ハリルジャパンに求められる「自信」と「勇気」…ブラジル戦で見えた現在地とは

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世界基準を肌で感じたブラジル戦。世界におけるハリルジャパンの現在地とは?

世界におけるハリルジャパンの現在地はーー。そう問われた長友佑都は「難しいな……」と伏し目がちにつぶやきながら、ミックスゾーンの片隅で思案を巡らせた。

時間にして約20秒程度だっただろうか。今回のブラジル戦で日本代表通算100試合出場を果たした31歳のベテランは、自らの経験を踏まえつつ、自問自答しながらその答えにたどり着こうと試みた。

「ブラジルは本気じゃなかったでしょ。後半は特にそうだし、前半もフワッと入っていますから」と切り出し、過去対戦の記憶を呼び起こしながら、今回の試合で見えたもの、そしてハリルジャパンの現在地について触れていった。

「(2013年に)ブラジルのホームでやったコンフェデとは勢いや威圧感が全然違う。確かに親善試合でやれた部分や自信を持った部分もあるけど、彼らが100パーセントではないから、正直何とも言えないです。ただ、それでも後半は迫力あるプレッシャーを掛けているという自信は持てた。センターバックのチアゴ・シウヴァも(パスを)出すところがなくてバタバタしていたし、ああいう状況にすればブラジル代表に対してでもペースが握れる。前半は相手をリスペクトする気持ちがあったり、彼らのスピード感に慣れていなくてズルズルと下げてしまったけれど、後半は恐れるものも失うものもないので前からいこうとした。あのブラジルが蹴ってきていたので、さすがにつなぐのが難しかったはずだし、後半は良い守備ができていたと思う。ここから一歩一歩進んでいきます」

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■「自信」と「勇気」を持って戦うことの重要性

本大会でも優勝候補に挙げられるブラジル代表は、日本代表にとって“10回やって1回勝てれば”というレベルの対戦相手。日本サッカー協会の田嶋幸三会長も「ある程度の差があるのは覚悟の上だった」とマッチメークの裏側を明かす。

試合は早い時間帯にビデオ判定で認められたPKでネイマールに先制点を許してリズムを崩し、結果的に1-3で敗れてしまった。だが、ずっとアジアで戦ってきたハリルジャパンがこのタイミングでブラジルに完敗したことは、決してネガティブではない。今回の内容と結果を受けた選手たちが確実に何かを手にしたのは間違いないからだ。

ブラジル戦で敗れた選手たちが口々に語ったキーワードは「自信」。まさにハリルホジッチ監督が2015年の就任会見で「日本代表に取り戻したい」と語ったものだ。そしてもう一つのキーワードとして登場したフレーズが「勇気」。二度のワールドカップ本大会を経験している川島永嗣は「ワールドカップのグループステージでもこういう相手と対戦することになる。自分たちはもっと勇気を持って戦わなければいけない」と前を向いた。

選手たちは所属チームや国際大会でそれぞれ経験を積んできたが、ハリルジャパンとして挑む“世界”は今回の欧州遠征が実質的には初めて。ブラジル、ベルギーとの2連戦は、ここまでチームとして積み上げてきた戦い方がどれだけ通用するのかを確認しながら、足りないものを知るためのゲーム。まさに本大会で結果を出すためのマイルストーンとなる試合となった。

前半はブラジル相手にチャレンジしきれず、さらにビデオ判定でPKを献上。できるだけ耐えて一発で決めるというゲームプランが狂ってしまった。本来ならば、緊張感ある試合展開に持ち込んで、相手に本気を出させたかったところだが、前半はブラジル代表をリスペクトしすぎて受け身になり、相手の思うツボにはまってしまった。これでは親善試合を真剣勝負に変えることはできない。

長谷部誠は「後半は確かに自分たちが前から(ディフェンスを)はめて、いい形を作れた。それをもう少し本気のブラジルにもっともっとチャレンジしたかった」と率直な思いを漏らした。

フランスリーグで日常的にネイマールらを相手にプレーする酒井宏樹も「後半は実際に良くなりましたけど、相手のモチベーションは下がっていたし、やっぱりフレンドリーマッチ。最低限でも後半の戦い方をベースにしないと前半のようになってしまう」と結果を憂う。

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■アジアと世界の決定的な違い

だが、これまで規定上の問題でアジア相手にしか戦うことができなかったハリルジャパンが、ようやくチームとして世界を肌で感じたことの意味は大きい。アジアでは前線からプレスを仕掛ければ取れていたボールが簡単に取れなくなった。もちろん世界の舞台では往々にして起こりうることである。プレスがはがされてバランスが崩れた際にチームとしてどう守るか。ボールに厳しく寄せるところ、ブロックを作って守る時間帯、リスクマネジメントや素早く切り替えてのカウンターなど、重要な判断が瞬時に求められる。ここに関して槙野智章は「レベルが高くなってきた時に起こり得ること。チーム全体で修正しなければいけないポイント。落ち着いて対応することが必要だった」と語る。

一方、攻撃面でも明確な課題が見えた。チーム全体のベクトルが後ろ向きになってしまったことで、前半は積極的に縦パスを入れることができなかった。後半に立て直したことについて吉田麻也は「相手が(力を)抜いたあとであることは理解しなければいけない」としながらも「個人的にはもっとやれると思った。自信を持っていつもどおりのパフォーマンスを出せれば、もっといいサッカー、もっといいパフォーマンスを出せた。後半は勇気を持って前につけることができた」と一定の手応えを口にした。

中途半端な仕掛けが致命傷になることも改めて痛感させられた。ブラジルの3点目は、右サイドから中央へカットインしながら久保裕也がシュートを打てないままボールを失い、そのままカウンターでゴールネットを揺らされたもの。これで実質的に試合を決定づけられてしまった。久保は「最後に迷った。打ち切っていたらカウンターにならなかったし、あそこで打たなかったら僕が出る意味がない」と反省の弁を残している。一つのミスが失点に直結してしまう点もアジアとの決定的な違いだ。

もちろん個々の能力や戦術面が試合を大きく左右するが、自信と勇気を持って戦わなければ、何も手にすることはできない。長友は言う。「恐れずに前に行く、ブラジルだろうがどこが相手だろうが、前から行く姿勢をみんなが持たないと、今の自分たちが目指しているサッカーはできない」と。

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■“世界”を知り得たうえで求められる覚悟と準備

初めて経験するビデオ判定はPKを与える結果となってしまったが、導入の方向で進んでいる最新技術を経験できたことはポジティブに捉えられる。ファウルを犯してしまった吉田麻也が「プレミアでは取り入れていないので、すごく教訓になった。ドイツの選手から言われていたので、もっと慎重に行くべきだった。本大会前にトライできて良かった」と話したとおり、本大会に向けて一足早く“世界”を知ることができた。ワールドカップ本大会で「初めて」となることをどれだけ事前に潰せるかも、チームが勝ち上がる上で重要な要素である。

とにかくこの敗戦をどう生かすか。今から7カ月後、「あのブラジル戦があったから」と言われなければならない。そのためにはまず14日のベルギー戦でどんな戦い方を見せられるかがポイントだ。

「この結果を本当にポジティブにしなきゃいけない。この経験を生かせるかどうかは僕たち次第」(酒井宏樹)

「ブラジル相手にみんなも手応えがあるはず。次のベルギー戦でどういうゲームができるのかは個人的にも楽しみ」(長谷部誠)

「この試合を経たことで、ベルギー戦はもっといいサッカーをしたい。過信することなく、しっかり自信を持って次のベルギー戦に挑まなければいけない」(吉田麻也)

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攻守において自信と勇気を持って戦うことの重要性、アジアと世界との決定的な違い、新しいテクノロジー、そして10度の対戦で一度しか勝てないであろうレベルの相手に本大会で勝つための覚悟と準備ーー。

ハリルホジッチ監督に率いられたアルジェリア代表は、ラウンド16で後に優勝するドイツ代表相手に勇敢に戦い、あと一歩のところまで追い詰めた。ハリルジャパンが世界で結果を出すための重要なポイントをついに肌で感じることができたと言ってもいいだろう。指揮官が自宅を構えるリールの地で、ようやく“世界”へのスタートラインに立った日本代表。本大会開幕に残された期間は、わずか7カ月。急成長が求められる中、彼らはベルギー戦でどんな変化を見せてくれるのだろうか。

文=青山知雄

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