Goal Live Scores

憲剛の見るロシアW杯。ここまでの印象や気になる傾向とは?【中村憲剛のMSN】

みなさん、こんにちは。中村憲剛です。早いもので、ロシア・ワールドカップも、いよいよ大詰めですね。そこで今回は大会全般の印象や気になる傾向など、僕なりに感じたことを、ざっくばらんに語ってみたいと思います。

■列強とそれ以外との差はない。それが顕著に表れた

まずは、今大会をひと言でまとめると、もはや差がない――という感じかなと。まったく「ない」と言ったら語弊がありますけど、列強とそれ以外の国々との間でかつてのような格差はなくなってきていると思います。それはいまに始まったことではなく、何年も前から少しずつ差が縮まって、それが今大会で顕著に表れた、と見るべきでしょう。

中堅国はもとより、以前ならばアウトサイダーと思われていたような国々もチームとして戦術的に整備されていましたね。個々の選手を見てもヨーロッパのトップクラブ、またはトップリーグに身をおいて戦術眼や経験値のレベルを上げている。だから、大国相手でも気後れせず、堂々と渡り合っていた。いわゆる「位負け」がなかったですね。グループリーグで敗退した国々も少し風向きが違えば、勝ち抜いていたかもしれない。そう思わせる国がほとんどでした。

以下に続く

ヨーロッパのトップレベルで揉まれた選手たちが規律に従い、まず守りからという意識で臨めば、そう簡単には崩れない。ある意味、守り勝てるチームが増えたなと。だから強豪国も最後はゴリ押し、あるいは直接FKといった個の力で、どうにか勝ちに持っていくだけで精一杯という……。グループリーグの段階から、もうそこまで追い詰められている。1点を争う僅差勝負が多く、セットプレーが勝敗を分ける大きな要素になったのも、そうした理由からでしょうね。

あとは、1人の選手にすべてを負わせる時代はもう終わりに近いのかなと。スーパースターであっても「11分の1」として攻守の両局面に深くコミットしていかないと、勝ち切るのが難しい。その事実をまざまざと見せつけられましたね。メッシのアルゼンチンしかり、クリスティアーノ・ロナウドのポルトガルしかり。守備は免除――という暗黙の「特別扱い」が通用しない。いや、守備に関与しないアタッカーばかりか、ビルドアップのおぼつかないディフェンダーがいても大きなリスクになる。もはや、そういう時代なのかなと。

2018-07-messi(C)Getty Images

■共通の問題を抱えていたドイツ、スペイン

優勝候補と目された前回王者のドイツやスペインの「早すぎる敗退」も今大会の大きなトピックスの1つですが、どちらも前線の決め手不足という共通の問題を抱えていましたね。ドイツはバイエルン、スペインはレアル・マドリードとバルセロナがチームの母体でしたが、どのクラブも肝心の決め手に関してはレヴァンドフスキ、クリスティアーノ・ロナウド、メッシ、スアレスといった外国人選手に委ねた状態が続いている。そのツケを払った感じかなと。

ドイツもスペインもボールは回る、チャンスもつくる。 でも、誰が決めるのか――という仕上げの部分でつまずき、最後まで解決策を見いだせなかった。一方、アルゼンチンやポルトガルには決める人がいても、そこまで、いかにボールを運んでいくのか――というプロセスの方に問題を抱えていました。結局は「ないものねだり」ですが、これらの弱点を補うだけのアイデアや戦い方が見つからなかった感じですね。

優勝を狙うような強豪国はファイナルまでの7試合をトータルで考え、尻上がりに調子を上げていく。これが今までのW杯におけるスタンダードでしたが、今大会を見ていると、グループリーグの段階から、それなりに仕上がった状態で戦わないと、勝ち抜くのが難しくなりましたね。実際、いくら大国であっても初戦で勝ち点3を取り損ねると、大変なプレッシャーがかかってしまう。もはや楽に勝たせてくれる相手はいない、という証かなと。もちろん、突破の当落線上にある中堅国がグループステージにピークを持ってくる場合が多いからこそ、そうなるわけですが。初戦でドイツに勝ったメキシコなんかがそうですね。

もう1つ、ドイツの敗退に関しては前回にも指摘した問題が大きいのかなと。「王者ゆえのマンネリ」ですね。大きな成功を収めたチームというのはなかなか動かせない。しかも、優勝メンバーの多くが若かったこともあり、今大会もチームの中心として十分にやっていける。それがかえって、マンネリ化を避けるのに必要な新陳代謝の妨げになってしまった感じがありますね。個人的にはリロイ・サネを加えてほしかったなと。すべては結果論ですが。

2018-07-spain-pique-busquets(C)Getty Images

■スペイン敗退に監督交代の影響はあったと思う

大会前に「スペイン推し」だった身としては、敗退の理由について、もう少し踏み込んで語る必要がありますね。まず、大会直前の監督交代の影響は少なからずありましたね。とくにスタメンの人選や交代策は、前監督のロペテギとはかなり違っていただろうなと。決勝トーナメント1回戦でイエロ監督がコケを使った理由も分かるんです。グループステージで何度もカウンターアタックを浴びて、ピンチを招いていましたからね。

反面、コケが後ろに残ったことでブスケツを起点にしたパスワークのメカニズムを失ってしまった。攻守のバランスを含め、イエロ監督がどこまでチームの戦い方を浸透させることができたのか。崩しの形がイスコとイニエスタの左サイドに偏った点も含め、そこが難しかったかもしれませんね。もう選手の頑張りだけでは勝ち上がっていけない。チームを良い方向へ導く監督の力がいかに重要か、それを再認識されられましたね。

チームとしての拠りどころ、自分たちのやるべきことは何か、それを信じて戦えるかどうか。とくに革新的な何か(戦術など)がある大会ではないですが、逆に戦う上で不可欠な本質的な部分と、それを突き詰めることの重要性を教えてくれているかなと。そのあたりの意味合いも含め、次回は日本代表の戦いについて触れてみたいと思います。

構成=北條聡

Goal_worldcup_article_banner

▶サッカー観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう

【DAZN関連記事】
DAZN(ダゾーン)を使うなら必ず知っておきたい9つのポイント
DAZN(ダゾーン)に登録・視聴する方法とは?加入・契約の仕方をまとめてみた
DAZNの番組表は?サッカーの放送予定やスケジュールを紹介
DAZNでJリーグの放送を視聴する5つのメリットとは?
野球、F1、バスケも楽しみたい!DAZN×他スポーツ視聴の“トリセツ”はこちら ※提携サイト:Sporting Newsへ

Goal Live Scores
広告