バイエルン一強は「悪」なのか?ブンデスの構造から紐解く独裁体制の是非

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今季も圧倒的な強さでブンデスリーガを制したバイエルン。果たしてブンデスリーガにとって一強体制を築くバイエルンの存在は「悪」と言い切れるのか?その構造から紐解いていく。

バイエルンが強すぎて、ブンデスリーガはつまらない。

そんな声が聞こえてくるほど、バイエルン・ミュンヘンは強かった。しかもその声が聞かれるのは、今シーズンに限ったことではない。何しろ、「前人未到」と冠がつく連覇は「6」まで伸びた。優勝が決定する一週前、ライバルと目されていたドルトムントに6発をお見舞いしたのは「バイエルン一強」をより印象づける出来事だった。

優勝が決まったタイミングで今季を振り返るとするなら、気になることが2つある。

一つ目は「なぜこれほどまでにバイエルンは強かったのか」という単純な疑問。そしてもう一つは、「つまらない」という声が挙がるほど明確になっているバイエルンの一強体制がブンデスリーガにとって望ましいものなのか、という点だ。

独走の背景にあった2つの要因

今季のバイエルンは序盤に大きな動きが起きた。カルロ・アンチェロッティ前監督の解任である。チャンピオンズリーグでパリ・サンジェルマンに0-3と完敗したのが引き金となり、更迭の憂き目に遭ったのだ。

しかし、それでも、リーグ戦では5試合を残すスピードでブンデスリーガ制覇を決めるに至った。その背景には、2つの要因があったと考えられる。

一つはユップ・ハインケスの招へいだ。一度は監督業からの引退を表明したが、「勇退後も片足は突っ込んでいた」と話すとおり、圧倒的な手腕は全く錆びついていなかった。チームを率いてから公式戦9連勝(※PK戦勝利を含む)、その後も18試合無敗という驚くべき成績を残した。見事なカムバックというほかない。

RB Leipzig FC Bayern München Jupp Heynckes

ハビ・マルティネスを中盤に固定するなど微調整は行ったが、戦術的に革新的なことは特に見当たらない。それでも、ハメス・ロドリゲスやキングスレー・コマン、トーマス・ミュラーといった選手たちが水を得た魚のように輝き始めたのは、この老将の手腕にほかならない。

そして、バイエルンが独走したもう一つの理由はというと、外的な要因が挙げられる。第2勢力の不振だ。中でもドルトムントは不調をかこち、バイエルンの独走を許す大きな原因となってしまった。

ドルトムントは昨夏、ピーター・ボス監督を招へい。ボスは能動的かつ攻撃的なスタイルをオランダからドイツへ持ち込み、開幕から7試合を無敗で過ごした。しかし、他クラブからカウンターを用いた対応策を講じられると、「シュヴァルツ・ゲルベン」は脆かった。坂を転げ落ちるように勝利のない暗く長いトンネルに入った結果、ボス監督は解任に。ペーター・シュテーガー新監督の下で持ち直したものの、第29節を終えた時点でバイエルンとのポイント差は21まで広がった。チャンピオンズリーグではグループステージで敗退するなど、開幕7試合無敗の頃に思い描いていたものとは程遠いシーズンとなった。

Borussia Dortmund

また、昨季に躍進して上位に入ったRBライプツィヒやホッフェンハイムに関しては「不振」と表現することがそもそも酷な話になる。ライプツィヒはチャンピオンズリーグとの二足の草鞋を履き、ブンデスリーガでは6位。そもそも一部リーグ2年目ということは忘れてはならない。ホッフェンハイムにしても、セバスティアン・ルディ、ニクラス・ジューレ、サンドロ・ヴァーグナーのドイツ代表3人衆を引き抜かれたことは大きすぎるダメージであった。

要するに、バイエルンはシーズン序盤こそごたつきがあったものの、ハインケスの見事なカムバックによってつまづきをリカバーした。加えてライバルたちの不振によって、押し出される形で定位置に収まったわけだ。さらに明確な表現をするとすれば「いつものブンデスリーガの風景」が変わることなく、繰り返されたというわけだ。

バイエルン一強の背景にある仕組み

欧州サッカーファンにとっては今さらの話になるかもしれないが、こういった点を考慮していくと、ブンデスリーガはこう定義できるリーグになっている。

「ドルトムントがこければ、バイエルンが独走する」

昨季のホッフェンハイム、今季のフランクフルトなど、ブンデスリーガでも躍進を果たすクラブはある。しかし、イタリアのナポリやイングランドのトッテナム、スペインのアトレティコ・マドリーのように優勝に絡むまで成長するクラブはなかなか現れない。

では、なぜ優勝争いに絡むビッグクラブが生まれないかといえば、その背景にこそバイエルンの存在がある。

オフシーズンの恒例行事となっているように、ドイツ人選手やブンデスリーガで名を上げたスターは軒並みバイエルンへのステップアップを希望する。特定のクラブへの明らかな偏りが起きることについて、現地で記者として活躍するマキシミリアン・シュメッケル氏はこう説明してくれた。

「選手として成長するため、そしてチャンピオンズリーグを優勝するチャンスを手にするために(ステップアップを求めるのは)普通のことじゃないかな。スペインやフランスでも同じことが起きているだろう? ドイツでチャンピオンズリーグ制覇の可能性があるのはバイエルンだけだ。だからこそ(レオン)ゴレツカも決断したのだろう。ドイツ人選手にとってバイエルンは終着点なんだ。ライプツィヒやドルトムントはあくまでも、若い選手が輝くための最高のクラブの一つに過ぎない」

この流れは、今ほどバイエルンが圧倒的強者でなかった時代から脈々と続いている。今季もシュメッケル氏が語ったとおり、ゴレツカの移籍という形で目に見えるものとなった。つまり、バイエルンがここまでの一強体制を築いた背景には、ピッチ内にとどまらないピッチ外における成長戦略(国内の優秀な選手を招き入れる)があるわけだ。

フットボールはピッチ内で不測の事態が起こりがちだ。だからこそ、ジャイアントキリングが頻繁に起こるスポーツとして人々に愛されている。しかし、ピッチ外における戦略は積み重ねであり、長年に渡る活動の成果であり、ちょっとやそっとでは崩れない。(大資本家が他クラブを買収してバイエルンから選手を買い漁る……ようなことが起きない限り)

このブンデスリーガの基本構造とも表現すべき仕組みが変わらない限り、バイエルンの一強時代も終わらないわけだ。

GFX Leon Goretzka Schalke

バイエルンはブンデスに何をもたらすのか?

しかし、リーグ全体に目を向けると、バイエルンの一強状態は「つまらない」というネガティブな感情をファンたちにもたらしている一面もある。また、バイエルンにとっても負の面がないわけではない。早々に国内で優勝を決めてしまうことで、シーズン最終盤のチャンピオンズリーグで緊張感が保てていないという批判がしばしば聞かれる。シュメッケル氏もこういった側面を否定することはなかった。しかし、バイエルンが強すぎることに関しては、ポジティブな意見を持っているという。

「一般的に、バイエルンがドイツ最高のチームであり、世界でもその一つであるということはイメージとして良いと思う。バイエルンは世界中で知られているし、ドイツサッカーの広告塔になっている」

事実、バイエルンはチャンピオンズリーグの常連であり、世界的に名の通ったクラブだ。世界的な経済誌『Forbes』が発表した「世界で最も価値のあるサッカーチームランキング」の2017年版においても、アーセナルやチェルシー、ユヴェントスといった各国の強豪クラブを抑えて4位にランクインしている。

そんな状況にある中、仮にブンデスリーガが群雄割拠のリーグになったとしよう。そこでもしバイエルンが優勝を逃すようなことになれば、クラブの価値や財政面でバルセロナやレアル・マドリー、あるいはプレミアリーグ勢に水を空けられかねない。

また、バイエルンの一強体制がブンデスリーガを守っているという側面もある。リーグ内の争いだけに目を向けると、確かにスペクタクルさや不確実性(未知の魅力)に乏しい側面が目立つ。しかし、バイエルンは毎シーズン、チャンピオンズリーグで安定した成績を残すことでカントリーランキングのポイントを稼いでいる。ブンデスリーガで4位のクラブがチャンピオンズリーグに出場できる可能性があるのは、バイエルンが世界の舞台で結果を出しているからにほかならないのだ。

他クラブに利益をもたらすという点では、DFBポカールといったカップ戦を見ると分かりやすい。地方クラブがバイエルンを引き当てると、彼らは歓喜に湧く。それはバイエルンがドイツ中のスター選手を引き連れ、地方のスタジアムを満員とすることに一役買っているからだ。FAカップなどに比べると番狂わせが起きづらく、毎度バイエルンが無慈悲にゴールを重ね続ける光景が見られるが、それでも小さなクラブにとっては大きな意味を持つ。規模によれば年間の興行収入がその一試合だけで得られる……ということすらあるのだから。

見る者にとって、ブンデスリーガがときに不満の声を上げたくなるリーグであることは事実だろう。その原因がバイエルンであり、裏で糸を引いているのもバイエルンであることに関しても賛否はある。しかし、様々な面でブンデスリーガはバイエルンに支えられていると言うこともできる。その点は、考慮されてしかるべきだろう。

文=平松凌(Goal編集部)

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