オランダ代表のW杯予選敗退が意味すること…混沌の“元祖スペクタクル”はどこへ向かう

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ロシア・ワールドカップへの出場権を取り逃したオランダ代表。ここ数年オランダは混沌の中にある。今回の手痛い失敗を胸に、新たな方向へ舵を切る必要がある。

代表チームがまたもや恥ずべき失敗を犯し、オランダのサッカーはクラブレベルと代表チームの輝ける日々から急降下してしまった。

オランダ代表は10日に行われたワールドカップ予選最終戦のスウェーデン戦に2-0で勝利したものの、来年の本大会への出場権を逃すことになった。しかし、国民の多くは随分前から出場を諦めていたはずだ。

過去2回のワールドカップでは決勝と準決勝に進出しながら、オランイェ(オランダ代表の愛称)はヨーロッパの冷笑の的となり、今回の失態は果たしてこの国の代表チームがどこへ向かおうとしているのかを疑わせるものであった。革命的なトータルフットボールによりサッカーを変えたオランダという存在は崩れ落ち、ヨーロッパの列強国からも遅れをとった原因はどこにあるのか、その究明が求められている状況だ。

■栄光の過去は何処へ?

伝説的名監督であるリヌス・ミケルスとオランダサッカーのアイコンであるヨハン・クライフに率いられた1960年代のアヤックスで花開いたその有名なスタイルで、オランダはサッカー界に新たな発想をもたらした。その誕生以来いくつもの偉大なチームがオランダ以外の国から出てきたことがその何よりの証拠である。

1970年代にアヤックス、フェイエノールト、PSVがヨーロッパの主要タイトルを獲得したことにより、オランダは世界でも有数のサッカー大国に数えられるようになった。

ワールドカップで決勝に進出した1974年と1978年、クライフ、ジョニー・レップ、ヨハン・ニースケンス、ウィム・ヤンセン、ウィレム・ファン・ハネヘム、ルート・クロルといったスター選手たちは世界中のサッカーファンのハートを鷲掴みにした。彼らは眩いばかりのプレーを見せ、どちらの大会でも決勝では敗れたものの、W杯史上最高のチームとも捉えられていたのだった。

彼らのスタイルである、ハイプレッシング、ポジションチェンジ、トライアングルでの正確なパス回し、そして攻撃志向を体現できる確かな技術を持つ選手を輩出し、サッカーを一つの芸術へと昇華させてその哲学を世界中に広めた。

1970年代のアヤックスや1974年ワールドカップのオランダ代表を基礎としたかのように、ミケルスはルート・フリット、ロナルド・クーマンやフランク・ライカールトといった素晴らしい選手たちで構成されたチームを率い、1988年にオランダ代表にとって唯一のメジャータイトルを獲得し、名実ともに高い評価を得ることになった。

芸術的な美しさと高レベルの技術、戦術が組み合わさったことで、オランダ代表にとっては最後の美しい瞬間として記憶されているユーロ決勝でのマルコ・ファン・バステンのボレーシュートが生まれたのだった。

■美しさ失ったオランダ

しかしながら今回の欧州予選では、何一つとして称賛を浴び、後世に残るようなスタイルが披露されることはなかった。

現在のチームは、エネルギッシュなプレッシングも、聡明なパス回しも、そして戦術的な統一感や明確なプランに欠け、過去の偉大な選手たちの面影を全く感じさせることがなかった。

中盤は完全に省略され、相手チームはオランダの数少ない武器であるウイングを簡単に孤立させることができる。そうなると途端にどうしようもできなくなるという惨状が、2014年のワールドカップで3位に輝いて以降3年間も続いているのだ。

プレーオフ出場権を獲得するためには勝ち点3差と、大きな得失点差をひっくり返すため、ベラルーシとスウェーデンとのラスト2試合では勝利とともに多くのゴールを奪うことが必要であった。しかし、ディック・アドフォカート率いるオランダ代表は結果的に成功を収めることができず、来年のロシアでのワールドカップ本大会に“オレンジ色”があってもなくても問題がないような程度の内容しか見せることができなかった。

出場国数が拡大したにもかかわらず、ユーロ2016の出場権を逃す恐怖を味わった後で、またもや夏に行われるビッグトーナメントへの出場権を逃し、オランダサッカー協会は多くの問題解決のため次のステップに早々に着手しなければならない。

そのためには、代表メンバーの世代交代の準備を進めることは重要なことだ。

■カギは世代交代

今回の予選を通して、アリエン・ロッベン、ウェスレイ・スナイデル、ロビン・ファン・ペルシやクラース・ヤン・フンテラールらのベテランが招集され続け、オランダはいまだに2010年のワールドカップで決勝を戦ったメンバーが残っている。つまり、世代交代は緊急の課題だ。

『Goal』のインタビューで現状の問題点について質問を受けたロナルド・デブールはこのように語っている。

「我々にはトップクラスの選手たちがいない。最高だった選手も年齢を重ね、そして若い選手は基本的にそのギャップを埋めるにはまだ若すぎる。我々は多くのタレントがいるが、まだまだトップレベルには到底及ばない段階だ」

「(若いオランダ人たちの)クオリティは信じられないほど素晴らしいものだ。しかし、それは完成されているわけではないので、そのまま順調にいくと思いきや、ダウンすることもある。とはいえ、彼らは信じられないほど才能に溢れ、(2022年のカタールでのワールドカップの時には)25歳程度という理想的な年齢を迎えることになる」

ジョルジニオ・ワイナルドゥム、ダレイ・ブリント、ケビン・ストロートマン、ビルヒル・ファン・ダイクやメンフィス・デパイといった選手たちはさらにレベルアップし、世代間の架け橋として機能することになるだろう。

しかし、これまでオランダ代表を引っ張ってきた33歳のロッベンが代表でのキャリアを退くというファンが恐れていた事態がやってきて、オランダ代表には後を継ぐワールドクラスのスターがいない。

■失われた協会への信頼とアイデンティティ

オランダサッカー協会がユーロとワールドカップという2つの大会の予選を勝ち抜くための長期計画を組んでいた中、それが失敗に終わったことで、協会に対する信頼はほとんどなくなってしまったといっても良い。

2014年のワールドカップ後、オランダサッカー協会はルイ・ファン・ハールの後任としてフース・ヒディンクを起用し、オランダサッカーの“攻撃的原則”の路線を継続していくことを宣言。またヒディンクの後任には、ダニー・ブリントに翌年のワールドカップ出場権獲得の使命を託したのだった。

しかしながら、常にゲームを支配する攻撃的なチームを作り上げるというプランは、ヒディンクがユーロ2016の予選期間中に解任され、そして後任のブリントもロシアへの道の途中でその任を解かれたことで頓挫してしまった。

これまで見せてきたひどいパフォーマンスの中で、サイドアタッカーを使った組み立ての必要性、運動量や選手間の相互理解が欠如し、かつてのチームとの唯一の類似点は4-3-3のフォーメーションだけである。

フォーメーションもボールを持ち続けることも、オランダが掲げてきた攻撃原理の解釈に対しての大きな勘違いが自らのスタイルを制限してしまっているのだ。かつてアヤックスやトッテナムを率いたマルティン・ヨルは「アイデンティティを失ってしまった」と嘆く。

「常に良いオーガナイズと攻撃的なスタイルが我々のアイデンティティだった。しかしそれを今やれば、あまりに多くのゴールを奪われることになる」

「我々のプレー哲学は変わるべきであった。今では我々よりも先を行っているヨーロッパの他の強豪国を見習わなければならない」

■クラブレベルでも危機が押し寄せる

代表チームが期待をはるかに下回るレベルにあるとすれば、国内リーグは非常に危機的な状況とも言い換えられる。

1970年のヨーロッパカップ決勝でフェイエノールトがセルティックを破り優勝し、完璧な10年を築き始めて以降、オランダサッカーの栄光の70年代がスタートしたのだった。アヤックスはヨーロッパカップで3連覇、フェイエノールトとPSVもUEFAカップで優勝とオランダのビッグ3はそれぞれその10年でヨーロッパのタイトルを獲得した。それ以後の30年間では、その3つのクラブともそれぞれ1度ずつしかヨーロッパの大会での優勝は果たしていないが、各チームのクオリティの高さは高く評価されてきた。

ロナルド・クーマン、ウィム・クレフトやウィリー・ファン・デ・ケルコフらのPSVが1988年のチャンピオンズリーグを制覇した後、ヨーロッパの舞台でセンセーショナルな活躍を見せたのはデブール兄弟やパトリック・クライファート、マルク・オーフェルマルス、クラレンス・セードルフらを擁し1995年にチャンピオンズリーグで優勝したファン・ハール率いるアヤックスが最後だ。

今となっては、オランダのクラブはノックアウトラウンドに進出することなく大会から姿を消すのが当たり前となってしまった。

経済的な面でヨーロッパのライバルクラブと競うことができなくなったことで、将来有望な若手の流出は阻止できない。アヤックスやフェイエノールトは自前の若手選手がヨーロッパの他国のクラブに定期的に引き抜かれ、それ以外の選手でもトップチームでわずか数シーズンプレーした後、他国のリーグへ移籍してしまうのだ。その問題は長年にわたりオランダサッカーを悩ませる大きな問題だとデブールは話している。

「私が思うに、問題は多くの選手が若いうちからオランダを離れ、他のリーグに移籍していることにあることだ。そしてそこには、世界中の最高級の選手たちが集まるリーグがある。かつてはオランダも、素晴らしい選手を引きつけることができた」

「しかしそうした選手たちはもうオランダにはやってこない。ゆえに、私の目にはとても十分だとは思えないような選手に固執しなくてはいけないんだ」

終わりのない選手の質の低下により、エールディヴィジのクラブは危険なスパイラルに陥ってしまっている。リーグ全体が落ち込んだことで、各クラブも戦術的に先を行くヨーロッパのライバルに太刀打ちできないでいる。

デブールが言うには、オランダのクラブと対戦するのとヨーロッパの強豪クラブと対戦するのでは、まるで自分の母親とレジェンド的なディフェンダーとの違いほど大きな隔たりがあるようだ。

「もし成長したいのであれば、最高の選手を相手にプレーしなければならない。あるいは少なくとも、“まだあのレベルに追いつかなければならない”と感じられるような相手だ」

「私が思うに彼らは試されていない。私はいつも例を作るんだ。仮に私が母親と対戦したら、簡単に勝つだろう。それは試されていることにはならないし、それで十分だ。しかし突然、マルセル・デサイーと戦うことになったら、それは全く異なる戦いだ。もしそれで負けても、次の時のためにはステップアップしなければならないと思える」

「しかし選手は、試される状況がないのでステップアップしなければならないタイミングがわからないんだ。そして突如ヨーロッパの舞台での戦いがやってくるが、オランダにはフィテッセしかヨーロッパリーグに出場しているクラブはないし、国内リーグで優勝したフェイエノールトしかチャンピオンズリーグを戦っているクラブはない。フェイエノールトはマンチェスター・シティに0-4と打ちのめされた。そしてナポリ相手にも1-3と簡単にねじ伏せられた」

「ヨーロッパのトップレベルには到底及ばない。それは試される状況がないからだ。難しいことではあるが、我々は変わらなければならない。オランダには面白く、ナイスで、エンターテイメントなリーグがあるが、素晴らしいリーグとは言えない」

もし今後も選手の育成に困難を極めるようであれば、オランダは選手を確保し続けることさえ難しくなるだろう。将来有望な選手たちに対して、異なるシステムでのプレーやスピードの変化へ適応する機会を提供できなければ、選手にとってもそこのクラブでプレーを続ける理由はなくなってしまう。

■解決策は“外向き”へのシフト

選手たちには彼らを押し上げ、戦術的にも成長させてくれるような正しい指導者が必要だ。しかし不運なことに、オランダでは先進的な考えをもった指導者がなかなか見当たらないのだ。

エールディヴィジのチームはどこも同じような4-3-3のシステムでプレーをするのが普通だ。指導者たちは皆、代表チームが固執しているようなオランダサッカーの特徴を守ろうとし、新しくエキサイティングな戦術のアイデアを導入しようという意欲は見られない。

国として内向きな思考となり、異なるスタイルを持ち込むことに懐疑的でもあることから、エールディヴィジでは外国人監督が指揮を執ることも稀だ。オランダサッカーの影響は、ドイツやイングランド、スペインなどに広く伝播してきたが、そうした国々でもオランダサッカーの影響というのは徐々に廃れていくのかもしれない。

今回の代表チームの失敗を受けて、オランダサッカー協会は代表チームの次期監督探しの際に、国外に目を向ける可能性はある。オランダサッカーに影響を受けて技術面、戦術面で進歩を遂げてきた他の国々にとってみれば、現在のオランダサッカーの哲学はあまりに原始的すぎる。

彼らが作り出しているプレーヤーへの懸念、アイデンティティ、リーグや指導者、そして協会のよろしくないマネージメントといった問題を抱え、オランダが世界のサッカーのトップに立ち、それを何十年にも渡って維持できるかどうかは非常に疑わしい。

今回のワールドカップ予選での失敗により新たな深みにはまったことで、彼らを世界的なサッカー大国へと押し上げたトータルフットボールの哲学から今は大きくそれてしまっていることが明らかとなった。

非常にデリケートな時期が迫りつつあり、オランダサッカー協会は代表チームを立て直すための方法を探さなければならない。彼らには昔起こしたような新たな革命が必要なのではない。求められることはあくまでも再興である。

文=ピーター・マクビティ/Peter Mcvitie

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