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闘将ディエゴ・シメオネが築いたアトレティコの歴史〜“あの日”から今日まで〜/コラム

2011年12月23日。

21世紀に入って以降、アトレティコ・マドリーに訪れた分岐点を探るとしたら、その答えはこの日になるだろう。

ロヒブランコ(アトレティコの愛称)は2011年の年末、長く続いた苦しみの時代に終止符を打った。

以下に続く

例えば宿敵レアル・マドリーとの対戦では苦杯をなめ続けてきた。ダービーの週は受難の期間であり、7年前も、10年前も、15年前も、永遠のライバルとの対戦が近づくにつれてビセンテ・カルデロンのロッカールームに重苦しい雰囲気が広がっていた。

クラブの幹部たちはこの状況を打破するために、外部からの刺激が必要だと分かっていた。悲観論を葬り、常にライバルの後塵を拝する歴史を変えるために、改革が必要だと認識していたのだ。

試行錯誤を繰り返し、失敗も経験した。長いトンネルが永遠に続いていく感覚にさいなまれたことも、一度や二度ではなかっただろう。

だが、その日はやってきた。

2011年12月、運命の人選は実に単純なものだった。ディエゴ・パブロ・シメオネがアトレティコに、ビセンテ・カルデロンに戻ってきたのだ。彼こそ、マドリード・ダービーの“定まった運命”を変える存在だった。かつて、スタンドのファンたちとずっと結びついていたクラブのシンボルが、深淵へ吸い込まれていくばかりだったアトレティコの進む道を変えたのだ。

スター選手も、何億ユーロもかけた補強も、必要ではなかった。

チョロ(シメオネの愛称)が示したのは2つだけ。信念を持つこと、尽力すること。それだけだった。もっとも、その献身たるや、通常の物差しでは測ることのできないレベルのものだったのだが。

4年前、彼はサンティアゴ・ベルナベウで行われた国王杯決勝で指揮を取り、ロヒブランコに優勝をもたらした。あの勝利の価値は、ビセンテ・カルデロンの博物館にトロフィーを持ち帰っただけにとどまらない。シメオネは監督としての実力を示した。そして何より、ダービーにおける勝利こそ、アトレティコ復活の象徴となったのだ。

■チョロがアトレティコに植え付けたもの

シメオネはアトレティコに、サッカーをフィロソフィーとして見る視点を植え付けた。

ピッチに立つ選手にとって、その視点は人生に立ち向かっていくための大きな武器となった。スターティングイレブン、ベンチメンバー、あるいはスタンドから試合を見つめる選手まで、無条件に監督の言葉を信じた。シメオネは進むべき道を知っていて、チームを光の方向へ導く方法も知っていた。一方で、迷いや疑念はどこにもなかった。

“シメオネ以前のアトレティコ”はエネルギーもスピリットも持ち合わせていなかった。こんなことを書くのははばかられるが、チームはバラバラだった。

それが、今やどうだ。錆びついた歯車に一箇所ずつ油をさし、どんな相手にも立ち向かっていける完璧なチームを作り上げた。

過去も、歴史も、関係ない。チョロのアトレティコは強敵にも、弱小チームにも、正面から挑んだ。1試合、1試合、そしてまた次の1試合、といった具合に。

これこそ、リーガ・エスパニョーラやヨーロッパリーグで栄光をつかんだ理由だ。コパ・デル・レイ、スペイン・スーパーカップ、UEFAスーパーカップも同様だった。

■示してきたものは変わらない

一つだけ心残りを挙げるとするなら、チャンピオンズリーグ決勝で“排除できない障害物”にぶち当たってしまったことだろう。優勝を逃すという結果以上に、宿敵に敗れたという事実がアトレティコにさらなるダメージを与えたのだった。

そういう意味で、CLはシメオネに残された大きな課題だ。CL決勝で敗れるというのは心が痛む。時間が経てば忘れてしまう瞬間的な痛みではなく、内側から蝕まれていく類の痛みだ。大会のアンセムを聞くたびに、傷跡が開いていく。他の誰でもないシメオネ自身が、その症状を認めている。

しかし、悪い側面ばかりではない。忘れがたい痛みが、ヨーロッパの頂点に立つという挑戦を続ける原動力になっているのだから。

アトレティコも、そしてマドリーも、ビッグイヤーをめぐる戦いの渦中にいる。現実的な話をすれば、これが今回のダービーを左右する重要な要素になるかもしれない。両チームとも、4日後に欧州の強豪との試合を控えているからだ。あまりダービーの温度を下げるようなことは言いたくないが、チョロもジダンも、ヨーロッパにおける戦いを頭に入れてオーダーを組む可能性はある。場合によっては主力を温存することも考えられるだろう。

だが、だからといって、それがなんだというのだろうか?

土曜日に行われるのはマドリード・ダービーだ。永遠のライバルが激突する、アトレティコの復活の象徴となったダービーマッチである。

何より、ロヒブランコはお隣と違って“特定の武器”に頼っていない。

彼らはこの5年間、何も恐れず、力をセーブすることなく、まるで明日という日が訪れないかのように全力で戦ってきた。そうやって輝かしい歴史を築いてきたのだ。

今さらその信念が、尽力が、フィロソフィーが、変わることなど、あるはずもない。

2017年4月8日、舞台はサンティアゴ・ベルナベウ。

アトレティコは“復活の象徴”となる勝利を挙げたスタジアムで、2011年12月23日以降の自分たちが何者であるかを、示していくことになるはずだ。

文=ルイス・アスナール/Luis Aznar(マルカ紙アトレティコ番記者)
協力:江間慎一郎

■放送日程

レアル・マドリー対アトレティコ・マドリー
4月8日 22時30分〜

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