自ら死の道を選んだスペイン、本当の敗因はPK失敗ではない…【W杯特別コラム】

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スペインは格下のロシア相手にボール支配率80%という無意味な記録を残し、大会にアディオスを告げた。なぜ試合中に適切なアプローチをとれなかったのか。『Goal』では特別コラム第13弾としてベスト16で敗退に追いやられた“ラ・ロハ”に焦点を当てる。

スペインは成功を取りこぼした。もはやチャンピオンでもない。4年前は赤面とともにブラジルを後にし、1998年のフランス大会では裏口からコソコソと“さよなら”を告げたりしたこともあったが、今回のロシア大会には華麗なる世代、そしてドンピシャのタイミングで臨んだはずだった。メンバー、クオリティ、そしてチームを見てもチャンピオンになる素質を備えていた。しかし、そんな議論はすでに意味を持たず、終わった話だ。

■スペインを窮地に追いやった要因とは

Julen Lopetegui Spain

ロシアはギロチンを作動させるのに苦労したものの、ついには“ラ・ロハ”の死刑執行人となった。ロシアの選手も他の多くの者と同じように代表チームを頂点へと連れて行くことを強く願っていたのだ。ルジニキ・スタジアムは新たな成功をつかむために問題の解決を迫られていた某チームが眠りについた墓として記憶されることになるだろう。

ジュレン・ ロペテギ前監督はチームの再生を順調に進めているように見えたが、スペインサッカー連盟のルイス・ルビアレス会長はその取り組みの結果を我々に見せてはくれなかった。会長自身は、ロペテギの解任がもたらした次期指揮官の問題を解決したことで胸をなでおろしているだろうが、この解任騒動はスペインを奈落の底へと突き落とした要因の一つである。

もう一つの要因は、プレースタイル、ダイナミズム、そして試合そのものに変化を起こす能力が今大会の代表チームには備わっていなかったことだ。これは、おそらくは上記の自己批判的な要素とは全く異なる性質のものである。どんな形でもグループステージは突破する見通しはあったものの、最終的には最も馬鹿げた事態が発生したことによって代表の戦いは終焉した。

Diego Costa Spain Russia World Cup 07/01/18

スペインはプラスチックのスプーンほどの武器しか持たない貧弱なロシアを相手に80%近いボール支配率を記録した。だが確かにロシアはこの試合を制するのにそれ以上の武器は必要としなかったのである。スペインは自らをワールドカップ敗退に追い込むようなことを犯したのだから。

■ちぐはぐでもグループステージを突破したが…

Sergio Busquets Spain Russia World Cup 07/01/18

ロシア戦の前半は、スペイン代表にとっては奇妙ともいえる今大会を象徴する格好のサンプルとなった。この試合、フェルナンド・イエロ監督はチームに活力を与えるためにスターティングメンバーに変更を加え、マルコ・アセンシオ、コケ、ナチョ・フェルナンデスに試合の手綱を託した。事実それまでの調子は今ひとつであり、チームに方向転換を望んだ結果からの決断だった。試合経過を見ればこの決断が決定的に奏功したわけではなかったが、それでも一瞬は勝利の女神がスペインに微笑みかけたのだから、何らかの意味はあったのかもしれない。

スペインは特にこれといったことをしたわけでもないのに、試合開始から15分にも満たないうちにセルゲイ・イグナシェビッチのオウンゴールによって先制に成功する。センターからサイド寄りの位置にいたイグナシェビッチはセルヒオ・ラモスのカバーに気を取られすぎたために目測を誤り、自身の足に当たったボールはゴールの中へと吸い込まれた。思いもよらずスコアで優位に立ったラ・ロハ。メンバー全員によるピッチ上のセレブレーションは、とても攻撃が武器とは言えないロシア相手に1点をリードすることの価値とその意味を完璧に示していたといえる。

Sergio Ramos España Rusia Spain Russia 01072018

しかし、ラ・ロハの挑戦がそう簡単であるはずはなかった。選手もロシアに到着してから物事がトントン拍子に進むことを願ったわけでもないはずだ。今大会は決勝トーナメントで簡単な対戦表を活かすこともできなかった。ルビアレス会長のごたごたから始まり、デ・ヘアのセーブミス、そしてラモスとアンドレス・イニエスタの連携ミスを経験した後とあっては、75%ものボール支配率を記録したこの試合は“できすぎ”だとスペインは感じていたに違いない。そして、ロシアは自分たちを少しも傷つけることができないだろうとも。

しかし全員がスペインの優位性を心の内に感じ始めたその時、ロシアのコーナーキックをきっかけにジェラール・ピケがエリア内で説明のつかないハンドを犯し、アルテム・ジューバにPKを与えてしまう。ポルトガルやモロッコのようにロシアもこの11メートルのシュートを失敗することはなかった。今大会3つ目となる明らかなプレゼントゴールを相手に与えた結果、今大会の最終的な成績は4試合6失点である。スペインはまるで大会のホストでもあるかのように対戦相手にプレゼントを与え続け、快適にプレーさせた。自身は前線で牙を剥くでもなく、強固な守備を見せつけるでもなくである。もう一度やり直そうではないか。ロシアの地はそんなスペインの姿を信じてはいないだろう。

■裏目に出た“ティキ・タカ”へのこだわり

ロシア戦とグループステージ3試合との違いは、後半にスペインが1ゴールも奪うことができなかったことだ。この事実はチームが抱える様々な問題を際立たせる。ボールを支配していようがしていまいが、すべてはチームが抱える問題に帰結する。先発メンバーの変更や選手交代によってピッチ上の11人に変更を加えても、出てきたのは常に首輪だけを付け替えた同じ犬だった。ラ・ロハは相手ゴールまでの道筋を見つけることができず、それによって選手の間に焦りが生まれ、不安定さが露呈したのだった。落ち着いて構えるロシアはチャンスを待った。そして、ミッションを達成するのにシュートを放つ必要すらなかった。巨大なスペインに対して精神的に消耗しながらも必死にプレーし、報われた。

その後は後半にフレッシュな状態で投入されたイアゴ・アスパスだけがロシアの戦術に合わせることなくプレーしていたように見えた。あまりにも退屈な後半戦でひとり、相手のチェックを外す動きからスペースを生み出そうと試みていたからだ。このガリシア人はイニエスタのシュートの演出、そして自身のシュートによっても、それまで何も求められていなかった相手GKのイゴール・アキンフェエフに仕事をさせた。必然的に訪れた延長戦でもロシアが敷いた鉄壁の戦略的守備とゴールキーパーに阻まれた。スペインにはアスパスとその他大勢がいただけだった。

Iago Aspas Spain Russia World Cup 2018

結果、延長戦でも試合はびくとも変わらなかった。同じプラン、同じプレー、そして同じ結果の繰り返しである。ロシアはPKを活かし、それによって両チームのクオリティを均等に持っていったといえるだろう。スペインはその事態を避ける術を知らなかった。110分以降はかろうじてそれに近づいたといえるが。皮肉にもなりふり構わない攻撃の中でのみ、チームに取り憑いていた“トンティ・タカ”(“トンティ”は「バカげた、アホらしい」の意)を忘れることができた。

ロドリゴはこの日のルジニキ・スタジアムで見られた数少ない輝きを見せ、受け流したボールをそのままシュートに持ち込んだ。しかしこの煌めくプレーも再びアキンフェエフに阻まれる。その後も選手をつかむプレーでPKを主張したが、ビョルン・カイペルス主審もVARもその瞬間は見ていなかったようだ。結局、この試合はそれだけだ。両チームの運命はPKに委ねられ、生き残ったのはロシアだった。コケとアスパスが失敗し、デ・ヘアは1本もシュートを止めることができなかった。彼らは新聞の一面を飾るのだろう。本当の敗因は彼らではないにも関わらず。試合はすべての選手の手で殺され、スペインは自ら死の道を選んだのだ。

文=アルベルト・ピニェイロ/Alberto Piñero

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