【徹底分析】ナポリが展開する世界一美しいサッカーのカギ…連続1タッチパスと“ズレ”

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「世界一美しいサッカー」と、世界各国から称賛を浴びるナポリ。結果、内容ともに優秀な成績を収めるチームの戦術的特徴はどんなところにあるのだろうか。今回は詳細な試合分析で定評のあるらいかーると氏に、ナポリの特徴を分析してもらった。

ナポリの勢いが止まらない。

セリエA開幕から7試合連続で3得点以上を挙げ、合計25ゴールを記録。さらに15節まで無敗を維持し、現在リーグ戦7連勝中だ。23節を終えた時点で、積み上げた勝ち点は「60」。6連覇中の王者ユヴェントスを抑え、堂々の首位を走っている。

データの面でも、優秀さは際立つ。

『Opta』が提供するデータをもとに、2017年1月1日~12月26日に記録したあらゆるスタッツを平均化するツール「Opta Index」で数値化して発表された「2017年ヨーロッパベストイレブン」において、ナポリからは最多3選手が選出されている。

元銀行員でへビースモーカーという異色の経歴を持つマウリツィオ・サッリ監督に率いられたチームは、数々の強敵と対峙してきた名将ジョゼップ・グアルディオラ(現マンチェスター・シティ指揮官)いわく「キャリア最高の相手」だったという。

しかしなぜ、ナポリはこれほどまでに美しいのか。どんなサッカーを展開し、どんな戦術を用いているのか。

今回はそんな疑問に応えるべく、『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』でおなじみのらいかーると氏に分析を依頼。「世界一美しいサッカー」を紐解いてもらった。

文=らいかーると 編集・構成=Goal編集部

■“ズレ”を生み出す1タッチパスの連続

華麗なボール保持とゾーン・ディフェンスを基調とするプレッシングを実現したことによって、ナポリは世界中から称賛されている。本稿では、ボールを保持しているときのナポリの振る舞いに注目していく。

※ナポリ基本フォーメーション(4-3-3)
GK:レイナ
DF:ヒサイ、アルビオル、クリバリ、グラム(ルイ)
MF:アラン、ジョルジーニョ、ハムシク
FW:カジェホン、メルテンス、インシーニェ

※セリエA第11節vsサッスオーロ戦

●1タッチとショートパスを多用したパスの狙い

ボールを保持しているときのGKへのバックパスは、相手に守備のポジショニングを整える時間を与えてしまうデメリットがある。しかし、ナポリはペペ・レイナにバックパスをすることを躊躇わない。その理由は、相手に守備を整える時間を与えたとしても、効果的に攻撃ができるという自信があるからだ。その自信の根拠が、1タッチで行われるバックパスとポジショニングを下げる列移動にある。

●ポジショニングを下げる列の移動

まったりと始まるナポリの攻撃のスタートは、インサイドハーフ(主にマレク・ハムシク)のボールに近寄る動きで始まる。ボールに近寄る動きの距離が長ければ長いほど、その移動に意味は出てくる。守備のルールが完全なマン・ツー・マンでない限り、守備者の動く範囲は決まっている。その範囲をこえるボールに近寄る動きは、相手に決断を迫るプレーとなる。インサイドハーフについていくか、いかないかの2択を守備者に迫る決断が、列を離れる動きの特徴だ。

DAZN-Napoli1

・列を下りるインサイドハーフに相手がついてきた場合
→インサイドハーフは1タッチでリターンパスをする

・列を下りるインサイドハーフに相手がついてこない場合
→インサイドハーフは前を向く

守備側のポジショニングが整っている状態を、どのように整っていない状態にするか。ナポリの答えは、「列を離れる動きで相手を動かす」だった。もしも相手がついてこなければ、オープンな状況で前を向ける選手が増え、相手陣地にさらに相手を押し込める状況に繋がっていく設計になっている。そして、相手を動かしてきたときにナポリが行う1タッチで行われるバックパスにさらなる設計が隠されている。

●楔のパスを1タッチでリターンする仕組み

列を離れる動きに相手がついてきたときに、1タッチでのリターンパスという現象がある。リターンパスをするときは相手がついてきている、もしくは前を向けない状況を示している。また、ナポリのビルドアップ隊は平気で相手を背負っている選手に縦パスを選択する。そして、同じようにリターンパスが行われる。

リターンパスが行われたときに、ナポリの選手を捕まえようと追ってきた相手の選手の行動に注目をして欲しい。相手の行動パターンは3択となる。

・自分のいたポジションに戻る
→列を下りた選手に時間とスペースが生まれる

・そのままマンマークを継続する
→自分の移動したエリアにスペースが生まれる

・リターンパスを受けた選手にダッシュでプレッシャーをかける
→ボール保持者にプレッシングはかかるが、列を下りた選手はフリーとなる。さらに、自分が移動したエリアにスペースが生まれる

相手のリアクションで多い現象が、そのままマークを継続すること、そして1タッチで行われるバックパスについていくことだ。

その両者に共通していることは、相手の守備を動かすことに成功していること。特にバックパスに相手がつられたときに、ナポリは相手の守備の隙を見つけ、ライン間にポジショニングする選手にボールを届けられることが多い。

繰り返される1タッチのバックパスやショートパスの連打は、相手の視野を操作する設計にもなっている。自分がマークすべき相手とボールを同一視野におくことが守備側の論理だが、「ボールウォッチャー」という言葉があるように、守備者はボールを見てしまうことが多い。

特にパスをした瞬間の守備者の視野には注目だ。ナポリの選手がバックパスを選択した瞬間に相手の視野から消え、フリーな状態に繋がっていくことが多い。

●左サイドの出番

であれば「列を下りる動きやバックパスについていかなければいいじゃないか!」と守備側はなる。ナポリにボールの前進を許し、撤退守備で対抗することを選択するようになる。そして、相手が撤退したときに強さを見せるのがナポリの左サイドだ。

ボールを保持しているときのナポリの選手配置は、左右不均等になる。左サイドバックのグラムは高いポジショニングをとることで、横幅を確保するタスクをこなす。その代わりに右サイドバックのエルセイド・ヒサイは、センターバックのカリドゥ・クリバリ、ラウール・アルビオルと3バックを形成する。

横幅タスクから解放された左ウィングのロレンツォ・インシーニェは、縱橫に幅広く動き回り、左インサイドハーフのハムシクは列の移動で相手と駆け引きを行う。そして、ときどき1トップのドリース・メルテンスが登場することで、数の優位性と配置の優位性を手に入れることができる。
DAZN-Napoli2
ただし、攻撃のコンセプトはボールの前進と変わらない。コンセプトは、“相手の守備の基準点がずれたタイミングを見逃さない”ことだ。相手の守備の基準点をずらすために、数と配置的な優位性とショートパスの連打によって、相手の視野の限定し、それを利用する。特にタイミングが重要になっており、相手の視野やマークから味方が自由になった瞬間を、ナポリの選手は見逃すことが少ない。

相手の枚数、守備組織力によってずれが出ない場合でも、ナポリは左サイドでボールを保持する。左サイドからの突破が見込めない場合は、右ウィングのホセ・カジェホンのダイナゴルなゴール前への侵入、もしくはサイドチェンジで状況打破を狙う約束事になっている。サイドチェンジの場合は3バックの一角だったヒサイがサイドバックに変貌し、アルビオルの運ぶドリブルからのヒサイという仕掛けになっている。

■全体のコンセプト

相手の守備の基準点、もしくは相手の守備のルールを知る。
→自分たちの列の移動(ポジショニング)とボールの循環(1タッチのバックパス)によって、相手の守備の論理をずらしていく。また、繰り返される1タッチのバックパスとショートパスによって、相手の視野をボールに注目させていき、ずれを加速させていく。
→前線でフリーな選手をつくり、攻撃を構築していく。

また、ナポリの選手は自分が誰にマークをされているかを、おそらく把握している。そしてその選手の視野とボール循環によって、自分、または味方の誰がフリーになったかどうかを認知している。それらを利用することによって、時間とスペースを得るナポリは華麗なサッカーを実現しているのだ。

■ひとりごと

2018-02-08-jorginho
本文では触れていないが、ジョルジーニョがえぐい。ジョルジーニョで注目するポイントは、身振り手振りによる指示だ。ピッチに監督がいるかのように振る舞うジョルジーニョは、常にボールをどこに運べば優位になるかを把握しているように見える。

ジョルジーニョの言うとおりにすれば、ナポリのサッカーが実現されるは言い過ぎかもしれないが、26歳のイタリア代表MFの身振り手振りに注目してナポリの試合を観戦しても、非常に面白いかもしれない。

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