“世界”を知ることの必要性【日本代表、未来への提言/第1回】

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ロシア・ワールドカップ。日本代表はべスト8の壁を破れなかった。今大会は、日本サッカーの現在地を明らかにすると同時に、多くの課題をもたらした。

ワールドカップ・ロシア大会で日本代表が経験した4試合は、準備期間含めて日本サッカーに貴重な経験をもたらした。それは財産となり、課題となり、そして、世界と伍する上で足りないものあらためてを気づかせてくれた。大事なことは、ここから何を考え、どうやって前へ進んでいくか。シリーズコラム「日本代表、未来への提言」。第1回は世界で戦うことについて。

■開かなかった扉。突きつけられた現実

夢を見た。そして現実を知った。

ワールドカップとはこんなにも厳しい大会なのかと――。1998年からずっと参加してきた大会が、本当のワールドカップではなかったのではないかと思われたくらいに現実を突きつけられた。

日本代表は初めてのベスト8進出を確実に視野に捉えていた。グループリーグの段階で選手起用を調整して決勝トーナメントを見据え、臆せず積極的なサッカーで2点を先行してベルギーを本気にさせた。

そして8強の夢は後半アディショナルタイムまで気を緩めず、鬼気迫る攻撃を見せてきた彼らによって砕かれてしまう。

圧倒的なアドバンテージを手にしながら、悔やんでも悔やみきれない敗戦。だが、一方で日本代表がいよいよワールドカップのノックアウトステージで世界と真っ向から対峙する舞台まで来たことも事実。ベルギー戦後、本田圭佑も「上に進むチームは常に次を見据えている。日本代表は今、ようやくそのステージに来た。これを変えてはいけない」と違った景色が見えたことを明かしている。

“ベスト8進出”という新しい扉は手を掛けたところで閉ざされてしまったが、もう一つ前にあった“本当のワールドカップ”という扉を開き、新しい世界を見ることはできた。大事なのは日本代表が、そして日本サッカー界がここから何を考え、どうやって前へ進んでいくかである。

日本代表には過去の悔しさをバネに未来を切り拓いてきた歴史がある。ドーハの悔しさをジョホールバルにつなげ、フランス大会での3連敗から日韓大会でのベスト16があった。2010年の南アフリカ大会では悲観的な状況から守備的な戦術でグループリーグ突破を成し遂げ、そのメンバーを中心としたブラジル大会での惨敗が今大会の原動力となった。

これほど痛みを伴わなければ、その先を見ることができないのかとも考えたが、やはり歴史とは積み上げるもの。そして一歩ずつ進んでいくことの重要性を再認識する機会にするしかない。西野朗監督もベルギー戦直後の記者会見で「この戦いを次につなげていけるかどうかが、日本サッカー界にとって今大会の意義。4年後に今回のチャレンジが成功と言えるようにしてほしい」と話している。

ディフェンス陣のリーダーとしてチームをけん引した吉田麻也は「ここで終わりじゃない。ベスト16に進出して、優勝候補を相手にいい試合をしたという美談で終わらせるのではなく、課題からしっかりと学んで、何をしなければならないのかを選手も、サッカー協会も考えなければ。そうしないと日本は強くなっていかない」と警鐘を鳴らす。

■日常として世界で戦ってきた選手たちの言葉

では、今大会で見えた課題とは何なのだろうか。まさに山積するところではあるが、今回は選手や監督のコメントから見えた三つのポイントに触れたい。

まず一つ目は“世界を知る”ことの重要性についてだ。

孫子の兵法に「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という言葉があるが、まず相手を知らなければ、策を練ることすらできない。

イングランドのサウサンプトンでプレーし、プレミアリーグで各国代表選手と日々研鑽を重ねる吉田は「たくさんの選手がヨーロッパでプレーして、揉まれて、学んでいかなければいけない。やっぱり普段から彼らと対峙していなければ、いきなり大舞台でやるのは非常に難しい」と4年前と変わらぬ見解を残している。彼自身もそうやって成長し、今大会で見事なパフォーマンスを披露している。

ドルトムントでヨーロッパの列強と対戦してきた香川真司も「厳しい環境に身を置いて戦い続けていかなければ、こういう舞台で実力を発揮できない。いかに日々そういうところで戦い抜くかが最終的に出てくる。こういう相手に勝つために、サッカー以外の部分でもいろいろなものを犠牲にしながら向き合っていかないと戦えない」と話している。

ベスト8以上の世界を見るために乗り越えなければならない壁。それを日常とすることの重要性を経験ある選手たちが説く。

2018-07-02 Maya Yoshida

また、今大会は過去にワールドカップを経験した“世界を知る”選手たちが多かったことも日本代表の躍進を後押しした。

短期間でチームとしてまとまり、自分たちの現在地を低く捉えた上で、相手に勝つ手段を細かく突き詰めたからこそのベスト16進出。実際にピッチで奮闘した選手たちからは、個々でワールドカップで結果を出すことをイメージしながら、4年間という時間を過ごしてきた努力が至るところに垣間見える。

ベルギー戦で先制点を決めた原口元気にとっては初めてのワールドカップだったが、本大会での戦いを想定してきたことが先のゴールにつながったという。

「ドイツに行ってから50~60メートルをスプリントしたあとでも自分の力を出せるようにしたいと思って、4年間トレーニングしてきた。あのシーンは本当に60メートルくらいスプリントしたあとに相手と駆け引きをして止まって、バランスを崩さずに自分の思ったとおりに蹴ることができた。負けたことには悔しさは感じているけど、自分のやってきたことが詰まったゴール。ワールドカップがどういうものかイメージをしてトレーニングを始めて、逆算したものが出せた」

ワールドカップで結果を出すための意識とトレーニング――。

もちろん海外で実際に肌を合わせながら、そのレベルを日常とするのが理想的なのは間違いない。だが、これは国内でも少なからず成長できる部分である。

■そして個。国内でも、世界を意識して成長できる

昨今、あらゆるデバイスで世界中のサッカーを見ることができるようになっている。選手として本当に高みを目指すならば、世界のサッカーに精通し、実際に彼らと戦うことを想定して日々のトレーニングから“個の力”を伸ばす努力をすることが必要になる。これこそが世界と戦うことへの意識。ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督が国内組に対してレベルアップを強く求め続けた理由もここにあった。

実際、本田はベルギー戦後に日本代表のステップアップに触れると同時に「やはり“個”が大事。それは今後の日本サッカーに必要なもの」とも言い切っている。選手一人ひとりのレベルアップなくして、日本代表が強くなることはありえない。どこでプレーしていても、世界を具体的に意識することの重要性を改めて突きつけられた。

ここでいう“個の力”とはいわゆるテクニックやフィジカルだけの話ではない。対峙する相手への対応、チームとして試合を優位に運ぶための方法、そして勝つための手段――。細かなポジショニングや試合の流れを読む力も求められる。ベルギー相手に2-0でリードしながら勝てなかった試合運びの拙さも、本気になった“世界”の怖さをチームとして知らなかったことも、最後の最後で勝ち切れなかった一因だろう。新しい扉を開きかけたからこそ見えたものが、そこには確実にあった。

文=青山知雄

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