なぜ前回王者ドイツはロシアで歴史的惨敗を喫したのか?W杯前からあった2つの不安

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ロシアW杯で最大のサプライズとなったドイツ代表のグループリーグ敗退。なぜ前回王者はこれほど簡単に敗退へと追い込まれたのか。ドイツで長年ジャーナリストとして活動し、代表を知り尽くした遠藤孝輔氏が分析する。

■フィーゴも「連覇する」と予想していたが…

2018-05-15-germany

ブラジルと並ぶ優勝候補の最右翼。ロシアワールドカップに臨むドイツ代表の前評判はすこぶる高かった。当然だろう。得失点差(43得点・4失点)の世界記録樹立というオマケ付きで、ヨーロッパ予選を無傷の10連勝で駆け抜けたのだから。マヌエル・ノイアーやトーマス・ミュラーら主軸を温存し、若手主体で挑んだ1年前のコンフェデレーションズカップでは見事に優勝。選手の質と量は世界屈指の水準に達し、チームとしての経験値も非の打ち所がない。62年大会のブラジル以来となる“連覇”を期待させた。

開幕2か月前にドイツを訪れた時、ドイツ代表の早期敗退、それもグループリーグ最下位という歴史的惨敗を予想する者など一人もいなかった。ピエール・リトバルスキーの「ドイツとブラジルの決勝が観たいね」という笑顔が思い出される。ドイツ人だけではない。世界もドイツが主役になると信じて疑わなかった。例えば、元ポルトガル代表のルイス・フィーゴは『キッカー』誌で「ドイツが連覇する」と予想していた。

かく言う私も同じだ。ただ、ブラジルワールドカップを迎える直前ほどの高揚感、期待感は抱けなかった。理由は2つある。1つは17-18シーズンの欧州カップ戦におけるブンデスリーガ勢の不振だ。バイエルンを除く出場6クラブが軒並みチャンピオンズリーグ、もしくはヨーロッパリーグのグループリーグを突破できなかったのだ。自国リーグの繁栄は言わずもがな、代表チームの発展に直結する。南米やアフリカ諸国のような選手を輸出する側ではなく、買い手の立場にあるドイツのような国はその傾向が顕著だ。実際、自国リーグの停滞と時を同じくして、イタリアとオランダの代表はコンスタントにかつての強さを示せなくなった。ドイツ代表は大丈夫なのか――。その不安が頭の片隅から離れなかった。

■勝ちにこだわらなかったレーブの姿勢

2018-06-28 Germany Low

もう1つ、違和感を覚えたのがヨアヒム・レーブ監督の親善試合における姿勢だ。

もちろん、コンフェデ制覇、今予選突破までは非の打ち所がない素晴らしいマネジメントを見せた。しかし、昨年11月以降、レーブは完成されたチームをさらなる高みに導くべく、結果より内容を求め、新たな上積みをもたらす作業に終始。メスト・エジルのボランチ起用、ともにセントラルMFが本職のイルカイ・ギュンドアンとレオン・ゴレツカの右ウイング起用などが例に挙がる。極めつけは今年3月。その時のベスト布陣を組んできたブラジルに対し、主軸を温存して2軍に近いメンバーで臨んだのだ。0-1とスコアは開かなかったが、ドイツメディアが「内容はCクラス」と酷評する出来に終わった。

他媒体でこの姿勢を批判した際、本番に向けて「手の内を隠したのでは」という声が聞かれた。私に言わせれば、そんな余裕などなかった。なにしろ中心選手はコンフェデに出場していない。EURO2016ではフランスに完敗している。親善試合とはいえ“ミネイロンの惨劇”の悪夢を払拭すべく、モチベーションをマックスにしてきた王国を相手にふざけたメンバーで臨むのではなく、本番仕様で立ち向かうべきだった。

勝ちにこだわらなかったレーブの姿勢、結果が出なくても「あくまでテストマッチだから」という余裕は、大会が近づいてもチームのギアが上がらない要因になったはずだ。マッツ・フンメルスがW杯後に「最後に良い試合を見せたのは昨秋」と漏らしたように、自分たちの良いイメージを失ったドイツは凄みを取り戻せず、オーストリアに32年ぶりの敗北を喫し、サウジアラビアに辛勝するのが関の山の状態でロシアに入った。

■4年前の世界制覇がもたらした弊害

Joshua Kimmich & Hirving Lozano - Germany v Mexico

それでも16大会連続でワールドカップの8強に名乗りを上げているドイツなら、開幕と同時にフルスロットルになる――。その考えはレーブにもあったのではないか。しかし、初戦のメキシコ戦でその願望めいた期待はあっさり打ち砕かれた。「プレッシング+カウンター」という何年も前に編み出されたポゼッションサッカー対策に苦しめられ、ほとんど決定機を作り出せずに0-1というスコア以上の完敗を喫したのだ。

続くスウェーデン戦でも自分たちのミスから失点し、1点を追う苦しい展開。それでも後半、ティモ・ヴェルナーを左サイドに配する奇策がハマり、同点に追いつく。そして、ジェローム・ボアテングの退場で10人になりながらも果敢に攻め続け、トニ・クロースの素晴らしい決勝点で奇跡的な逆転勝利を収めた。だが、今振り返ってみれば、時間稼ぎに走らなかった相手のミスと、アディショナルタイムが予想以上に長い6分という運に助けられた側面が大きかったかもしれない。なにしろ、続く韓国戦で0-2の完敗を喫し、史上初めてベスト16進出を逃したのだから。純粋にチーム力が十分ではなかったと言わざるをえない。

敗因を挙げれば、それこそキリがないだろう。その最たるものは、4年前に世界制覇したことかもしれない。あの偉業達成により、中心選手の世代交代、スタイルの見直しを図れなかった側面がある。相手からすれば、研究しやすい状況になったのだ。実際、ボール回しに固執した崩しは、メキシコにも韓国にも通用しなかった。では、どうすれば良かったか。個人的には「我の強い選手」を招集すべきだったと考える。チーム戦術を良い意味で無視し、独力で敵陣を切り崩しにいく選手だ。そうしたアタッカーがいなかったわけではない。練習態度の悪さや代表での不出来から23人枠から外れたと目されるリロイ・サネを上手く扱えていれば、攻撃の最終局面でなかなか違いを作れない状況は少なからず改善されたはずだ。

2018-06-06 Leroy Sane

他にも、ローター・マテウスが指摘する「選手たちが心身ともに疲弊していたように見えた」点や、レーブ自らが認める「ここ3、4週間でチームを1つにまとめきれなかった」準備の失敗、その指揮官自身の采配ミス、不動の左SBヨナス・ヘクターの初戦欠場、いわゆるゲルマン魂を体現するようなリーダーの不在など、様々な敗因が挙げられている。今後も問題点の洗い出しは続くはずで、ドイツがこれから大きく方向転換するのは間違いない。1つのサイクルが終わり、世代交代も一気に加速するだろう。

ドイツサッカー連盟は引き続きレーブに代表チームを託す考えだが、「結論を出すのに時間が必要」と語る本人が辞意を表明する可能性もゼロではない。EURO2000と2004でグループリーグ敗退を喫した時とは異なり、優秀なタレントは揃っている。再び世界のトップに返り咲くために、はたしてどんな方針を打ち出すのか。クラブシーンを含め、ドイツサッカー界の威信を懸けた取り組みに注目したい。

文=遠藤孝輔(サッカージャーナリスト)

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