカ戦

試合結果:4-0(勝ち)※合計4-1で準々決勝に進出
9分(途中出場)
評価:なし

たった9分の出場で評価はできないが、投入されるなり前からプレッシャーを掛けるなど、逆転勝利を完結させる仕事はこなしていた。

▽3月11日(土)ブンデスリーガ ヘルタ・ベルリン戦

試合結果:1-2(負け)
90分(フル出場)
評価:7.0

第17節のブレーメン戦以来のスタメンで起用された香川は、「3-4-1-2」のトップ下に入った。チームは公式戦で5試合ぶりの敗戦を喫したが、原口元気を擁するヘルタ・ベルリンの形成する守備ブロックの間で柔軟に味方からボールを引き出し、タイミングよくスペースの味方にパスを通した。ピエール=エメリク・オーバメヤンの同点ゴールをアシストしたシーンは真骨頂だった。

一度右のワイドに動いてバイタルエリアの中央を空けてから、流れに応じて動き直し、ゲレイロからのパスを受けると4人のディフェンスを引き付け、左脇のオーバメヤンがそのままシュートに持ち込めるように、グラウンダーのラストパスを供給したのだ。少ない時間ながらも継続して出場していたこともあってか、全体的にボールタッチが良く、90分を通して香川らしさが感じられるパフォーマンスだった。

■今後の課題

ボールタッチのフィーリングが良い時の香川は、狭いスペースでも相手に接触されることなくキープできるため、プレーの選択肢が豊富だ。逆に、それが良くないとプレーの幅が狭まってしまう。どちらにしても不用意にボールを失うタイプではなく、パス成功率などは常に高いが、それを高い位置で実行できているか、チャンスに直結させられているかは、相手ディフェンスの合間で受けられるかに掛かる部分が大きい。

高いボールスキルと敏捷性を持つ香川だが、個人で強引に仕掛けるタイプではなく、周囲とのコンビネーションが決定的なプレーの生命線となることは間違いない。ただ、それも香川が高い位置で安定したボール捌きをすることで、周囲の信頼や連動につながっていく。その意味で、ヘルタ・ベルリン戦を1つのハイライトとする、最近のパフォーマンスは終盤戦のさらなる活躍を期待させる。

ドルトムントの攻撃的なポジションにはライバルが多く、その中でトゥへル監督に香川のより高い価値を認めさせるのは容易ではない。チームに安定をもたらす献身的なプレーはそのままに、香川自身も課題に挙げる「好機での積極的なチャレンジ」を上乗せして、ゴールやアシストという結果を積み上げられるか。しばらく過密日程が続くため、香川の活躍がドルトムントの勝敗に大きく影響しそうだ。

文=河治良幸

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