最低限からのネクストステップ。西野ジャパンにW杯への活路は見えたのか

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ロシアW杯前最後のテストマッチとなったパラグアイ戦で、西野ジャパンがようやく初白星を挙げた。コロンビアとの初戦まであと1週間に迫る中で、見えてきた収穫と課題に迫る。

ようやく手にした初ゴールと初勝利。閉塞感が漂っていた西野ジャパンがパラグアイ代表を4-2で下し、本大会に向けた最後のテストマッチで何とかポジティブな雰囲気を手にした。

「最高の勝利とは思わないけど、最低限やらなければいけないものを全員で出せた」

この岡崎慎司が試合後に残したコメントこそが、パラグアイ戦の持つ意味を分かりやすく表しているように思う。果たしてこの日のピッチでは、いったい何が起こっていたのだろうか。その収穫と課題を順に振り返っていこう。

■香川と乾の“ゴールデンコンビ”が躍動

まず大きかったのは、これまで出場機会に恵まれていなかった選手たちが本大会に向けて試合勘を取り戻し、結果を出したことだ。

この試合では香川真司、乾貴士、岡崎慎司が先発出場で本格復帰を果たし、乾は2ゴール、香川は1ゴール2アシストと結果を残した。1トップに入った岡崎が前線からの積極的なチェイシングでチーム戦術の軸となった部分も大きなポイントだ。

実績と経験を兼ね備えたベテラン組が持ち味を発揮し、スタメン出場も含めて起用にメドが立ったことはチームにとって大きなプラスとなる。特にかつてセレッソ大阪で“ゴールデンコンビ”と称された香川と乾の連係は、ここまで課題に挙げられていたアタッキングサードでの攻撃パターンに変化を加えた。乾自身もパラグアイ戦後に「真司とはホントにやりやすい」と話しており、彼らをユニットとしての同時起用することは本大会でも武器の一つになりそうだ。

これまで試合に出ていなかったメンバーがチームとして課題とされていた守備の約束ごとを徹底して、組織的なディフェンスを見せたことも大きな収穫だった。

時間のない状況で急ピッチでチームを仕上げなければならない中、西野監督がベースに置いてきたのは守備。ガーナ、スイスとのテストマッチでは、どの位置から、どのタイミングで守備をスタートさせるのかが思うようにハマらず、チーム全体に大きな課題を残していた。

しかし、選手たちが細かくコミュニケーションを取り続けた結果、今回のパラグアイ戦ではここまでピッチに立っていなかった選手たちが連動したディフェンスを見せた。センターバックに入った昌子源も「2失点しているところはいただけないけど、誰が出ても大丈夫だという手応えは得られた。自信が付く勝利にだったと思う」と前を向く。

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■垣間見えたW杯への明確な準備

その一方で、やはり本大会に向けた不安材料も多く残している。勝って兜の緒を締めなければ、この勝利の意味がない。

この日のパラグアイは局面局面でこそ個の力を披露すれど、チーム全体としてはインテンシティ(プレー強度)が低く、ワールドカップをシミュレーションできるような相手ではなかった。その中でセットプレーの流れから2失点。セカンドボールへの寄せが遅れたことで先制点も許してしまっている。

西野監督はガーナ戦とスイス戦も「負けた気がしなかった」と振り返ったが、ともすればパラグアイにも同じ轍を踏んでいた危険性がある。結局、一瞬のスキを突かれてしまうところは改善されていない。ワールドカップが始まれば、当然ながら相手のテンションも一気に高くなる。その上を行くような集中力でプレーを予測していかなければ、同じことを繰り返すだけだ。

もちろんここは一朝一夕で修正できるものではないが、守備をベースにワールドカップを戦おうとしているチームが相手に先制点を許してしまったら、試合運びが一気に難しくなるのは想像に難くない。この課題が出続けた意味をチーム全体でしっかりと考えていく必要があるだろう。

ワールドカップに向けたテストマッチ3試合を終えた西野監督は「完成度を問われれば、正直なところ全く感じていない」としながらも、「もっともっと選手の良さを引き出した上で、可能性の高い完成形があると思う。それを目指さなければ」と話している。一週間後のコロンビア戦に向け、一定の手応えと伸びしろを含ませたコメントのようにも聞こえた。

正直、コロンビア戦への準備は万端ではない。試したいことをすべて試せたわけではない。この日、西野監督はパラグアイがパワープレーに出てくることを想定し、5バックにシステムを変更して逃げ切ることを視野に入れていたが、相手がガムシャラに点を取りに来なかったことで、それも叶わなかった。しかし、そういった部分も含めて、ようやく本大会で勝ち点を取るための明確な準備が垣間見えてきたとも言える。

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■テストマッチ3試合で確認できたこと

采配に関してポジティブな材料を挙げるとすれば、テストマッチ3試合をすべて異なるシステムとメンバーでテストを続けたこと、対戦相手にも的を絞らせない状況にあることか。この日は元アルゼンチン代表で現在はコロンビア代表でコーチを務めるエステバン・カンビアッソが視察に訪れていたが、日本代表を丸裸にできるようなゲームではなかった。西野監督が急ピッチで求められるチームづくりと並行して、情報戦に持ち込んでいたとしたら、なかなかの策士である。

パラグアイ戦から一夜明けた13日、日本代表はいよいよベースキャンプ地であるカザンに入る。長谷部誠は「パラグアイと比べたらコロンビアのほうがすべて上。しっかりとそこと向き合って、コロンビアに対してどんな戦い方をするかをロシアに入ってから突き詰めていきたい」と19日に行われる初戦に向けて意欲を見せた。

守って、耐えて、勝つ。指揮官はそのための活路を見いだそうとしている。西野ジャパンが置かれている現状は、急進が求められる中での漸進でしかない。パラグアイ戦の勝利がチームの雰囲気を変えるものであるのは間違いないが、現段階で求められるものは、やはり急ピッチでの仕上げにほかならない。もちろん勝利への秘策も求められる。

長く助走を取ったほうがより遠くへ飛べるのは間違いない。4年間を掛けてチームを作り上げられれば一番だが、西野ジャパンに与えられた期間はわずか2カ月。実質的には合宿が始まってからの3週間である。しかし、ガーナ戦で今まで取り組んでいなかった3バックにトライさせ、本大会で守り切ることを想定した。スイス戦ではガーナ戦を踏まえた上で、強豪国に対してどう守り、どう攻めていくのかを確認した。そしてパラグアイ戦ではアタッキングサードに残していた課題を香川と乾のコンビに一定の可能性を感じさせた。

この3試合で少しずつ打ってきた布石がコロンビア戦で一気に合致するとすれば、限られた時間の中でも遠回りに思われた道のりは、コロンビアという“高い山”を越えるための助走にしているのかもしれない。そのための具体的な戦略は、選手たちにもカザンの地で明らかにされることになる。

文=青山知雄

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