落ち着いて“帰ってくる”…イングランド、PK戦の記録的な悪夢を克服【W杯特別コラム】

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これまでのイングランドは、PK戦に関して冷酷な運命を背負っていたが、その運命に敢然と立ち向かい、壁を乗り越えることに成功した。『Goal』では特別コラム第15弾として、母国開催となった1966年大会以来のW杯制覇を目指すスリーライオンズに焦点を当てる。

夢は語り続ければ、いつか叶うのか?

ロシアに来た、あるいは地元にいるイングランド代表ファンに例の噂について尋ねたならば、彼らは「それは『It’s coming home』。サッカーイングランド代表応援ソングだ」と答えるだろう。

この歌は、楽観主義の手本であり、ガレス・サウスゲート監督と彼が率いるライオンたちにとって、新しい希望、新しい信念を表すものである。

“Everyone seems to know the score / They've seen it all before / They just know, they're so sure / that England's gonna throw it away, gonna blow it away...”
(「結果は誰もが知っている/全部、今までみてきたとおりだ/みんな知っている、わかりきっている/今度もイングランドは失敗して、台無しにするだろう…」)

アディショナルタイム3分、コロンビアのジェリー・ミナが身体をくの字に曲げて、ロシア・ワールドカップでの自身3点目を決めたとき、イングランドのファンの脳裏にバディールとスキナーのあの有名な歌の、最悪な部分の歌詞がよぎったことだろう。

■PK戦の悪夢を一掃

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ギャレス・サウスゲート監督は、イングランド代表の指揮を取りはじめてから滅多になかったことだが、批判を呼ぶゲームマネジメントを行った。逃げ切りを図ってエリック・ダイアーを投入したことが、逆効果となったのだ。イングランドは守備的なプレーに陥り、グループリーグを紙一重で突破したコロンビアが最後の最後で同点に持ちこんだ。

イングランドに再び得点する力はなかった。過去、このチームがしばしば陥ってきた悪夢に、またしても向かっているように思われた。

延長戦でのイングランドの戦い方は不安定で、ふがいないチームに対して監督は活を入れた。そして、イングランドは何とか息を吹き返し、PK戦に持ちこんだ。だが、この事態はイングランド人にとって望ましいものではなく、恐ろしいジョークのように思えたことだろう。

しかし、あの歌の歌詞の続きは、こうだ。

“But I know they can play…”
(「だけど、彼らはきっとやってくれる……」)

ハリー・ケイン、マーカス・ラッシュフォード、キーラン・トリッピアー、さらにダイアー。PKの過酷なプレッシャーに彼らが耐えてくれることをファンは信じていた。ジョーダン・ヘンダーソンは失敗したが、この夜のイングランドゴールを守り切った守護神、ジョーダン・ピックフォードがそのミスを帳消しにした。

ピックフォードは後半アディショナルタイム、ワールドクラスのプレーでマテウス・ウリベのシュートを防いだ。さらに、PK戦でもカルロス・バッカのシュートをストップするという、偉大なプレーを見せたのだった。

イングランドは、これまでのワールドカップで3度PK戦を戦い、一度も勝てないでいた。すべてが終わったスタジアムにおいて、コロンビアのファンが忌まわしい運命を呪い、イングランドのファンが歓喜に騒いでいる姿は信じがたいものであった。

イングランドがPK戦に勝つなんて!

サウスゲート監督率いるイングランドにとってこれは、メンタル面において恐ろしい試練であったが、イングランドはそれを乗り切った。これ以上に苦しい困難はあり得るだろうか。

■最後の1分

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グループリーグでベルギーに負けたイングランドには、最悪の結果が訪れるのではないかという恐怖があった。イングランドファンは、悲観的な思考に陥っていたかもしれない。最悪の事態に備えた準備をしておかなければならなかった。だが、長い目でみれば心配することなど何もなかったのだ。

コロンビア代表の試合を見たのが初めてだったかもしれないイングランドファンは、モスクワのスパルタク・スタジアムを、あの騒ぎは何だったのだろうかと思いながら去ったに違いない。コロンビアは、正規の試合時間の残り10分までイングランドを組み伏せることができないでいた。その代わり、マーク・ガイガー主審と戦っていたのである。

イングランドはシンプルに試合を進めていき、自分たちがすべきことを続けていた。大きな大会での経験があまりないメンバーの多いチームとして、あの試合は多くの部分において成長を感じさせるものであった。そして、来週の準々決勝のスウェーデン戦を前に、チームの大半が自信を深めたことだろう。

ただし、ラスト1分の戦い方は考えなければならない。プレーのバランスからして、コロンビアは引き分けに値するような試合をしていなかった。イングランドが招き入れてしまったのだ。

カイル・ウォーカーがつまずいてカルロス・バッカにボールを奪われ、フアン・クアドラードに気まぐれなシュートを打たれるまで、コロンビアにはチャンスがほとんどなくギブアップ寸前だった。そのシュートをピックフォードが間一髪でセーブした後、あの運命のコーナーキックが訪れたのである。

■PKで動いた試合

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コロンビアは追いこまれていた。ホセ・ペケルマン監督が、プレースタイルがほとんど同じである3人の選手を中盤の真ん中に起用したため、チームは足かせをはめられたようになっていた。ハメス・ロドリゲスがディフェンスラインの裏を取る、いつものあの別次元のプレーはなかった。

その代わり、クアドラード、フアン・フェルナンド・キンテロ、ラダメル・ファルカオが、イングランドのよく鍛えられたディフェンスのメカニズムに苦しめられていた。イングランドはボールを失うたびに、しなやかな鞭のように素早く自陣に戻っていた。

試合というものは往々にしてチャンスがほとんどない。コロンビアは、イングランドの速攻の能力を大いに警戒しており、ほとんど隙を見せなかった。一方のイングランドは、ここまで大会中に成長を見せていたにもかかわらず、相変わらず流れの中から得点する能力に欠けていた。

だが、4試合で2得点をあげたカルロス・サンチェスがPKを献上し、コロンビアは崩壊した。レフェリーの目の前での、あれほど仰々しい反則は二度と見られないだろう。アメリカ人の主審は反則行為を多く見過ごしていた。ボールのないところでの争いに対して、ウィルマル・バリオスとジョン・ストーンズのそれぞれにレッドカードを出しても良かったくらいだった。だが、審判の決定が正しいことは絶対だ。

ハリー・ケインは、国の期待を背負った選手として自信をもち、リラックスしてワールドカップでの自身6得点目を確実に決めた。これで漠然とした希望は少し減り、確固たる期待が少し増えたのだった。

■最後に勝つのは“冷静なチーム”

PKでの失点以降、コロンビアは敵意をむき出しにするようになった。コロンビアのチャレンジに悪意が感じられるようになり、無意味な異議が増えていった。キャプテンのファルカオはチームを落ち着かせ、チームメイトに役割を果たさせるようにすべきだったが、みずから過ちに陥ってしまっていた。

コロンビアは貴重な時間を無駄にし、勝ち目のないバトルに無駄なエネルギーを使っていた。イングランドを扇動して、仕返しをさせようとしているように見えた。唯一、ストーンズだけがいくらか正確にファルカオの頭にぶつかったように見えたが、大部分においてイングランドはコロンビアの挑発を受け流していた。

頭が冷静なほうが最後に勝つ。PK戦は冷淡だ。イングランドは落ち着いていた。そして…、サッカーの歌を歌い続け、帰ってくる。

文=ピーター・ストーントン/Peter Staunton

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