長年に及ぶ迷走の果てに…監督交替を繰り返すFC東京に求められる明確な方向性

シェア閉じる コメント
大型補強を敢行しながら、2年連続でシーズン途中の監督交代となったFC東京。クラブとしての方針に問題はなかったのか。

9月10日、FC東京が篠田善之監督の退任と安間貴義トップチームコーチの監督就任を発表した。JリーグYBCルヴァンカップ準々決勝の川崎フロンターレ戦で2戦合計7失点で敗退して追い込まれていたところに、明治安田生命J1第25節でセレッソ大阪に1-4と大敗。これが現体制にとどめを刺した。傍目にもチームはバラバラで、制御不能の状態に陥っていることは明らかだった。

2004年と2009年にヤマザキナビスコカップ(現YBCルヴァンカップ)、2011シーズンに天皇杯を制したクラブは、長友佑都や武藤嘉紀など日本代表選手を続々と輩出。味の素スタジアムを満員札止めにするなど、外面的にはビッグクラブの体裁を整えてきた。だが、その一方で強化方針に一貫性がなく、しっかりと内実を積み上げられていなかった事実があった。篠田監督は今回の退任を「私の責任」と断じ、言い訳をしようとしなかったが、クラブは城福浩監督を解任した昨夏に続き、2年続けてシーズン途中で監督解任。決して指揮官一人の責任に帰することはできない。

1999年のクラブ創設以来、“部活サッカー”と呼ばれながら大熊清、原博実監督時代に堅守速攻、全員守備全員攻撃の気風を確立した。しかし、初タイトル獲得の翌年に「ホップ・ステップ・チャンプ」の標語を掲げてリーグタイトル奪取を志してから次段階を構築することが難しくなり、FC東京独自の色は少しずつ薄れていく。

2010年に屈辱のJ2降格を経験し、J1に戻った2012年以後をクラブ史の第2章と位置づけると、迷走の感はより強くなる。

ランコ・ポポヴィッチ監督時代はダイレクトパスを中心にパスをつなぎ倒す攻撃重視、マッシモ・フィッカデンティ監督時代は対照的に自陣に引く守備重視を掲げ、方針は旋回した。さらに昨年はパスサッカーを掲げる城福浩監督を再登用している。これらの考え方は監督が替わっても在籍する選手に蓄積し続けるものがあるというロジックの下で“螺旋状の進化”と解釈することはできた。AFCチャンピオンズリーグで二度にわたってラウンド16進出を果たすなど、一定の成果を見せているようにも思われた。それを進化とするならば、その積み上げはどこへ行ってしまったのだろうか。

クラブが迷走を続ける中、脈々と受け継がれてきたものが徐々になくなっているのも事実だった。特に今シーズンは権田修一、高橋秀人の両選手に加えて、チームのムードメーカーでもあったベテラン羽生直剛が他クラブへ移籍。シーズン途中にはキャプテン森重真人が負傷離脱し、度重なる大ケガから復帰した米本拓司はなかなか出場機会に恵まれず、河野広貴はサガン鳥栖へ完全移籍。石川直宏は苦しむチームのために現役引退を早期発表してクラブ愛や伝統を受け継ぐ覚悟を固めたが、チームは早々に無冠が決定的となり、今回の監督交替劇に至った。残念ながら、もはやチームとしての蓄積はないに等しい。

鹿島アントラーズはオーソドックスなサッカーの中に勝つための現実主義を息づかせ、川崎フロンターレは誰が出ても同じ方向性で連動して崩す攻撃サッカーを自分たちのスタイルとしている。横浜F・マリノスは中澤佑二と栗原勇蔵を留め置きながら堅守の伝統を崩していない。ふとJ1を見渡せば、積み重ねによって目指すものを根付かせているか、継続した強化方針を持っているチームがほとんどだ。

しかし近年のFC東京は、マッシモ・フィッカデンティ元監督の堅守に城福浩元監督がボールを主体的に扱う術を加えようとして頓挫。篠田前監督は高い位置からのプレッシングとショートカウンター、ハードワークを掲げて新スタイルを確立しようとしたが、今シーズンは時間を経過するうちに果敢なプレスを仕掛けるシーンはなくなり、ただ後ろに引くだけ、もしくはただ前がかりになるだけの試合が目立つなど、統制が取れない状態で実質的な終戦を迎えることになった。

選手補強でも一貫性は見られなかった。もちろん狙いどおりの選手を確実に獲れるわけではないが、獲得できる範囲でできるだけ優秀な選手を獲ってくる揃え方をした結果、伸び始めていた中堅や若手のフタになるケースが出てしまった。「育成型」なのか、「ビッグクラブ」なのか、「育成型ビッグクラブ」なのかも不明瞭になってしまっていた。

今シーズンは大型補強の結果、高いクオリティを持つ個が入ってきたことで戦力過多になり、選手たちを束ねていく難しさが篠田前監督のチーム作りに影響を与えたことも否定できない。選手たち自身も「一つにならなければ」と何度も繰り返したが、どうすればまとまることができるのか、その迷いは深まるばかりだった。

過ぎた日々を取り返すことはできない。重要なのは未来に向けて何を積み上げ、どこを目指し、今シーズンの残り9試合を何のためにどう使うかだ。

クラブが『FC東京2020 VISION』に掲げた「J1リーグ優勝、アジア制覇」という目標に合致するサッカーを手にするためには、まずしっかりと羅針盤を定めなくてはならない。チームが圧壊したような現在に至っては、もはや再設定までの猶予はない。

立石敬之GMは今回の監督交替について、「この2試合は点差がついていますけれども、最後までホイッスルが鳴るまで戦う姿勢が見られなかった。全員で攻撃をして全員で守備をする、ひたむきに戦う、われわれが持っている青赤の心をもう少し呼び覚まさないと」と説明する。“原点回帰”を考えた人事とでも言おうか。

その一環として、クラブOBの宮沢正史がスカウト部から転身し、コーチとして入閣した。FC岐阜で現役を引退しながら、「東京のために」という思いからスタッフとして戻ってきた彼の登用について、大金直樹社長は「FC東京へのロイヤリティ(忠誠心)、アイデンティティを持ったコーチになると思っている。そこを選手たちに伝えてもらいたいし、選手にはそれを体現してほしい」と言った。これがチームに青赤の心を呼び覚ます一助となるのか。

チームを強くするためには、やはり「ここで勝ちたい」という意志を持った人間で戦うことがポイントだ。クラブへの高い忠誠心を持っていればベストだが、安間監督には最低限でもピッチで勝利のために戦える選手をセレクトすることが求められる。献身的に走れる移籍組の選手を選ぶにしても、生え抜きのファイターを起用するにしても、明確な指針の下に線引きをして人材をピックアップしていかなくてはならない。新指揮官には容赦なく実力本位でメンバーを選ぶ仕事が求められることになる。

“青赤の魂”とは、いったい何なのか。これからクラブはどんな方向性を打ち出していくのか。苦しい時ほど立ち戻るベースが必要だが、残念ながら今のチームにはそれすらないのが事実だ。このままではFC東京に明るい未来はない。迷走している現状の危機から転進するためには、残り9試合にしっかりとした意味を持たせ、一目散に走り抜くことが存亡を懸けた最初のミッションとなる。

文=後藤勝

次の記事:
9月30日に東日本大震災復興支援映画「MARCH」上映会を開催…ゲストにJリーグ副理事長の原博実氏
次の記事:
ゲッツェ、CLレアル戦に意気込み「ドルトムントのコンディションは最高」
次の記事:
W杯出場は絶望的か…横浜F・マリノスMF齋藤学が全治8カ月の重傷
次の記事:
昨季引退のシャビ・アロンソ、第2のキャリアはやはり指導者の道へ
次の記事:
「僕には僕のストーリーがある」ディバラ、メッシとの比較論にも我が道を行く
閉じる