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Leonardo Jardim Monaco 2017Getty Images

モナコ躍進の陰にジャルディムあり…攻撃的スタイルへ転換させた手腕とは?

エウゼビオ、ルイス・フィーゴ、リカルド・クアレスマ、そしてクリスティアーノ・ロナウド……。世界のサッカー界には多くのポルトガル人スター選手が存在する。だが、“ポルトガル人監督”にはあまりスポットが当たらない。これは全く持っておかしな話ではなかろうか。

例えば、ポルトガル出身監督ジョゼ・モウリーニョは勝つためになりふり構わないようなスタイルでマンチェスター・ユナイテッドを統率しているし、昨年のユーロ2016においてポルトガル代表を優勝に導いたフェルナンド・サントスの手腕も素晴らしいものであった。

しかしそんな彼らの上を行こうとしているのが、まさにトレンドとも言えるモナコのポルトガル人監督、レオナルド・ジャルディムだ。彼の率いるモナコは今シーズンのヨーロッパにおいて最も見ていてワクワクするチームであり、ピッチのどこからでも仕掛けられるような攻撃的なスタイルは彼が作り上げた最高傑作とも言えるだろう。シーズン通して100ゴールを超える総得点数をここまでにマークし、同じように国内リーグでも得点力に陰りは見えない。

以下に続く

圧倒的な攻撃力について、ジャルディムはかつてこう語った。

「攻撃こそがモナコの強みで、それは相手がどんなに強いチームであろうと変わらないさ。我々のDNAには攻撃が染みついているのさ」

Radamel Falcao, Monaco

そんな彼の手腕はビッグクラブから注目されつつあり、アーセナル、ユヴェントス、そしてバルセロナといったヨーロッパのトップクラブの次期監督候補として挙げられているようだ。彼の監督としての株が、みるみると上がっていることは間違いない。

しかしジャルディムがモナコの監督に就任した2014年当時、彼はほぼ無名の存在であった。ジャルディムがモナコにやってきタイミングは、クラブが高額な選手を買い揃えることから、若い選手を賢く買うスタイルへと転換し始めた時期と重なる。ファルカオはレンタルでマンチェスター・ユナイテッドに移籍し、ハメス・ロドリゲスは巨額の移籍金でレアル・マドリーに買われていった。

だが、それがかえって若手選手たちに成長の機会を与える絶好のチャンスとなったのかもしれない。もともと、ジャルディムはオリンピアコスとスポルティングでも、短期間で将来性のある選手たちを束ねて成功を収めた経験があり、モナコに若手選手を中心とした成功をもたらすには理想的な男であったのだ。

若い選手たちはジャルディムの下で輝き続け、その中でもベルナルド・シルバはリーグ・アンの年間最優秀選手の最有力候補に名前が挙がるまでに成長していった。また最近の成長が著しいムバッペもゴールを量産し、チームになくてはならない存在にまでなりつつある。

一方で、ベテラン選手からジャルディムへの信頼がなくなるわけではない。例えばファルカオはジャルディムに関してこう語る。
「ジャルディムは試合を完璧に読むことのできる、とても賢い監督なんだ。そして選手のことをよく理解し、選手のニーズも完璧に読み取ってくれる。彼のマネージメント術がこのグループの雰囲気の良さを作り出しているんだよ。それにもちろん若い選手たちを成長させるのにも長けているね。注意を払って柔軟に対応している。それはとても重要なことさ」

だが、彼がモナコにやってきて早々はここでの成功は簡単なものではないと認識したに違いない。2014-15シーズン、1-4で手痛い敗戦を喫したボルドー戦では才能ある若い選手たちが守備的になり、明らかに消極的になっていたのだ。そこでジャルディムはすぐさまチーム全員に考え方を変えることを求めたという。

Leonardo Jardim Benfica Monaco UEFA Champions League 04112014

そしてその年のチャンピオンズリーグでジャルディムの策略は見事にハマった。ベスト16では冷静なプレーでアーセナルに勝利し、最終的には準々決勝まで進んだ。それから約2年。今季のチャンピオンズリーグベスト16のマンチェスター・シティ戦は主力を欠いたメンバーで臨まなければならなかったのにも関わらず、きっちりと準々決勝に駒を進めた。さらに、準々決勝ではドルトムントを撃破し、2年前を超えるベスト4進出を果たしている。

ジャルディムは主力メンバーを欠くという事態も想定していたかのようにこう話す。

「ヨーロッパにいるからには、ずっと試合をこなしていかなければならないよ。疲労はプレイステーションのゲームのようなものではないからね。全員が異なるコンディションにあるんだ。私の息子はプレイステーションのゲームの中で簡単に選手を入れ替えたりしているけど、サッカーとはそういうものではないんだよ」

また、ベスト16でモナコに敗れたマンチェスター・シティのグアルディオラ監督は第一戦を前にした記者会見でモナコをこう評価していた。

「私は一人のファンとして、ジャルディムのチームを見るのが大好きなんだ。彼のチームがあらゆる面で優れていて本当に評価しているよ。サイドバックはウイングのようにプレーし、ウイングは攻撃的ミッドフィルダーのようにプレーする。ファルカオとジェルマンの2人のストライカーもペナルティーボックスの中では決してゴールを逃さないよね。それに2人のボランチは知的で、フィジカルにも優れ、相手のペナルティーボックスにも飛び込んでいけるんだ。まさに完成されたチームと言えるよ」

しかし、これからも快進撃を続けていくためには、素晴らしい選手を抱えているとはいえフルスロットルで試合に臨むことが求められる。ジャルディムはポルトガルで最もエキサイティングな監督としての名声を手にするチャンスが高まっている。だが、ピークに達するのは今シーズンを成功で終えたときだ。ユヴェントスを相手にアップセットを起こすことができれば、また一歩成功へと近づいたと言うことができるだろう。

文=ロビン・ベアナー/Robin Bairner

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