戻ってきた清水のエース、FW鄭大世の確固たる決意…静岡ダービーは「人生が懸かった試合」/インタビュー

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静岡ダービーは人生が懸かった試合――。ケガから戻ってきた清水エスパルスのエース、FW鄭大世が大一番を前に確固たる決意を語った。

8月4日に負った左ヒラメ筋肉離れは当初の回復予定よりもずれ込み、復帰まで7週間を要した。この間、チームは2勝5敗。順位は13位をキープしているが、下位チームの追い上げによりJ1残留争いのボーダーラインが迫ってきた。

期せずしてチームを外から見ることになった清水エスパルスFW鄭大世。リーグ戦は残り6試合だが、彼にとっては離脱期間の活躍を上乗せしなければならない戦いでもある。キャプテンとして背中で引っ張らなければならないという思いも強い。

エースの意地――。空白の7週間を埋めるため、強烈な破壊力を持った“人間ブルドーザー”が確固たる決意で静岡ダービー、そしてJ1残留争いに臨む。

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――まず最近のチーム状況と自分自身のプレーについて教えてください。

鄭大世 クロスからのゴールが増えていたし、攻撃の形はある程度できていたと思うんです。真ん中でサイドからのボールを要求していたし、みんなが自分にゴールを取らせるために頑張って合わせてくれていた。まずはそこに感謝したいですね。

8月上旬にケガをする前は、得点ランキングで上位にいることができましたし。ただ、最近は試合が動いた後の戦い方に課題があると思っています。先制すれば前に出てくる相手の勢いを止められないし、リードを許したら引いた相手をなかなか崩せない。0-0で進めば集中力が保てるし、そこから後半にワンチャンスを決めるのが勝ちパターンでしたけど、最近は状況判断の意思統一ができていないし、なおかつカウンターからの失点が多くて前にも出ていけない。

もし失点してしまっても、試合を落ち着かせるために少しずつ仕掛けていくようにしているんですけど、それが結果につながっていないという難しさがあります。僕がケガをする前はチーム全体がいい方向に進んでいる実感があったので、この7試合にはすごく責任を感じています。

――ケガをしている期間、すごくもどかしかったんじゃないかと思います。

鄭大世 それに尽きますね。まず最初に序盤戦を振り返ってチームメートに感謝しました。昔だったら「ケガをしたら仕方がない」と思っていたんですけど、どれだけ迷惑を掛けているかに気づいて罪悪感を覚えました。

やっぱりエースとしての立場があって、結果を出さなきゃいけない中でケガをしてしまったのは、自分自身のミスだなと。脳しんとうみたいな事故だったら仕方がないですけど、ケガをしないようにもっと予防できたんじゃないかとすごく考えました。

実は筋肉系のケガはプロになってから2回目で、それも5年くらい前だったので、自分は「筋肉系のケガはしない」って勝手に思い込んでいたんです。だから、ちゃんとケアをしなきゃいけないと思って、最近はすごく身体を気遣うようになりました。

――ケガからの復帰直後、「まずは試合勘を戻したい」と話していました。

鄭大世 実戦復帰してから1カ月くらい経つんですけど、フィジカルもボールタッチの感覚もまだまだですね。今までだったら考えられないようなミスもあるし、ボールが足につかなかったりもする。結局、7週間も休んでしまったので、トップフォームに戻るまでには、もう少し時間が掛かると思います。

――第27節のサンフレッチェ広島戦で復帰を果たし、途中出場から同点ゴールを決めました。ただ、チームは終了間際に2失点を喫して敗戦。中断前の大宮アルディージャ戦はJ1残留争いのライバル相手にアウェイでスコアレスドローでした。

鄭大世 広島戦は途中から入ってゴールを決めたことでスタジアムは盛り上がったと思うんですけど……。でも、やっぱり崩れてしまった。でも、僕としてはイチからやろうと考えていたので、大宮戦の引き分けはすごく大きなポイントになると思っています。あの試合ではまず、「しっかりと守る」という意識付けができた。最近の試合は失点が増えていたので、ここから積み上げていくことができるはずです。

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――守備的に戦った大宮戦には様々な声が聞こえてきます。相手に勝ち点3を与えなかったというポジティブな意見がある一方、ここで勝たなければどこで勝つのかという厳しい見方もありました。

鄭大世 僕は全然気にしていないですよ。何なら完封したことでガッツポーズしていたくらいですからね。今、残留争いしている中で自分たちが一番弱いことは明らかだし、一番危ないのがエスパルスだと危機感を持っています。

ヴァンフォーレ甲府はいつも終盤に強さを見せるし、守備がしっかりしている。サンフレッチェ広島はどんどんパフォーマンスを取り戻し始めていますよね。北海道コンサドーレ札幌はホームで無類の強さを見せているし、大宮は昨シーズンのJ1で4位に入っている。間違いなく実力はあるんです。

じゃあ、エスパルスは何が強いかを考えていくと、客観的に見て「チアゴ・アウベスと鄭大世、エスパルスの看板2トップが戻ってきました」って言っても、やっぱり守備の弱さは否めない。この弱さはディフェンスが弱いわけではなくて、チーム全体としての守備だと思うんです。

残留争いは守備の堅いチームが生き残っているので、そこはすごく大きな弱点になる。僕たちは序盤戦に積み上げた貯金があったから、ここまで残留争いに巻き込まれなかったわけです。であれば、自分たちがやるべきことは、少しずつ地道に勝ち点を重ねていくことじゃないかなと。だから僕たちは追われることを意識するよりも、どれだけしたたかに勝ち点を積み重ねていけるかという自分たちとの戦いになります。

――そんな状況下で次節は静岡ダービーを迎えます。

鄭大世 周りは盛り上がっていますけど、正直に言って、そこを過剰に意識している余裕はないです。ただ、チームとして絶対に負けられない試合であることは間違いない。派手な試合をする気は全くないし、まずは守備から手堅く入ることが重要だなと。僕たちはしたたかに戦うしかないので、0-0のまま試合を進めて、ワンチャンスを決めて1-0とか2-0で勝つ展開に持ち込まないと勝機がない。失点しないためにまずはブロックを作って、スペースを与えないこと。そしてセットプレーにも警戒したい。それでチアゴと僕の2トップでゴールを決める展開が理想的だと思います。

――4月の静岡ダービーでは磐田MF中村俊輔選手の左足から3点を先行されてしまいました。

鄭大世 そう、結局はセットプレーなんですよ。ただ、僕らはジュビロ戦の反省を生かして、セットプレーで徹底的に集中するようになって失点が減った。だから今回もセットプレーでそんな簡単にやられることはないと思います。前回のダービーはチームとしてすごく良い教訓になりました。

――エスパルス側のキーマンは誰になると見ていますか?

鄭大世 やっぱり左サイドバックの(松原)后じゃないですかね。攻撃の形はあそこから作られているんで。あいつはよくボールロストするけど、あれだけ怖いものなしで突っ込んでいける選手は貴重です。チームとして結果が出ていないこともあって、どうしてもリスクを回避した横パスが増えがちなんですけど、アイツは相手が二人でも三人でも、何回失敗してもガンガン突っ込んでいく。それって才能だと思うんですよ。だから攻撃の突破口はそこになるでしょうね。ただ、今シーズンは起点になっているだけで、実はほとんど結果が出せていない。左サイドバックなのにアシストが少なすぎるので、厳しく求めていきたいと思います。

――2年前に残留争いをした教訓は生きていますか?

鄭大世 それは間違いないです。当時に比べれば圧倒的に良くなっている中で、一番のプラス材料は全員がチームプレーをしようと心掛けていること。それはチームとして戦う上で僕たちの大きな強みだと思います。誰もワガママなプレーをせず、みんなが組織のためにハードワークする意識を持っている。これはJ1残留に向けてのストロングポイントになると思います。

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――周りに求めたいものって何かある?

鄭大世 球際ですね。これに尽きます。ずっと求め続けてきて、言いすぎてしまって“味のなくなったガム”みたいになってしまっていますけど、絶対にそこなんですよ。僕もドイツへ行って気付いたんですけど、やっぱりサッカーは戦うスポーツ。うまくても戦えなければ意味がない。選手個々が自分の責任をしっかりと持ってほしいと思っています。実は一昨日の練習で竹内(涼)がチアゴに激しく当たって、二人が言い合いになった。俺はそれがすごくうれしかったんですよ。もっと感情を表に出して戦うべきだし、球際の激しさから危機感を持ってやっていることが感じられました。

――静岡ダービーはいろいろな意味で熱く、大事な試合になりそうですね。

鄭大世 静岡ダービーっていわゆる大舞台じゃないですか。そういう試合で活躍できる選手が上に行けると思うんですよね。本田圭佑を見ていたら分かるけど、やっぱり勝負どころで仕事ができる人間は貴重だと思う。大事な試合だけど、心は熱く、頭はクールにプレーしたい。そしてFWとしては苦しい時に流れを変えるプレーをしたい。相手の脅威になるようなプレーができれば雰囲気は変わるはず。ファンの皆さんは勝っても負けても変わらずに応援してくれているので、その期待に応えられるようにゴールを目指すだけです。

――クラブとして未来へつなぐための残り6試合。その初戦が静岡ダービーです。

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鄭大世 エスパルスの長期的ビジョンを考えたら、ここで降格したら2年間やってきたことが何の意味もなくなる。未来のためにはJ1残留が絶対に必要です。ここから強くなるためには絶対にJ1にいなければならない。クラブとして積み上げてきたものを残留という形で示したいし、今回の静岡ダービーもそれぞれの人生が懸かった試合になると思います。

自分たちがやるべきことは変わらないけど、今の状況では我慢することも必要です。派手なプレーや相手を圧倒するサッカーはできないかもしれないけど、自分たちの戦い方で一つずつ積み上げていきたい。エスパルスの未来を紡ぐために、サポーターの皆さんと一喜一憂せず一緒に戦っていきたいと思っています。


取材・文=青山知雄

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