チェルシーのプレミア王座奪還は当然の結果…ライバルとの決定的な違いとは?

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イタリアからやってきたコンテはプレミアリーグ挑戦1年目でチェルシーにリーグタイトルをもたらした。これは偉業であることは間違いないが、実は今シーズンのチェルシーにはライバルにない大きなアドバンテージがあり、リーグ優勝は容易なミッションだったと現地記者は指摘する。

■就任1年目のコンテがチェルシーを優勝に導く

16-17シーズンのプレミアリーグはチェルシーが素晴らしい成績を残して制覇した。指揮官アントニオ・コンテは就任1年目からいきなりリーグタイトルをもたらすという素晴らしい仕事ぶりを披露し、多くの称賛を浴びている。

特殊なことをやり遂げたわけではないが、これまでほとんどの指導者が成し遂げた以上のことをやってのけたと言って良いだろう。イタリアから異なる国の新しいリーグにやってきて、第12節から最終節まで優勝戦線をリードし続けての制覇はまさに特筆すべき偉業だ。

かつてコンテと同胞のカルロ・アンチェロッティもチェルシーの監督就任初年度にプレミアリーグ制覇を果たした。だが、オーナーであるロマン・アブラモビッチの悲願であったチャンピオンズリーグ優勝という期待に応えることができず、その1年後にはクラブを去ることになった。コンテの試練はこれからだ。

コンテにとって今季はそれほどハードルの高いものではなかったかもしれない。ユヴェントスでセリエA3連覇を達成しただけでなく、戦術的な進化も著しかった。イタリア代表ではユーロ2016において、スペインを撃破し、ベスト8に導いている。大きなプレッシャーや期待と向き合ってきたコンテだが、チェルシーでは、前のシーズンにジョゼ・モウリーニョが起こしたゴタゴタもあり、出場権のなかった欧州カップ戦との二足のわらじを考える必要がなかった。リーグ戦と国内のカップ戦に集中すれば良かったという点がリーグタイトル奪還の後押しになったことは事実であり、コンテにとっては前に指揮した2チームよりも楽な条件で戦えたことだろう。

その一方で、15-16シーズンのプレミアリーグを制した“ミラクルレスター”は、16-17シーズンは疲弊ぶりの目立ったシーズンとなった。優勝の原動力だったエンゴロ・カンテを引き抜かれ、その穴埋めがうまくいかない中、複数のコンペティションで消耗戦を余儀なくされた。

その結果、2部降格の危機に陥ったことで、チャンピオンズリーグではラウンド16に残りながらも2017年2月にクラウディオ・ラニエリは更迭の憂き目に遭っている。

レスターが今シーズン苦しんだように、王者であるチェルシーが来シーズン、残留争いに巻き込まれることになるとは現時点で誰も思わないだろう。しかし、16-17シーズンにチェルシーがリーグ優勝できたのは特殊な状況であり、ライバルチームはチェルシーよりも遥かに多くの試合をこなしていた。コンテの仕事ぶりは今シーズンの結果だけで判断されるべきではなく、来シーズンは真価が試される1年となるだろう。そう、厳しい試練がこれから待っているのだ。

Antonio Conte Chelsea

■王者チェルシーとライバルたちの決定的な違いとは?

今シーズン、コンテとチェルシーの選手たちはライバルの追随を許さないほどの出来を見せていた。

年明けの1月にトッテナムに敗れるまでのリーグ戦13連勝はチェルシーの躍進を加速させた。その後のリーグ17試合では13勝2分け2敗という成績を残し、トッテナム以外にチェルシーにとって脅威になり得るチームは一つもなかった。

週末に試合をこなしたあとは十分な休息を設け、週の後半にはトレーニング・グラウンドで選手としっかりコミュニケーションを取るという、リーグ戦に向けた理想的な準備をコンテは推し進めることができた。これが彼らにとって大きなアドバンテージになったことは言うまでもない。チェルシーの選手たちは、シーズンの大半をライバルチームの選手よりもコンディション維持が容易で、しっかりと準備をした状態で過ごすことができたのである。

5月12日に行われた第37節のウェスト・ブロムウィッチ戦で、チェルシーは1-0の勝利を収め、優勝を決めた。それはチェルシーにとって今シーズン公式戦45試合目で、イギリス国外で行われた試合は一つもない。

それにひきかえトッテナムは、すでに公式戦50試合以上をこなしており、そのうち8試合はヨーロッパでの戦いである。マンチェスター・シティはその時点まで公式戦54試合を消化していた。リーグ戦開幕前の7月にはチャンピオンズリーグ予選から稼働していただけに、いかに息をつく暇がなかったか伺える。さらに過密日程と言えば、マンチェスター・ユナイテッドに至っては61試合をこなしており、その中にはウクライナとロシアでのアウェーゲームも含まれる。

トッテナムが疲弊していたのは目に見えて明らかだった。彼らはチャンピオンズリーグのグループステージで3位になり、ヨーロッパリーグに回ることにはなったが、このグループリーグ6試合の直後に行われたプレミアリーグの6試合に限定すると、獲得した勝ち点はわずか8ポイントのみである。

それはマンチェスター・Cにとっても同じことだった。チェルシーのライバル達は、特に彼らが13連勝を続けている期間、彼らより多くの試合をこなしながら、ヨーロッパ各地への過酷な移動もしなければならなかったことは忘れるべきではない。

チェルシーの選手達は試合数や遠征面である程度余裕があったため、他のチームに比べれば主力選手の欠場に苦しむことがほとんどなかった。コンテのメンバー選考が偏ったという点こそあるが、実際に負傷やサスペンションで2試合以上欠場した主力選手は1人もいなかった。

チェルシーの主力選手はほとんどの試合に出場可能であり、コンテはシーズン通して彼の理想とする11人プラス、セスク・ファブレガスとウィリアンを起用することができた。他のクラブは毎週のようにチームを入れ替え、ターンオーバーを強いられていたのとは状況が明らかに異なる。

ライバルの筆頭となったトッテナムは、勝ち点を取りこぼしたボーンマス、アーセナル、チェルシーとの3試合をトビー・アルデルワイレルト抜きで戦わなければならなかった。

そして、マンチェスター・C、サンダーランド、リヴァプールから勝ち点を落とした試合ではヤン・ヴェルトンゲンが不在だった。また、ダニー・ローズは負傷のためシーズンの半分を欠場していたのである。

トッテナムはWBA、ボーンマス、レスター相手にも勝ちきれずにポイントを落としており、それらの試合ではエースのハリー・ケインが出場できなかった。主力選手がそろっていれば必ずしも勝てたとは限らないが、チェルシーはこういった問題とは無縁であった。

トップ6の他のクラブを見てみても、彼らにとって多くの重要な選手が長期にわたって欠場しなければならなかった。リヴァプールはフィリペ・コウチーニョ、ジョーダン・ヘンダーソン、そしてサディオ・マネは多くの試合を欠場している。

アーセナルは、0-3で落としたクリスタル・パレスでは第3GKのダミアン・マルティネスを起用せざるを得ない状況に陥ったり、シーズン中にはシュコドラン・ムスタフィとメスト・エジルが離脱で重要な試合に出場できないなど、シーズン中盤で勝ち点を取りこぼした。

マンチェスター・Uに至っては、ケガ人を数えるよりも、コンディションが万全な選手を数えるほうが簡単と言っても過言ではないほど、苦しいシーズンを送ることとなった。

マンチェスター・Cはそこまでひどい状況ではなかったが、新加入のイルカイ・ギュンドアンはシーズンの大半を棒に振り、また冬のマーケットで獲得したガブリエウ・ジェズスもデビュー4試合目から戦線離脱を余儀なくされた。ヴァンサン・コンパニはつい最近ようやく復帰したところであり、セルヒオ・アグエロはサスペンションによる欠場に苦しんでいた。

Chelsea

■来季真価が問われる

プレミアリーグには新たなジンクスが生まれつつある。チャンピオンズリーグに出場していないチームがリーグ制覇をするということだ。

13-14シーズンにはリヴァプールが優勝に近づき、15-16シーズンはノーマークのレスターが奇跡の優勝を果たし、今シーズンは前年10位だったチェルシーが順位表で1番上に立った。これは決して偶然というわけではないだろう。

もちろん、選手層の厚さが問われる戦いでもあるのだが、それに関しては今シーズンのチェルシーにはあまり関係がなかった。しかし来シーズン、彼らには大きな壁が立ちはだかることになるだろう。コンテのチームが称賛に値するシーズンを送ったことに疑いはないが、もしもライバルチームと同じ過密日程を強いられた中での戦いとなった時……チェルシーにとって、今シーズンとは全く違ったものとなるだろう。

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Willian Cesc Fabregas Chelsea

文=ピーター・ストーントン/Peter Staunton

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