浦和レッズで影を潜めた“ミシャスタイル”…来季の行末をも暗澹とさせる「必然の敗戦」

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FIFAクラブワールドカップでアルジャジーラに屈した浦和レッズ。「必然の敗戦」は、来季の行末をも暗澹とさせる。

動画ハイライト

2007シーズン以来、10年ぶりにFIFAクラブワールドカップへの出場を果たした浦和レッズは、準々決勝で開催国枠出場のアルジャジーラ(アラブ首長国連邦)と対戦した。

■焦燥の中での痛恨の失点

アルジャジーラは1回戦でオセアニア代表のオークランド・シティ(ニュージーランド)に1−0で勝利し、中2日で今試合に臨んでいた。一方の浦和はJリーグ最終節の横浜F・マリノス戦を終えてから3日後の12月5日にアブダビへ到着し、現地でトレーニングを積んで調整を図れたはずだった。

しかし、予想に反して序盤から浦和の選手たちの動きが鈍い。試合開始時の気温は18度前後だったが湿度は75パーセント前後と蒸し暑い状況で、冬の気候に突入した日本と寒暖差があるため、その影響を如実に感じさせた。遠藤航が試合後に、その実感を述べている。

「暑さもあって、皆しんどそうでした。実際、僕自身も辛かった。もちろん準備はしっかりしてきたんですけども、その点は相手の方が(この気候に)慣れていたのかもしれないです」

浦和のシステムは4-1-4-1で、これは堀孝史監督が一貫して採用している形だ。しかし、今回はインサイドハーフのスタメンに日本代表の長沢和輝ではなく矢島慎也を抜擢し、彼には柏木陽介と共に中盤でのプレーメイクを任された。これはアルジャジーラがカウンターを得意とし、ポゼッション率では浦和が優勢に立つことを見越してのことだろうか。実際、試合は浦和が自らボール保持して攻撃構築する展開が長く続き、その中で柏木と矢島が頻繁に後方へ降りてきてボールタッチする所作が目立った。

チーム全体のメカニズムとしては、インサイドハーフのふたりが後方に下がるのに連動してサイドMFのラファエル・シルバと武藤雄樹が中央エリアへシフトし、彼らが空けたサイドエリアのレーンにはサイドバックの遠藤、そして宇賀神友弥が入り込む形を採った。その動き出しはパターン化されていて、チーム全体のコンセンサスとしてそれなりに機能を果たしていた。ただ、肝心のパスワークとボール保持後のドリブルアクションに精度を欠き、相手を攻略することができなかった。

それでも浦和は28分に千載一遇のチャンスを迎える。右サイドで遠藤がボールを持ち、前方でフリーランニングする武藤へスルーパスを通す。それを受けた武藤が間髪入れずにクロスを送ると、ファーサイドへ飛び込んだ興梠慎三が右足でボレーシュート。しかしボールはゴール上を越えていき、好機を逸した興梠は頭を抱えて悔しがった。

すると、今度はアルジャジーラが反撃に移る。34分、左サイドから単独突破した相手エースFWのアリ・マフブートがペナルティエリア内まで進出して角度のない位置からシュートを放ち、GK西川周作が足でセーブして難を逃れる。アルジャジーラの攻撃は単発だが、マフブートを筆頭に選手個々人のスキルは高く、浦和は一瞬でも油断すればラインブレイクされるリスクを背負っていた。

前半は両チームともにスコアレスで終了する。浦和としては攻め込みながらも好機を生み出せない状況が続いたことで、後半はより細密な攻撃プランを練る必要があった。しかし、先のAFCアジア・チャンピオンズリーグ決勝でアル・ヒラルを打ち破ったときのように相手が積極的に向かってくる展開にならないことで、浦和はここ最近の得点パターンだった速攻を繰り出せずに焦燥の念を深めていく。

51分、敵陣中央でボールを奪われた浦和がアルジャジーラのカウンターを受ける。MFのロマリーニョがハーフウェーライン付近で遠藤のチャージをかわして前方へスルーパスを通すと、阿部勇樹と槙野智章の間を抜けたマフブートが独走してGK西川の股間を通すシュートを流し込んで値千金のゴールを決めた。浦和は最も警戒していた攻守転換の流れで不備を生じさせ、痛恨の失点を食らってしまった。

試合は完全にアルジャジーラのペースとなった。アブダビを本拠とする地元チームは専守防衛に努め、CKを与えてもGKアリ・ハセイフを中心とした屈強なディフェンスラインが浦和の攻撃を無効化させて確実に跳ね返していく。ポゼッション率はアルジャジーラの38パーセントに対して浦和は62パーセントだったが、どちらが思惑通りの展開に持ち込めているかは明らかだった。自チームの優勢を感じ取った地元観衆がボルテージを上げて声援を浴びせる中、浦和は手数をかけたパスの連続で逆に相手ゴールから遠ざかるジレンマに陥っていった。

■来季の行く末をも暗澹とさせる“必然の敗戦”

思えば、AFCアジア・チャンピオンズリーグで中国スーパーリーグの上海上港やサウジアラビア・チャンピオンのアル・ヒラルと対峙したときの浦和は、相手の攻撃を慎重に受け止めて千載一遇の好機をモノにする展開に持ち込んで結果を得てきた。しかし今回は相手が鉄壁の防御網を築く中で自らがゲームコントロールする流れになったことで手詰まりに陥った。ミハイロ・ペトロヴィッチ前監督時代に標榜した斬新でアグレッシブな攻撃スタイルは影を潜め、堀監督体制のチームは相手の動向を見極めて行動を起こす、受動的なスタイルへと変異していたのである。

後半アディショナルタイム、1点を追う展開の中で浦和の選手がミスパスを犯してボールがサイドラインを越えていく。前へ進めない現状が今の浦和のチーム状況を如実に物語っている。必然の0−1敗戦はFIFAクラブワールドカップでさらなる高みへ向かう道筋を喪失しただけでなく、来季の行く末をも暗澹とさせる要素をも孕んでいる。

試合後に柏木が吐露する。

「ここで負けるかねと……。しかも相手のワンチャンスだけで。そういう試合はずっとしたくないと思っていたのに。ミシャ(ペトロヴィッチ前監督)のときから大事な試合で勝てないことが多かったから、そういう試合をしたくないという中で、やっぱり点を取らないといけないし、失点してはいけない。今日は悔しいというよりも、情けないという気持ちの方が大きい」

これで浦和はアブダビから180キロ離れたアル・アインへの移動を強いられ、中2日で同日の準々決勝でパチューカ(メキシコ)に敗れたウィダード・カサブランカ(モロッコ)との5位決定戦に臨むこととなった。

文=島崎英純

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