『信念』から紐解くディエゴ・シメオネの正体…なぜ“圧倒的カリスマ”になりえたのか?

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『信念 己に勝ち続ける挑戦』から読み解けるシメオネの正体とは? 選手時代のシメオネや名言から、圧倒的カリスマ性を持つアルゼンチン人指揮官の本質に迫る。

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名選手にして名監督――。

今となってはレアル・マドリーのジネディーヌ・ジダン監督のためにある言葉にすら聞こえてくる。だが、アトレティコ・マドリーを率いる男にも、このフレーズが当てはまるはずだ。

なぜ、ディエゴ・シメオネは“圧倒的カリスマ”としてアトレティコを指揮するに至ったのか?

本書『信念 己に勝ち続ける挑戦』では、彼の生い立ちから現在に至るまでの過程、経験、そして思考のすべてが綴られている。他の追随を許さない「信じる」力は、フットボーラーではない者をも後押しするパワーをまとう。自伝であるとともに、手に取る人々にとっての自己啓発本になるはずだ。

■あなたは本当のシメオネを知っているか?

本書を読めば、シメオネがどのようなメンタリティーでフットボールに身を投じてきたかが理解できる。選手として過ごした時間が、監督業に挑む上でどのように生かされたかも分かるだろう。

優れた物語は往々にして点ではなく、線でできている。

“指導者シメオネ”を紐解く上で、選手時代にいかなる思いを持ってピッチに立っていたかを振り返る過程は必要不可欠なことだ。現役時代に抱いていた思いを知れば、後に訪れる指導者としての成功が必然であったとすら感じられてくる。

例えば“選手シメオネ”につきまとうイメージといえば「荒々しい」や「姑息」ではないだろうか。中盤の選手でありながらゴールを量産した事実や、ジョゼップ・グアルディオラらのプレッシングを股抜きによってかいくぐるほどテクニックを持っていたことに焦点が当てられることは少ない。

しかし、この穏やかではない言葉たちは「情熱」や「勝負にこだわる意思」に変わり、シメオネを助けた。さらに付け加えるなら、彼は何も選手になってからこれらの感情を持ったわけではない。その背景には、自ら「生来のリーダーであった」と語る“少年シメオネ”時代からの歩みがあった。

“指導者シメオネ”を点で見ただけでは、その本質は見えてこない。彼の歩みを線で見ることで、初めてカリスマになりえた理由を紐解くことができるのだ。

■「信念」につながるカリスマの言葉たち

「とても困難なだけなのに、なぜ不可能と言い切れるのか私には分からない。困難の中にも可能性があることを認めるべきなのだ。難しいように思えるからやめるべきという助言を、私は信じない」

これは本書の核となる、シメオネ本人の言葉である。

これこそ、彼が起こしてきた奇跡を裏付ける思考の正体にほかならない。決してきれいごとや負けた後の言い訳として軽々しくこの言葉を使っているわけではないということは、彼とアトレティコが紡いできた戦いの歴史を振り返ればすぐに理解できるはずだ。

特に外国人の自伝、訳書は一歩間違えれば難解になりすぎて、読み進めるのを躊躇われる文章になっていることが少なくない。本書にしても必ずしも読みやすいというわけではない。しかし、“適度な読みづらさ”が、シメオネの言葉を引き立てる要因になっているのが、興味深いところだ。訳書であるということを忘れさせながら、時折読み進める目線を一時停止させる。だからこそ、一つ一つの言葉が読者に深い印象を与え、一人ひとりに昇華させる時間を与えるのだ。

翻訳を担当した江間慎一郎氏は、アトレティコ・マドリーやレアル・マドリーをはじめとして、スペインフットボールへの深い愛を印象的なコラムで示してきた人物である。最後に書かれたあとがきもまた、本書の魅力の一つとして読む者の心を引きつけるはずだ。

とりわけ日本では、シメオネの知名度は決して高くない。本書でも言及されているが、1998年のワールドカップでデイヴィッド・ベッカムを退場へ追い込んだ悪者のイメージを持つ人も多いだろう。

しかし、その行動ですらシメオネの本質に触れた後ならば、不思議と納得してしまう。彼は少年時代から体の中に根付いた原理に従っただけなのだ。本人の言葉を借りるとするなら「一つの状況を生かして利益を得た」に過ぎない。

これほど強い“何か”を持った人物が、一体どれだけいるだろうか。

ディエゴ・シメオネ――。

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彼の言葉は、読んだ者に新たな指針を与える力すら持っている。恐ろしくパーソナリティの強い人間が語ってきた数々の言葉と向き合い、その「信念」を感じてほしい。

文=平松凌(Goal編集部)

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