ライプツィヒで輝きを取り戻したスピードスター、ヴェルナーはなぜ復活を遂げたのか/コラム

この数ヶ月の間に、ティモ・ヴェルナーはまたひとつ新たな記録を塗り替えた。史上最年少でブンデスリーガ通算100試合出場を達成したのだ。ヴェルナーにとって、RBライプツィヒへの移籍はまさしく“最適解”だったといえるだろう。

シュトゥットガルトのメルセデス=ベンツ・アレーナとライプツィヒのレッドブル・アレーナの間には469kmの距離がある。快調に飛ばすなら、車でほぼ4時間30分の距離である。世界旅行というほどの距離ではない。しかし、この距離をはさんである変化が起こったのだ。時間を逆行するような、ある変化が。

かつて、ドイツフットボール界のトップタレントと目されたティモ・ヴェルナーは、期待に応えることができない2シーズンを送った後、2016年の夏に降格の決まったVfBシュトゥットガルトから、昇格の決まったRBライプツィヒに移籍した。彼はライプツィヒで再び才能を開花させ、胸に赤いリングを巡らせたユニフォーム(シュトゥットガルトのユニフォーム)に身を包んで17歳にして次々に記録を打ち立てていた3年前のようなプレーを見せている。迷いがなく、精力的で、推進力があり、常に敵を脅かそうという気迫に満ちている。3試合で5得点を挙げるなど、ブンデスリーガにおいてちょっとした「時の人」となった。

■ぎこちなかったプレシーズン

しかしながら、プレシーズンにはライプツィヒが1000万ユーロ(約12億円)の対価で新しく獲得したヴェルナーが初めから目覚ましい活躍を見せるような気配はあまりなかった。ラルフ・ハーゼンヒュットル監督は練習で多くの場合、ユスフ・ポウルセンとマルセル・ザビッツァーのフォワードコンビを優先的に使い、ヴェルナーはたいてい切り札として投入されていた。『中部ドイツ新聞』の取材でハーゼンヒュットルは次のように語っている。「ユスフとマルセルの組み合わせはそれなりに馴染んだフォーメーションなんだ。走り出しや、それに応えるオートマティックな動きがある程度うまく噛み合って、淀みなく機能しているのを見てもそれはわかるだろう。ティモにとっては、少し厄介な状況だね。だが、彼には別の役割があると私は思っている」。

それでもヴェルナーは、ブンデスリーガの最初の2試合のどちらにもスターティングメンバーとしてピッチに立っていた。だが、彼が最初の驚きをもたらしたのはベンチスタートとなった第3節。ハンブルガーSV戦の後半に登場した彼は、そのスピードでHSVの不安定な守備陣を徹底的に恐怖に陥れ、2ゴール1アシストの活躍ぶりで4-0の勝利に貢献したのだった。

身長180㎝、右足を利き足とするヴェルナーにとって、ライプツィヒの攻撃的なカウンター狙いのシステムはうってつけだ。何と言っても、その並々ならぬスピードが彼の大きな武器のひとつに数えられる。「そうなんだ、スピードを武器として考えるべきなんだ」と、彼は『シュポルト・ビルト』誌に語った。「たとえばオーバメヤンのような選手を考えてみてもそうだ。まさにスピードのある選手が求められている。どこのチームでも同じことだよ。だけどシュトゥットガルトでは、僕はまだこの強みを今ほど生かしていなかったんだ」。

シュトゥットガルトではたいてい4-2-3-1のシステムが取られ、ヴェルナーが自分の望むトップのポジションにつけることはほとんどなく、主にウィングに置かれていた。相棒となるダニエル・ギンチェク、マーティン・ハルニック、ヴェダド・イビシェヴィッチには怪我が多く、彼らとの間に連携を築くこともできなかった。ブンデスリーガ史上最年少で1試合2ゴールの記録を打ち立てたヴェルナーから、軽快な動きが失われていたのだ。ファンやシュトゥットガルト首脳陣の希望の星であったヴェルナーの成長は、彼らが期待したほどトントン拍子には進まなかった。

まだユース代表の選手でしかなかったヴェルナーにとって、そういった役割は重荷でしかない。彼は危機が差し迫っている伝統あるクラブにとって、頼みの綱になれるような状況にはなく、結局、前シーズンの降格争いの中でクラブと共に沈んでいった。

■ヴェルナーは明らかに前よりも試合に絡んでいる

ヴェルナーはライプツィヒで新しいスタートを切ることを決めた。シュトゥットガルトで12年間を過ごした後、彼はクラブに背を向けてライプツィヒに移籍。高額の契約金ゆえにこのフォワードの選手の活躍を疑う空気が濃厚だったが、それは杞憂に終わった。ライプツィヒのハーゼンヒュットル監督は生粋のフォワードを2人配した4-4-2の陣形を好み、今ではヴェルナーは最前列でポウルセンと見事に息の合った連携を見せるようになっている。「僕はどこに走り込めばいいのかわかるようになったし、たぶんそれ以上に、チームのプレーの理念や方針が僕に合ってるんだろうな。ライプツィヒの試合にはスピードが求められるんだよ」とヴェルナーは説明する。彼はライプツィヒで明らかに以前よりも試合に絡むようになっている。これは数字にも表れており、90分の間にボールを受ける回数が平均して8回、パスを出す回数も以前より増加しているのだ。

シュトゥットガルトのことは「これからも忘れない」とヴェルナーは強調する。彼はいつもシュトゥットガルトの試合をチェックして、自分が長年所属したクラブがブンデスリーガ2部で昇格を目指して戦う様子を見守っている。だが、故郷のファンとの紐帯を断ち切ったことは、今となっては英断だったと言えるだろう。ライプツィヒは彼がさらなる成長を遂げるために最高の条件を提供しており、ヴェルナーによれば、栄養管理の方法を変えたことやスポーツ心理学者の協力を得ていることも良い影響を与えているという。彼が『キッカー』誌に明かしたところによれば、「みんなが言うんだ。僕は昔よりも自分に自信を持っていて、いろいろなことに対して前よりも簡単に自分で取り組めるようになっている、ってね」。

つまり、シュトゥットガルトのキャプテンであるクリスティアン・ゲントナーが2013年に予想したことが今、起こりつつあるということだ。「ヴェルナーが自分の道を進むのを誰も止めることはできないだろう。」

■プレッシングは楽しい

ただし、ヴェルナーには依然として成長の余地も残っている。特に、相手のゴールキーパーとの1対1の戦いでは弱味を見せている。彼にスピードがあるおかげでそういう状況になることが比較的多いのだが、そのチャンスの数に対してわずかな結果しか生み出せていない。パスの技術にもまだ改善の余地がある。一方、守備面で彼は明らかに上達しており、後方へ向けた仕事さえ楽しいということがヴェルナー自身にとっても驚きとなっている。

彼はライプツィヒで「ボールを保持していなくてもプレーを大いに楽しむことができる」ことを学んだ。さらに付け加えて言うには「ここへ来た時、僕は思ったんだ。『おやおや、ここじゃあボールを持っている時よりも、持っていない時の方が余計に走らないといけないんだぞ』ってね。僕はフォワードだから、確かにいつだって後ろより前へ走る方がずっと好きだよ。だけど、僕はボールを奪いに行くのも好きになったし、うまくプレッシングをやれば、それだけ前へ出ていける機会が増えることがわかったんだ」。

ドイツに素晴らしい若手選手が現れれば、すぐにナショナルチーム入りが取り沙汰されるが、フォワードの選手の場合には、他のポジションの選手よりもいっそう早くそのことが話題に上る。とにかく、ドイツ代表イレブンにはフォワードが不足しているのだ。そういうわけで、U15を皮切りにドイツのあらゆる年代のユース代表チームでプレーして来たティモ・ヴェルナーが話題に上っても何の不思議もない。

「彼がこの先もコンスタントに試合に出続けてU21でもゴールを決めるとしたら、ティモ・ヴェルナーはまもなくA代表の候補の一人になるだろうね」と、ついこの間ライプツィヒのスポーツ・ディレクターであるラルフ・ラングニックが『ビルト』紙に語っていた。彼は、夏に行われたヴェルナーとの契約を強く後押しした人物である。

■「メディアによって過剰に騒がれてしまうだろう」

最近行われた国際Aマッチのサン・マリノ戦とイタリア戦では、ヨアヒム・レーヴ率いるメンバーの中にまだヴェルナーの姿はなかった。しかし、ラングニックはこの事態をそれほど悲観していない。「ティモがさらに成長するために、正直言って、今回選ばれなかったことをそんなに腹立たしく思ってはいないんだ。A代表に入れば、間違いなくメディアによって過剰に騒がれてしまうだろうからね」。

しかし、今ではあのバイエルンと優勝を争っている昇格チームライプツィヒとヴェルナーをめぐって、過熱報道が収まることは当分なさそうである。それはラングニックもよく理解していることだ。いずれにしろ、夏にシュヴァーベンからザクセンへ470kmそこそこの距離を移動した、ヴェルナーの決断が正しかったことは明らかである。

文・取材=ファルコ・ブレーディング/Falko Blöding

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